「辛うまラーメン日本一!」の蒙古タンメン中本が、“一生分”の辛旨メニューを明かす本気のレシピ集【インタビュー】

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PR公開日:2024/3/20

蒙古タンメン中本が本気で考えた辛旨レシピ100

 辛いけど旨くてクセになるラーメン店・蒙古タンメン中本が監修した辛旨レシピ100品を詰め込んだレシピ本『蒙古タンメン中本が本気で考えた辛旨レシピ100』(飛鳥新社)が刊行。収録レシピにはメディアにも多数登場する店主・白根誠さんの“辛旨指南”が至るところに差し込まれ、中本ファンはもちろん、辛いもの初心者から激辛好きまでが自宅で辛旨料理を堪能できる一冊となっている。

 本当に旨いレシピだけを載せたという本書の制作意図や、おすすめのレシピ、辛旨バランスの考え方などを、白根誠さんの息子であり、本のレシピ開発に大きく関わった白根隆也さんに伺った。

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ここ10年、日本全国で「辛旨」を食べる環境が整ってきた

白根隆也さん

——隆也さんはお店のメニュー開発、広報、グッズデザインなど、幅広い業務に携わっていると聞きました。味の基本となる“辛旨ダレ”をはじめ本書のレシピはお店で出されているものとは違うということですが、“辛旨”の秘訣が書かれていますし、手の内を明かすようなレシピ本を出すことに抵抗はなかったですか?

白根隆也さん(以下、白根):うちの秘伝のレシピを公開するわけではないので、それはなかったですね。ただ、もともとはレシピ本を出すことに興味はなくて、担当編集の方からいちばん最初5年前にオファーをもらったときは即答で断ったんです。その後も何度も声を掛けていただいて。それで調べてみると、これまで激辛料理だけのレシピ本はいくつか出版されていたんですが、一般家庭でも簡単にいろいろな辛旨料理が作れる本はなかったんです。家庭で誰でも簡単に作れる辛旨のレシピ本があったら面白そうだなと。中本ではオリジナルグッズも作っているんですが、ネックレスやリング、スカジャンといったアパレルアイテムもたくさん出しています。最近ではクレーンゲームのプライズ(景品)を作ってみたり、と僕らの生業であるラーメンに直接関係ないものも世の中に出していこうと思っているんです。「ラーメン屋なのに中本って面白いな」って、みなさんに楽しんでもらえることを考えるのが好きなんですよ。

——ラーメン屋さんが出しているレシピ本はかなり珍しいと思います。

白根:ここ10年くらいで日本全体が辛さというものにすごく強く、ファンも増えてきた感覚もありましたからね。10年前は初めての来店で北極ラーメン(中本で最も辛いと言われる激辛ラーメン。辛さレベル9。以前は裏メニューだった)を食べるお客様なんていなかったですが、今は遠方からわざわざ来られたお客様が「北極を食べたくて初めて来ました」と、ペロッと食べちゃうくらいですから。特に女性のお客様は、辛さに強い方が多いです。

——たしかに女性のほうが辛いものが好きだという印象があります。お父様の誠さん(店主の白根誠さん)も最初は先代の作った中本の辛いラーメンに驚いて完食できず、3度目でファンになったとか。隆也さんの小さい頃は、辛い料理が食卓に出ていたんですか?

白根:いっさい出ませんでした(笑)。僕が初めて中本でラーメンを食べたのは食べたのは小学4年生くらいで、辛さがない「冷し醤油タンメン」ばっかり食べていました。初めて辛いのを食べたのは中学生の頃ですね。それもメニューの中でいちばん辛くない「味噌タンメン」(辛さレベル3)でした。それでも、旨さは感じるんだけど、やっぱり辛さのほうが勝っちゃって全然ダメでした(苦笑)。

——お父様と同じようなご経験をされたんですね。

白根:本当に食べていくうちに旨くなるんですよ。高校卒業後、デザインの専門学校に通ってデザインの勉強をしていたんです。ラーメン屋になるつもりはなかったんですが、ある日ボスから「うちの看板を作れ」と言われて、中本の仕事を手伝うようになっていったんです。それからですね、食べる機会が増えたのは。最初はあんなにダメだったのに何度も食べていると「蒙古タンメン」(辛さレベル5)をすごく旨く感じるようになって、いまではずっと食べてきた「冷し醤油タンメン」と「北極ラーメン」が僕の中で同率1位ですね。

100品あれば、辛い料理には一生困らない

白根隆也さん

——企画開始から完成まで、約2年3ヶ月。ずいぶん時間をかけられていますね。

白根:僕が広報担当になったのが、ちょうどこのレシピ本の何度目かのオファーをもらったタイミングだったんです。ボスに相談してみたら「やらねえよ」と一蹴されてしまって。ただボスはかなり気分屋なので(笑)、その日の気分もある。そこで折を見て何度も「やってみたら面白いと思います」と話をし続けて、OKをもらうまでに半年かかりました。そこから時間をかけてレシピの一つひとつ全部にこだわっていたら、発売まで2年もかかってしまった、という。

——全部で100品もあって本気度の高さを感じます。

白根:せっかく苦労して世に出したレシピ本を「買って損した」と思われたら悲しいじゃないですか? 100品あれば辛旨料理に関しては、これ1冊で一生困らないだろうと考えて、“100”にこだわったところはあります。昔、江戸時代にはもうレシピ本って出版されていたそうなんですが、大昔のレシピ本は「豆腐百珍」とか「卵百珍」というタイトルで、レシピを100種類載せたものが多かったらしくて。それなら、うちも「中本百珍!」の100品で出そうと。

——このサイズとページ数、価格帯のレシピ本では、50~60品くらい収録されているものが一般的らしいので、その倍ですね。

白根:うちの店の考え方もありますね。お客様に1杯1000円前後のラーメンを食べてもらって、その10倍くらいの感動を得てもらえなかったら店は続かないと思うし、それがサービスの本質だと思っているんですよ。この本も買ってみて「これ、めちゃめちゃいいわ!」と思ってもらうにはどうしたらいいのか、ともかくいろいろ考えました。手に取ってくれたお客様に喜んでもらえるように。

——中本さんのサービス精神が形になったのが100品。隆也さんが普段作っているようなレシピも入っているんですか?

白根:たくさん入っています。僕は社内でメニュー開発もしていますし、もともと料理好きで、10代の頃にイタリア料理店のキッチンでずっとアルバイトもしていたので。いまも家ではよく料理を作ります。

——たしかにイタリア料理も載っていますね。「辛旨カルボナーラ」を見て、生クリームと辛旨って合うんだな…と驚きました。

白根:中本といえばラーメンであり中華料理が源流ですが、この本には中華はもちろん和食、フレンチ、イタリアン それにアジアン系料理も、世の中でメジャーなジャンルは積極的に取り入れました。僕の好みも入っていますけど、どんな方にも美味しく食べてもらえるように幅広く料理を選んだつもりです。

 僕がよく食べているのは「辛旨雲白肉(ウンパイロー)」とか「トマトときくらげの辛旨卵炒め」とかですね。棒々鶏や天津飯、アヒージョもよく作るし、蕎麦にはもちろんラー油を入れるし…。「夏野菜の辛旨みそ漬け」もおすすめですよ。一味唐辛子とみそを効かせると、ミョウガがめちゃめちゃ旨くなります。しかも簡単です。これはもう常に自宅の冷蔵庫にストックがあります。

蒙古タンメン中本が本気で考えた辛旨レシピ100
辛旨雲白肉(ウンパイロー)

蒙古タンメン中本が本気で考えた辛旨レシピ100
夏野菜の辛旨みそ漬け

辛旨ラーメン屋だから伝授できる「辛旨」のノウハウ

——レシピの中には「辛・大辛・極辛」と辛さレベルが3段階で表示されていて、辛旨が初めての人でも挑戦しやすそうです。

白根:“その料理に合ったおいしい辛さ”というものがあるので、なんでもかんでもめちゃめちゃ辛くすればいいというわけではないんです。ただ、本で示した辛さレベルは単なる目安なので、自分で辛さを調整してもらっても大丈夫ですよ。それも簡単にできるようになっています。注意して欲しいのはスパイスによって合う、合わない辛さがあるんですよ。たとえば、蕎麦とカレー系のスパイスの組み合わせは難しくて。みんなが「おいしい」と思えるようなスパイスの組み合わせには気を使いました。

——辛旨初心者におすすめのレシピはありますか?

白根:サクッと簡単に作れるレシピだったら、「辛旨ダレ」にポンと漬けるだけでできる「辛旨麻薬卵」とかいいですよ。忙しい主婦の方、働いているママさんにも便利なように、レシピは「つくりおき」ができることを重視しました。料理のベースになる「辛旨ダレ」や「辛旨ラー油」は、冷蔵で1~3週間ほど保存できますし。正直、このタレをご飯にぶっかけるだけでも旨いです(笑)。

蒙古タンメン中本が本気で考えた辛旨レシピ100
辛旨麻薬卵

——「一味唐辛子を水で練る」など、普通は知らないようなノウハウもたっぷりで。こういう技が辛旨を作り出しているんだなと実感しました。

白根:そのほうが辛さが立ちやすいし風味が戻るんですよ。手鍋やフライパンなど家庭にある器具を使うことも考えてレシピを作っています。そこに熱い油を注ぐと「辛旨ラー油」になるんですが、唐辛子を先に練っておくことで油が溢れにくいので家庭でも安全に作れるというわけです。辛いモノ好きな方で、「辛い料理を家で食べたいけど、自分で作るとなんか美味しくない」という方って、じつは多いと思うんです。そういうみなさんのために、一味を振りかけたり、唐辛子を炒めたりするだけではない、深い辛旨のノウハウを詰め込みました。

——「辛旨ダレ」や「辛旨ラー油」があれば、思い立ったときすぐに辛旨メニューが作れるんですね。辛いもの好きにはたまりません!

白根:「辛旨ダレ」はマヨネーズと混ぜて野菜スティックにつけてもいいし、「辛旨レバーペースト」なんかはパンにサラッとつけるだけで美味しいし。何もしたくない日に辛いものを食べてスッキリしてから寝てもいい(笑)。手が込んでいるように見えてすごく簡単で映える、辛さというアクセントが楽しめる料理はパーティーなんかでもきっと喜ばれますよね。

「ウンパイロー」はうちの母が昔から作ってくれた料理で、兄弟4人みんなの大好物。食卓に出したら一瞬でなくなるくらい(笑)。これ、もともとは辛くない料理なんですよ。辛さがなくても美味しい料理に、その料理の美味しさをさらに引き出せるようなバランスで辛さを追加しているのが、この本の辛旨レシピの特徴をよく表しているひと品だと思います。

——辛いだけではなく、料理がさらに美味しくなるのですね。

白根:「最後まで美味しい」ことが、中本の辛旨の定義かもしれません。食べ終わったときに、「辛かった」だけで終わるのか「めちゃめちゃ旨かった」で終わるのか…。北極ラーメンの辛さ10倍を僕らが食べると、ひと口目で「旨っ!」ってなるんですよ。辛さがガーンとくるんじゃなくて、ドンと最初に旨さが来てからジワジワと広がっていく辛さなんです。そんな中本が培ってきた辛旨を、このレシピ本で体感してもらえると思います。とはいえ、さっきもお話ししましたがここに載っているレシピはすべて辛さをグッと弱くして調理することもできます。辛いモノが得意じゃない方でも、大好きな方でも、最後まで美味しく食べてもらえるんじゃないかと。

簡単で、本格的で、めちゃめちゃ旨いレシピばかり

白根隆也さん

——巻末には誠さんの「辛旨ラーメン日本一から、辛旨ラーメン世界一へ」という言葉があり、今回のレシピ本でも中本さんの認知度は広がりそうですね。

白根:世界一に関しては僕の仕事だと思っています。まだまだ時間はかかりますけど、ボスが先頭で中本を引っ張ってくれているうちに47都道府県に最低1店舗ずつは店を出したいですし、それを達成したら、次は世界でも「辛旨ラーメンと言えば中本」と言われるようになりたい。今回レシピ本を出したのは、「辛旨を代表するのは中本」と自負していることもありますが、まずは日本で押しも押されぬところに行かないと本当の日本一にはならないし、この小さな国だけのNo.1では満足できないので。2024年の春には、日本一への足掛かりとして東北初進出となる仙台に新店舗をオープンする予定です。おかげさまでもう話題になっていて、たくさんの方が楽しみにしてくれていますね。

——そんな中本さんの本気が全国に伝わるようなレシピ本だと思います。

白根:多すぎる手順や、難しいレシピは極力削って、とにかく簡単で本格的でめちゃめちゃ旨いレシピだけを100点集めることにこだわりました。保存できるタレ類も豊富に載っています。辛い料理に興味はあるけど簡単には作れないと思っている方に、手軽に手を取って、辛旨の喜びおいしさを知っていただければ…という気持ちです。ぜひ、辛旨の世界を楽しんでみてください。

白根隆也さん

白根隆也さん

取材・文=吉田あき 写真=水津惣一郎

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