竜星涼さんが選んだ1冊は?「どう価値のある生き方をするのかが一番大切なんだと思います」

あの人と本の話 and more

公開日:2023/9/14

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年10月号からの転載になります。

竜星涼さん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、竜星涼さん。

(取材・文=松井美緒 写真=TOWA)

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「自分もこうありたい、と思いました」

 竜星涼さんが本書と出会ったのは、主演ドラマ『スタンドUPスタート』がきっかけだった。竜星さん演じる主人公が渋沢栄一を尊敬しているという設定で、渋沢について調べるうちに、この本に書かれた彼の経営思想に強く惹かれたという。特に心に残るのは、やはり渋沢の信念の根本でもある「道徳に基づいた経営」。

「若い頃は特に、自分のことばかり考えがちです。でもやはり、地位や名誉、お金を得るためではなく、どう価値ある生き方をするのか、というのが一番大切なんだと思います」

経営とは分野が違うけれど、役者の仕事でもこれは必要なスタンスだ。

「やっと最近、僕も人のために演じたいと思えるようになりました。役者の仕事は一生懸命になるほど視野が狭くなって周りが見えなくなる。ですが、それを続けるうちにだんだん寂しくなってしまう。観てくださる方や近しい人、誰かのため。社会貢献というと大袈裟かもしれないけど、そういった思いがないと続けていけないんじゃないでしょうか。気持ちが外に向き始めたことで、僕も少しいいお芝居ができるようになったかなと思っています」

 間もなく始まる舞台『ガラパコスパコス~進化してんのかしてないのか~』も、観客のために演じたいと竜星さんは言う。竜星さんの役どころは、主人公の太郎。

「社会の中で弱者として生きている彼が、もっと弱い立場にいるであろう老婆と出会ったときにどう成長するのか。人は、人によって変われるんだろうと思います」

 これまで舞台は、自身のキャリアのターニングポイントとなってきた。今回の『ガラパコスパコス』もきっとそうなるだろうと竜星さんは言う。

「高齢者施設を十数カ所廻って作り上げたノゾエ征爾さんの代表作です。舞台の上には役者と黒板とチョークだけ。役者のイマジネーションと観客の方とのコミュニケーションが、作品世界を作るすべて。もう初めての挑戦ばかりです。本当に僕にできるのか、非常に怖い」

 でもだからこそ、わくわくする。

「舞台は、身を削るように自分と向き合う作業です。辛いんですけれど、その分、終わった後にはすごい達成感がある。役者として何か新しいものを得られる。だからいつも、ついつい挑戦しちゃうんですよね。副題のように、僕も進化しているのかいないのか。ぜひ進化したいですね」

ヘアメイク:井手賢司(UM) スタイリング:山本隆司(style³)

りゅうせい・りょう●1993年、東京都生まれ。2010年、俳優デビュー。主な出演作は、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』、『スタンドUPスタート』、日曜劇場『VIVANT』、映画『弱虫ペダル』『ぐらんぶる』『リスタートはただいまのあとで』『G メン』など。

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舞台『ガラパコスパコス~進化してんのかしてないのか~』

舞台『ガラパコスパコス~進化してんのかしてないのか~』

作・演出:ノゾエ征爾 出演:竜星 涼、藤井 隆、青柳 翔、瀬戸さおり、芋生 悠、山田真歩、菅原永二、高橋惠子ほか 9月10〜24日 世田谷パブリックシアター
●社会に馴染めず、派遣のピエロの仕事で生活をしている青年。ある日、偶然出会った老婆と共同生活することに。実は彼女は特別養護老人ホームから抜け出したのだった。青年の兄夫婦、ホームの職員などの思いが複雑に絡み合い……。