齋藤飛鳥さんが選んだ1冊は?「ああ、自分の感情ってこう言葉にすればいいんだなと思いました」

あの人と本の話 and more

公開日:2023/10/14

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年11月号からの転載になります。

齋藤飛鳥さん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、齋藤飛鳥さん。

(取材・文=松井美緒 写真=booro)

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 読書好きで知られる齋藤飛鳥さん。この短編と出会ったのは、ちょうど書かれている女の子と同じ年頃、高校生のときだった。

「ああ、自分の感情ってこう言葉にすればいいんだと思いました。繰り返しの毎日に嫌気がさしたり、お母さんの言動にイライラしつつも、その優しさを理解していたり。思春期のぐちゃぐちゃした感情がそのまま描かれていて、すごく共感しました」

『人間失格』『斜陽』など他の太宰作品と比べても、この短編が好きだという。昨年も読み返し、ブログやInstagramの文章の参考にもしている。

「文体がすごく好きで。句読点の使い方が特徴的ですよね。『女生徒』には、独特の空気感があります。すべてが曖昧ですっきりしない。先ほど共感と言いましたが、最後まで読んでもその気持ちが救われるわけではない。でも、それこそが人生かなあと思うんです。まさにそういうモヤモヤ感の連続が人生なんじゃないかと」

 太宰作品に心惹かれる理由は。

「私、人とのコミュニケーションがあまり得意ではないんです。でも小説を通してなら、人間の本質みたいなものを見ることができる気がして。太宰作品には、人間の根底にあるものが描かれていると思います」

 間もなく齋藤さんが出演するドラマ『マイホームヒーロー』の放送がスタートする。物語は、平凡なサラリーマン・鳥栖哲雄がひとり娘・零花の彼氏を殺害するという衝撃的な展開から幕を開ける。齋藤さんが演じる大学生の零花は、父が何をしているのか家族の中でただ一人知らないという難しい役どころだ。

「ハードな展開の中で、零花のシーンは観ている方の笑いを誘う息抜き的役割です。私はお芝居の経験がまだ少ないので、そういうテンポがあまり身についていなかったんです。でも、哲雄役の佐々木蔵之介さんや監督が細かく教えてくださって」

 息もつけないノンストップサスペンス。だがすべてのシーンに愛がある、と齋藤さんは言う。

「家族愛の物語ですよね。私もグループを卒業して環境が大きく変化して、そういう時期って不思議と家族のことをよく考えるんです。零花は両親の愛をいっぱいに受けている子です。私も家族を愛し、愛されていることを忘れずに演じたいです」

 来春の映画公開も決定している。

「様々な要素が詰まった作品ですから、大きいスクリーンで観終わった後にどんな感情になるのか、私自身も今からすごく楽しみです」

ヘアメイク:秋鹿裕子(W) スタイリング:市野沢祐大(TEN10) 衣装協力:ベスト4万9000円、シャツ3万7000円、スラックス3万8000円(すべてPONTI/MAEDA DESIGN LLC.TEL03-6280-4408)、チョーカー3万1000円(ODAKHA/S&T TEL03-4530-3241)、ピアス12万円(sharanpoi sharanpoi.com)、リング(右手薬指)6万円、2連リング(左手薬指、小指)3万円、リング(左手小指)6万2000円(すべてAdlin Hue adlinhue.com)(すべて税別)、その他スタイリスト私物

さいとう・あすか●1998年、東京都生まれ。2011年に乃木坂46オーディションに合格しデビュー。20年、『映像研には手を出すな!』で映画初主演。22年末に同グループを卒業し、23年5月に卒業コンサートを実施。その他の主な出演作に、ドラマ『映像研には手を出すな!』『リモートで殺される』、映画『サイド バイ サイド 隣にいる人』など。

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原作:『マイホームヒーロー』山川直輝、朝基まさし(講談社『週刊ヤングマガジン』連載) 出演:佐々木蔵之介、高橋恭平(なにわ男子)、齋藤飛鳥、淵上泰史、内藤秀一郎、音尾琢真、吉田栄作、木村多江 10月24日(火)MBS24:59~、TBS25:28~放送スタート
●愛する家族と平穏に暮らす、ごく普通のお父さん鳥栖哲雄は、ある日、娘の彼氏を殺してしまう。死体を隠蔽した彼を待っていたのは、冷徹で残忍な“闇社会の半グレ組織”だった。来春、映画も公開予定。
(c)山川直輝・朝基まさし/講談社/ドラマ「マイホームヒーロー」製作委員会・MBS