瀬戸康史「言葉は交わさずとも、自然と現場でできあがった空気。それがスクリーンのなかの関係性、そのものだったのだと思います」

あの人と本の話 and more

2015/9/6

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、杉浦日向子初期の傑作を映画化し、モントリオール世界映画祭に邦画で唯一ワールドコンペ部門に出品された映画『合葬』で、激動の時代に揺らぐ彰義隊の志士を演じた瀬戸康史さん。10月から上演される舞台Dステ17th『夕陽伝』では座長にも。『古事記』を題材にとったその舞台で仕掛けようとしていることとは――。

 高い志をもって結成された彰義隊に、ふわりと入ってしまった青年武士・吉森柾之助を演じている瀬戸さん。

「彼は居場所を探していたんでしょうね。実家にも養子先にもなかったその場所を。途方もなく歩き続け、自分を自分と認めてくれる極、悌二郎の二人と出会い、彰義隊に入った。
だから、柾之助は散る運命とどこか感じつつも、あの場所にいたのだと思います」

恋、友情、志……本作は、その一瞬一瞬を丹念に紡いだ青春物語でもある。志士役の柳楽優弥、岡山天音、そして瀬戸康史、3人のアンサンブルが得も言えぬ空気を作りだしている。

「各々がそれぞれの役にぴったりでしたね。性格や持っている気質が。現場で役に関する話し合いは特にしませんでしたが、そういう空気が自然にできあがっていったんです。京都での撮影中は、3人でよくご飯を食べに行ってました。くだらない話もいっぱいしたし(笑)。もしかしたら、あの関係性はそこでつくられていったのかもしれません」

10月から上演されるDステ17th『夕陽伝』では、主演、座長として役者、スタッフの“良き関係性”を構築する側になる。

「俳優集団D-BOYSがメインで出演するDステは、現代劇だけでなく、戦争ものやシェイクスピアなど難易度の高いものに挑戦させてくれるステージなんです。今回は『古事記』に題材をとった舞台に挑戦します」

あらがえぬ運命のなか、受け取った生命と国を次の時代に継いでいこうと生き抜く若者――大和朝廷の時代、王になる定めを持ちつつも、その運命からから逃れ、自由に生きることを望む“海里”を瀬戸さんは演じる。

「『古事記』が題材とはいえど、ストーリーはシンプル。エンターテインメントとしてみていただくために、恋愛の要素もありますし、舞台映えする殺陣も盛り込まれています。殺陣でやりたいと思っているのが、型を意識するより、役それぞれの想いやキャラクターをそこに投影すること。殺陣を見れば、すべてが伝わるというものを目指していきたい」

“まだ舞台を観たことがない”という人にもぜひ来てほしい――と瀬戸さんは言う。

「舞台って、たしかに映画よりも観るためのハードルが高いかもしれません。でも、役者がその場で演じることで生まれる息づかい、匂いなど、劇場にはたくさんのものが詰まっています。舞台と客席が一体になる、唯一無二のその魅力をぜひ体験していただきたいですね」

(取材・文=河村道子 写真=下林彩子)

瀬戸康史

せと・こうじ●1988年、福岡県生まれ。近年の出演作は、舞台『マーキュリー・ファー』、映画『わたしのハワイの歩きかた』、大河ドラマ『花燃ゆ』、ドラマ『マザーゲーム~彼女たちの階級~』『玉音放送を作った男たち』など。現在、木曜ドラマ『エイジハラスメント』に出演中。10月には主演舞台Dステ17th『夕陽伝』が控えている。
ヘアメイク=小林純子 スタイリング=手塚陽介

 

『虐殺器官』書影

紙『虐殺器官』

伊藤計劃 ハヤカワ文庫 720円(税別)

テロとの戦いが転機を迎えた9.11以降、米国は徹底的な管理体制でそれらを一掃。だが、後進諸国での内戦や大量虐殺は急激に増加していた。米軍大尉クラヴィスはその陰で常に囁かれる男を追い、チェコへ。彼の目的とは? 大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは? 11月にアニメ映画化。近未来SFの金字塔。

※瀬戸康史さんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ10月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

 

映画『合葬』

原作/杉浦日向子『合葬』 監督/小林達夫 出演/柳楽優弥、瀬戸康史、岡山天音、門脇 麦、桜井美南、オダギリジョー 配給/松竹メディア事業部 9月26日(土)より全国ロードショー
●将軍の警護と治安維持を目的に結成された彰義隊は幕府の解体により反政府的な立場へ。徳川慶喜に忠誠を誓った秋津極、養子先から追われ、行くあてのない吉森柾之助、彰義隊の存在意義に疑問を抱きつつ関わった福原悌二郎─3人の運命は時代の流れに翻弄されていく。
© 2015 杉浦日向子・MS.HS/「合葬」製作委員会