『フェイト/エクストラ CCC FoxTail』連載10周年記念特別対談！ 「Fate」シリーズ原作者・奈須きのこ×コミカライズ著者・たけのこ星人が語る制作秘話【後編】

たけのこ星人と奈須きのこが挙げるベストシーン

――『FoxTail』でベストシーンを挙げるとするなら、どのシーンになるでしょうか。まずは漫画の華となっているバトルシーンを中心にお願いします。

たけのこ：描いていて楽しかったのは、カルナvs.ガウェインのバトルです。描くべき内容は決まっていましたし、トップクラスの力を持つふたりのバトルは、どれだけ盛っても盛りすぎることはないので、好き勝手に気持ちよく描かせてもらいました。

たけのこ：鈴鹿御前vs.源頼光も楽しかったですね。渡れいさん（※4）が連載している『Fate/Grand Order -Epic of Remnant- 英霊剣豪七番勝負』（講談社）でも今後は頼光のバトルが出てくるハズで、絶対に読者の方に比較されてしまうだろうなと感じたので、勝ち負けどうこうではないですが挑まざるを得ないぞ……と、めちゃめちゃ気合を入れて描いた記憶があります。世の中には上手い人が多すぎる……。

たけのこ：バトル以外で挙げると、第11巻のキャス狐と岸波くんのシーンは当然として、他に言うとするなら坂神くんと鈴鹿との出会いのシーンとかですかね。鈴鹿が空気を読まないハイテンションで登場することで、坂神くんが背負った重い運命を切り払いますよ、ということを示せたかなと。

――奈須さんの方はいかがですか？

奈須：まず、コミックス第2巻の冒頭で描かれた初の戦闘シーンです。たけのこ星人さんの画力の高さが生み出すアクションに加えて、「Fate/EXTRA」のゲームシステムの要素も落とし込まれているんです。あれはゲーム好きでないと描けないし、構成も難しい。それなのに、今後も同じ密度と遊び心が詰め込まれたバトルを、毎回描いていくのか!? と驚かされました。

奈須：カズラvs.プロテアは画面がダイナミックなのに加えて、最後の展開にグッときました。プロテアが退場するときのセリフから、たけのこ星人さんの「CCC」とプロテアへの愛が伝わってきたんです。企画時は舞台装置でしかなかったプロテアは、『FoxTail』の中でたしかに生きていたんだなと……。ああいう形で退場させてもらえたのは生みの親としても驚きでしたし、感謝しかありません。

奈須：3つめはネタバレになるので詳しくは触れませんが、第10巻で描かれたバトル。「敵vs.敵」の戦闘が面白くなるのは必然なんです。物語の本筋には関わらないからこそ勝敗は読めないし、どちらが勝ってもワクワクしますからね。特に第10巻で描かれたとある人物のバトルは「これはずるい！」というくらい面白かった。

※4　渡れい
『Fate/Grand Order -Epic of Remnant- 英霊剣豪七番勝負』を連載している漫画家。ゲーム「Fate/Samurai Remnant」では全キャラクターの作画と、全マスターのキャラクターデザインを手掛けた。

物語の最終局面に向けて

――奈須さんはたけのこ星人さんを、どのようなタイプの作家だととらえていますか？

奈須：たけのこ星人さんは物語をとても厳密に考える方です。ストーリーテリングというものは、真面目にやればやろうとするほど体力を使います。各キャラクターの感情線や伏線の回収、それらをどう見せるか、どういうふうに間をとるのかなど、考えなければならないことは果てしなく広がっていきます。作家によっては「ここはノリでいってしまおう」とか「読者も雰囲気でわかってくれるだろう」と力を抜く人もいますが、たけのこ星人さんは力を緩めたりはしない。そこは漫画家以前に、ストーリーテラーとしてすごい部分だと思います。

　それに加えて、漫画に原作ゲームの要素をしっかり落とし込む遊び心と、キャラクターの生々しい感情表現やセリフ回し。それらが詰まった『FoxTail」は読んでいるととても濃厚な時間が味わえて、たとえるなら極上のうな重のような圧倒的な食べ応えと満足感が得られる漫画だと思います。

たけのこ：自分で言うなって話ですけど、たぶん僕は根っこの部分が生真面目で、不器用なんですよね。そのせいだけではないですが、結果として『FoxTail』は読みごたえがありすぎて、サラッとは読めない。そこが長所であり短所でもあるなと自分でも思っているんです。なにより、僕自身『HUNTER×HUNTER』（集英社）みたいに1ページに情報量をギュッと詰め込んだ漫画が好きで、そういう漫画を描きたくて四苦八苦してたんですよね。それはそれで楽しかったんですが、最近は以前よりは大きめのコマの数を増やして、もう少しだけ読みやすいものを目指すようになりました。そうすれば、自分も少しは楽できるし、読者も読みやすくなるし、Win-Winだぞと。精進します。

――では最後に、おふたりからメッセージをお願いします。

奈須：『FoxTail」は大元の「CCC」を知らないと楽しめないと思っている方もいるでしょうが、そんなことはまったくありません。「CCC」をプレイした方ならより深く楽しめるでしょうけれど、「FGO」をプレイした方なら「Fate」作品のひとつとして、電脳世界での「聖杯戦争」と「ボーイミーツガール」を存分に楽しめます。あと、できればコミックスサイズよりも大きめのタブレットなどで読んでほしい。できるだけ大きな画面で見れば、たけのこ星人さんによる緻密なキャラ描写を味わえるはずです。長かった連載もようやくゴールが見えてきたので、今から読んでも遅くありません！

たけのこ：連載開始当初から、『FoxTail』は「CCC」を遊んだ方に喜んでいただくのは当然として、「CCC」を遊ばれていない方にも漫画自体の面白さでしっかり楽しめるように、この漫画単体でも面白いと思っていただくことを心がけてきました。より幅広い方々に「Fate」ワールドの面白さを知っていただく一端を担うことができれば。その思いで10年間走り続けてきました。今は物語のラストに向けて、描きたいことを並べているところです。ぎゅ～っと凝縮して濃度の高いラストにするつもりですので、最後までご期待いただければと思います。そして10年間変わらず応援し続けてくれた読者の方には、もう頭が上がりません。本当にありがとうございます！ あと少し、最後まで応援をよろしくお願いします！

　

　岸波とキャス狐たちの戦いが最終局面に向けて加速している『FoxTail』。今後待ち受ける最後の戦いは、どのような展開を見せるのか。10年にわたる戦いの結末を最後まで見届けてほしい。