春を楽しむ植物の絵本(2024年4月 新刊&おすすめ絵本)

文芸・カルチャー

更新日:2024/4/22

春、私たちは、植物にたくさんの力をもらいます。咲き誇る桜は、これからはじまる日々を祝福し応援してくれているよう。あか、しろ、きいろ、色とりどりのチューリップに気分が弾んだり、まるで微笑んでいるようなたんぽぽに話を聞いてもらったり。新しい生活のスタートに硬くなりがちな心をほぐし寄り添ってくれるような春の草花たちは、かけがえのない存在です。

今月は、春の植物の魅力あふれる絵本をピックアップしました。
まず植物の進化をたどってみると……その起源は生きもの、地球の誕生へと遡り、私たち人間と同じ点からはじまっていることがわかります。一方で植物の源である「種」からその成長を見ていくと、芽を出し花を咲かせ、野菜や果物が成り、再び種が。写真で追ってみると、人間とはずいぶんと違う成長の過程に改めてびっくり!
よつば、桜、たんぽぽ、春の草花が主役のおはなしは、瑞々しい生命力と季節のよろこびに満ちていて、優しくあたたかな気持ちに包まれます。

春を彩る植物たちをぐっと身近に感じられる絵本、大人のみなさんにもおすすめです。

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48億年前に誕生した地球。そこに生まれていく「いのち」の源となったのは……生きものの歴史を植物の進化を通してたどる『もし地球に植物がなかったら?』

もし地球に植物がなかったら?

作:きねふち なつみ絵:きねふち なつみ監修:ジョン・ブルタン 真鍋 真

出版社からの内容紹介

生命誕生は植物から始まった!植物の視点から地球の歴史を振り返ると、 動物の視点とは全く異なる生物の歴史が見えてくる。絵で語る植物の進化絵本。

いろいろな『だいどころのたね』土にまいてみると……? 大豆、ゴマ、いちごやかぼちゃ、種が身近な野菜や果物に成長する様子がよくわかる写真絵本

だいどころのたね

写真:久保秀一監修:大久保 茂徳

出版社からの内容紹介

私たちは、栗や大豆などいろいろな種を食べています。多くの果物や野菜には、種が含まれています。こういった種を土にまいたら、はたして……。日ごろ食べている小さな粒の大きなエネルギーに気づく写真絵本です。

驚きと感動いっぱい、植物観察家・鈴木純さん初の写真絵本!じっくり観察することで初めて出会うシロツメクサの美しさと不思議『シロツメクサはともだち』

シロツメクサはともだち

作:鈴木純

出版社からの内容紹介

おどろきは、身近なところにある!植物観察家・鈴木純が、シロツメクサの美しさと不思議を紹介し、実態にせまる写真絵本。観察により気づきはおどろきを生み出す。この感動こそ、科学への第一歩です。知ることでどんどん好きになっていく、ともだちと話しているようにたのしめる1冊!

みんなと葉っぱの数がちがい、ひとりぼっちのよつばの子。「あなたの葉っぱ かわいい」モンシロチョウの言葉に心が動き……!『よつばのおはなし』

よつばのおはなし

作・絵:かとう まふみ

みどころ

あなたはよつばを見つけたこと、ある?
もんしろちょうから聞いたよつばの秘密のお話、こっそり教えてあげる。

「あれ? きみの はっぱは ぼくと ちがうみたい」
「あたしたち、みんな さんまいよ」

みんなと違うからと、ひとりぼっちになってしまったよつばの子。でも、よつばの子は自分ではよくわからない。そんなある日、もんしろちょうがふわりとやってきて、言います。

「あら、あなたの はっぱ、かわいい。おはなみたい」

水たまりにうつった自分の姿を見たよつばの子は、(ああ、とっても かわいい)と心から思い、嬉しくなったのです。よつばの子にはあたたかな笑顔が浮かんでいます。すると、ふしぎなことが起こります。よつばの子のまわりには、友だちがどんどん集まってきて……。

よつばを見つけるのが得意な女の子をとおして語られる、しろつめくさのふんわり優しいお話。よつばの子の気づきをきっかけに、他の子にもだんだん自分の不安が見えてきて、それでも少しずつ自分が好きになっていくのです。淡い色彩で、はかなげな雰囲気で描かれるしろつめくさの原っぱだけれど、そこはいつも笑顔でいっぱい。一面に生えているしろつめくさの葉っぱを眺めながら、私たちはいつでもその話を思い出すことができるのです。

春きたよ、春きたよ。目を覚ました生きものたちは『さくらのふね』に乗って花びら舞う川へーーきくちちきさんが描く生命の讃歌

さくらのふね

作:きくち ちき

みどころ

はるきたよ はるきたよ
ひらひらと春風に舞う花びらに、最初に気づいたのはテントウムシ。
うれしくなって、川面に浮かぶ桜のふねに乗り、山の仲間たちに春を知らせに行きます。

はるきたよ はるきたよ
その声に気づいたともだちのハチやチョウたちも、やっぱりうれしくなって。
同じく桜のふねに乗って、てんとうむしに続きます。
ニヤトコやカタクリの花々は、目を細めて虫たちの旅を見守ります。
いいたびに なりますようにーー。

やわらかな風、包み込むような優しい日差し。
虫、鳥、動物、草花、川や風までも、みんな、首を長くして春を待っていたのでしょう。うたい、飛び跳ね、はしゃぎます。時々「よりみつ」なんかもしたりして……!
生きものや自然にとって芽吹き花咲く季節を迎える喜びがどれほどのものか、のびやかに躍動する絵と言葉に感じ入ります。作者はきくちちきさん。紅葉の季節を鮮やかに描いた『もみじのてがみ』に続き、本作も春の自然の生を讃えたまぶしい一冊となりました。

ゆっくりと進んでいく桜のふね。虫たちの目の前に広がる麓の風景は、息をのむ美しさです。雄大な春の山の旅を、生きものたちと一緒に味わってくださいね。

『たんぽぽはたんぽぽ』すずめが言うとたんぽぽは花びらをぴん、ぴーん!ありんこ、ねこ、たろうくん、かけ声のリレーでみんな、ぐんぐん、のびのび!

たんぽぽはたんぽぽ

作:おくはら ゆめ

みどころ

たろうくんがあそんでいると
すずめがたんぽぽの上でさわいでいます。
すずめの声にみみをすますと、

「たんぽぽは たんぽぽ
 たんぽぽは たんぽぽ
 たんぽぽは たんぽぽ」

楽しそうなすずめたちにあわせて、
たんぽぽたちも
ぴん、ぴん、ぴーんとはなびらをのばします。

そのたんぽぽたちの上を
歩いているのは、小さなありんこ。
今度は、たんぽぽの声にみみをすますと、

「ありんこは ありんこ
 ありんこは ありんこ
 ありんこは ありんこ」

愉快な掛け声のリレーは、すずめから始まり、
たんぽぽ、ありんこ、ねこたち、そしてたろうくんへ。
はずかしがっているたろうくんも
最後はまけじと・・・。

おくはらゆめさんの描く、春の絵本。
くりかえしの言葉が楽しくて、
春がでんぐりがえししてぐるんぐるん
ころがって、ごろ、ごろ、ごろーん。
たろうくんの目線で描かれる
のびのびとした生き物たちの賛歌。
青空を眺めながら小さな命がすべて愛おしく感じる
かわいらしい絵本です。

酸素をつくり、動物や鳥の食を支え、衣服や家具や薬になる恐るべき力!植物の役割を知り守っていく術について考える一冊『植物が 世界を すくう!』

植物が 世界を すくう!

作:アナベル・セイヴァリー絵:チュイ・ラン訳:佐藤 見果夢

出版社からの内容紹介

植物のスーパーパワーを知っていますか? 二酸化炭素を吸って酸素を吐き出し、動物や鳥にすみかや食べ物を提供し、自然界のバランスを絶妙に保ちながら、衣服になったり、家具になったり、薬になったりして、人間の生活に役立っています。植物への知識を深め、どうすればこの貴重な存在を守っていけるのか考える科学絵本です。

動画公開中

文:竹原雅子 編集:木村春子