伊集院静氏「電子書籍は文章だけでは伝えられない“何か”を表現できる」

新刊著者インタビュー

更新日:2013/8/13

自分の目で見て、行動していくことが大事。
それを伝えられるのが電子書籍の魅力と可能性

――今回『男の流儀入門【震災編】』を読んで感じたのは、自分の目で見たものが本当のことであって、そこから行動を起こさなければならないということでした。それに必要なのが、「体力と精神力を鍛えること」と本書の中でくり返し伝えていますが、その真意はどこにあるのでしょう?

伊集院: 歴史のただ中にいることの覚悟と自覚を持つためです。精神力を鍛えるには、自分なりの体力をつくっておかなければならない。これはすべてにおいて優れた体力というわけではない。何でもいいから、人よりちょっと優れた体力をつくっておけということです。

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――アスリートのような体力ではないと?

伊集院: たとえば、「車の椅子の天才」と呼ばれるホーキング博士は難病で一般的な体力はなかったかもしれないが、人並み外れた“思考”体力を持っていた。いつまでも思考を続けられる体力があったから、それとともに精神力もついてきた。新しいものをつくりだすには体力と精神力が必要です。体力と精神力を鍛えることは新しいものをつくる扉だ。震災を自分の目で見て、自分なりに考え、「自分はこうするべきだ」と行動する…。これも体力と精神力を鍛えることになるだろう。それを紙の書籍ように文章だけで伝えるには限界がある。そこで、動画や音声を入れられる電子書籍が必要になってくる。それが電子書籍の魅力であるし、大きな可能性だ。

――そのあたりに『男の流儀入門』シリーズの今後の展開のポイントがありそうですね?

伊集院: 若い人には「ものを覚える」という時間がなくなってしまった。少年時代は勉強とゲームにほとんどの時間を費やし、本当の意味での“遊び”というものを知らない。だったら、少し遊んできた私がそれを教えましょう…というのが、もともと『男の流儀入門』のシリーズ化のきっかけだった。「よく学び、よく遊べ」と人は言ったが、「よく遊び、よく遊べ」が私のテーマ。そんな“飛び抜けた大人の男”が流儀を指南していくのが、電子書籍の『男の流儀』シリーズ。だから、次は【恋愛編】、【遊び編】と続けていく予定です。

――そこで「最強キャラ」が必要である、と。

伊集院: そのとおり。「飛び抜けた大人の男=伊集院静」。それくらいの感じでシリーズを展開していこうと思っています。これからが本編となるが、電子書籍化にあたっての“こころ、精神”は、第一弾の【震災編】で伝えた。私もそうだったが、若いうちは誰もが愚かだからね。いささか変わった還暦過ぎの男が、若い人が知らないこと、やったことのないことを指南する。そういうのも大人の男の仕事のひとつだろう。

『男の流儀入門』シリーズは、【恋愛編】、【遊び編】が近日配信予定。【恋愛編】では草食系男子に喝!? 【遊び編】では信じられない金と時間を使ってきた最後の無頼派作家の流儀を徹底的に語る

 

電子『男の流儀入門【震災編】』

伊集院静/M-UP/App Store/iPad、iPhone/無料(アプリ内課金450円)

伊集院静氏は2011年3月11日、妻と愛犬たちと住む仙台の自宅で東日本大震災に被災。未曾有の危機の前に、氏がとった判断と行動とは? 現場にいた人間、いや作家にしか語ることのできない「大人の男」がとるべき振る舞い方を、文章と動画による「肉声」で指指南する電子書籍。本書の内容は「いつ襲ってくるかわからない危機」への具体的かつ本質をとらえた示唆に富む。男性に向けて語られているが、老若男女、誰にでも心に留めておきたいことばかり。大友康平による主題歌「ハガネのように花のように」も所収。