「今の自分のすべてを切り取ったアルバム」から見えてくるものとは――May’nインタビュー

音楽

2017/10/18

 前作『NEW WORLD』から、実に3年9ヶ月。May’nの5枚目となる待望のオリジナルアルバム『PEACE of SMILE』は、まさに「アーティスト・May’n」が今持てるすべてを注ぎ込み、制作された1枚である。2015年のデビュー10周年と、その後に行われたふたつのツアー『SPRING OUT!!』『OVER∞EASY』で、自らをさらけ出しすべてをぶつけるステージを披露したMay’nは、音楽を受け取り、ともに楽しむ「仲間」たちの存在を強く実感した。「仲間」との絆を確かめ、自らの音楽への確信を深めた先に生まれた『PEACE of SMILE』は、May’nが仲間たちと共有してきた時間の集積であり、その時間がずっと続いていく未来を予感させるアルバムになっている。手応え十分の1枚について、熱く語ってもらった。

自分のことを考えたし、感じたし、見つめ直しながら作ったアルバムです

――まずは、最新アルバムに対して感じている手応えについてお話を聞かせてください。

May’n:アルバム全体として、自分がやりたかったもの、今考えてることを全部詰め込むことができたなあと思っています。4年ぶりのアルバムですけど、この2年くらいで人生改革が起こったような感じがしていて、絶対に自分自身に嘘をつきたくないと思ったし、ちゃんと信念を持って制作をしたいと思っていました。自分自身とMay’nをちゃんとリンクさせられるようなアルバムにできたらいいなっていうことも考えていたんですけど、完成したものを聴いてみても、こんなに自分自身とリンクしたアルバムは初めてかもしれないなって思います。いつも、「May’nはこうであってほしい」「May’nの音楽性ってたぶんこういう感じだよな」とか、わたし自身が考えるMay’n像みたいなものを掲げてきた気がするんですけど、そうではなく、普段考えてることとか、ブログで見せる肩に力が入ってない部分とかも、全部認めてあげることができた、というか。自分のアーティスト像と普段のわたしが違っていたことで、たとえばもがく時期があったり、「こうであってほしいのに」みたいな理想もあったんですけど、今の自分に目を向けて作ることができた新曲たちが入っています。今まで、素晴らしい景色をたくさん見させてもらって、だけどこれからの10年のほうが絶対にいい10年になるだろうって思うんですけど、それは自分自身が持つパワーというよりも、ライブの場で仲間と過ごす時間に、すごく自信が持てるんです。なので、その漲るパワーは、絶対に今回のアルバムに込めたいなって考えてました。

――4年ぶりのアルバムだからと言って再始動するわけではなく、ずーっと地続きなんですよね、

May’n:そうですね。「ここからの10年のほうが絶対いいものにしてやる」っていうことも、少し前のわたしだったら恥ずかしくて言えなかったし、カッコつけちゃうところもあったんですけど、誰にどう思われてもいいやって思えるというか。自分が信頼している仲間の目をまっすぐ見つめていたいし、嘘はつきたくないなって思ったのは、すごく大きいです。

――アルバムを聴いていて思ったんですけど、音楽を楽しむ方法や音楽を楽しんでもらうための方法、それに対して選択できるアプローチの幅が広がった感じは確実にありますよね。

May’n:まさしくそうですね。今までだと、もちろんライブを軸に考えたいというところがまずあって、歌のテイクにしても、「自分の声が一番上手く聞こえるもの」を選びがちだったんですけど、今回はそういうことをほとんど考えてなくて。もちろん、作品としてのボーカルというのは大前提としてあるんですけど、すごく人間味が出ていたり、ちょっと不安が出たような歌い方だったとしても、「このほうが曲に合ってるな」とか、歌を作るというよりも「音楽をみんなに楽しんでもらうためにはどうすればいいか」っていうことを、今までで一番幅広い視点で掘り下げることができたと思います。

――きっと、今まで以上にアルバムの制作が楽しかっただろうと思うし、音楽と向き合うときの心地よさも、これまでと違うんじゃないかなって想像してたんですけども。

May’n:そうですね。このアルバムは、今の自分のすべてを切り取ったものなので、めちゃくちゃ楽しかったし、めちゃくちゃ疲れました(笑)。こう、人生を切り落としながらというか、自分の中にあるものを出しながら作っていく感覚はすごくありましたね。ライブの場で、曲の主人公として見せる、演じる、みたいな立場からやってきた曲も今まではあったし、それが間違っていたとも思ってないですけど、今回はすべて自分でいきたかったっていうところがまずあって。なので、これまでで一番自分のことを考えたし、感じたし、見つめ直しながら作ったアルバムです。

みんなから愛してもらえてる自分を、自分自身もちゃんと愛そうって思えた

――アルバムの13曲目、“バースデイ!~PEACE of SMILE”の話をしたくて。May’nさん自身によるこの曲の歌詞、ちょっと衝撃的でした(笑)。

May’n:Aメロで、《たいやきやいた!》ってわたしが一番好きな言葉を入れてますからね(笑)。

――(笑)そもそも、誕生日を題材にして楽しい曲を作るっていう発想自体が今まではなかったと思うんですよ。そういう意味でとても象徴的な曲だな、と。

May’n:もともと、イベントソングを作りたいなっていう気持ちはあって。クリスマスソングとか、卒業ソングとか。でも、わたしにはそういう季節ソングが一切なくて。なぜなかったかというと、「いつでもセトリに入れられないじゃん」って思ってたんです。ステージで歌うことだけを考えて、今までは作ってこなかったんですけど、「この季節はこの曲を聴きたいなあ」とか「冬になったからMay’nは冬の曲歌うかなあ」とか、みんなにとって身近にあるテーマの曲を歌ったら、もっと音楽を楽しんでもらえるかなあ、と思って。バースデーライブもあって――誕生日って、誰もが持っているイベントですよね。「もう、誕生日だからなんでもやっちゃおうよ!」みたいなパーティー感を曲にできたらいいなあ、と思いました。

――ものすごく解放された感じが曲から伝わってきますけど、ここまで解放してみてどうでした?

May’n:もう、楽しくてしょうがなかったですね。やりたいことを全部詰め込んだ、欲張りソングだとわたしは思っていて。楽しむ方法って、無限にあるなあって思うんです。音楽のジャンルとしてもそうですし、自分の声を使って「こういう歌い方どうかなあ?」とか、そういうことを考えるのもすごく楽しいです。今までは、何かを思いついたとしても、自分で封じてしまう部分はすごく多かったんですけど、提案させてもらえる環境があって、スタッフさんのこともすごく信頼しているし、そこでちゃんとぶつかっていかないと失礼だなって思う今があるので。だから、今はとにかくいろんなことを試してますね。

――普段のMay’nとステージ上のMay’nを分けることを貫いてきたけど、その両者が一緒になったところって、実はいろんな人に求められてたんだと思うんですよ。「そういうMay’nも見たい」っていう気持ちを持っている人は多かったはずで。で、お客さんに本当の意味で答えるためには、解放した部分も見せていくことがたぶん正しい答えなんですよね。それをちゃんと見つけてアルバムにしたのが『PEACE of SMILE』であり、曲にしたのがこの“バースデイ!”なんだと思います。

May’n:そうですね。今までも音楽的な部分でチャレンジさせてもらったり、いろんなアルバムを出させてもらってきたんですけど、今回のアルバムって、「早く聴かせたい!」って思うんです。それは楽曲の向き合い方もそうなんですけど、一番はみんなとの出会いで作れたアルバムなんだよっていう思いがあるからなんだろうなって思います。自分だけが「すごくカッコいいことできたな」とか「歌が超上手く録れたな」って思ってるだけだったら、そこまでの自信には絶対にならないというか。「ほんとにこれでよかったかな?」みたいな緊張もあると思うんですけど、みんなと一緒に作った感があるからこそ、「早く聴かせたい!」という自信を感じられてますね。

――それって、より自分を好きになれたっていうことでもあるんでしょうね。

May’n:そうですね。ずっと、自分に自信がなかったので。ただ、それだと応援してくれてるファンに対して、応援してくれてる人に対して失礼だなって思ったんです。みんなから愛してもらえてる自分を、自分自身もちゃんと愛そうって思えたから、自信が持てたのかなあ、と思います。

――アルバムを経て、12月からはアコースティックツアーも始まるわけですが、ステージの上でどんなMay’nを見せたいと思いますか。

May’n:できれば、全部違うライブにしたいです。アコースティック・ライブって、アコースティックだからこそ音楽的に求められることがあって、チャレンジでもあるので、すごくやりがいを感じるんですけど、今回はそういうことではなくて、むき出しになれることが一番嬉しい、というか。近い距離で、アコースティックという、何もごまかしがきかない状態ですべての曲をやることへのワクワク感があります。以前は、むき出しになることに怖さもあったので、「どういうふうに見せようかなあ?」って音作りもすごく考えていた気がするんですけど、今は何よりもむき出しでステージにいたいなって思います。「人間・May’n」でステージに立っていたいですね。そのむき出しでいたいって思えることも、ほんとにこの2年での変化だと思います。たとえば東京はキネマ倶楽部、名古屋はブルーノートでやるので、大人っぽい、シンプルな感じで皆さんに音を楽しんでいただけると思うんですけど、とにかく一緒に時間を過ごせることが楽しみです。

――変に自分を抑えたり、ふたをする必要はないでしょうし、今後もそれは変わらないですよね。

May’n:そうですね。とにかく湧き上がる自分の感情に、素直に耳を傾けていたいなって思います。あとは、自分についてきてくれる人に「May’nについてきてよかった」って思ってもらえたらいいなって考えてます。小さい頃から、カッコつけちゃったり、「いい子でいなきゃ!」みたいな性格だったんですけど、別にいい子じゃなくてもいいかもって今は思ってます。自分と、自分を信じてくれる仲間に真っ正面から「これがMay’nです!」って力強く言えることで、仲間に対する感謝の気持ちを示していきたいし、その場所に集う仲間がどんどん増えていったら、すごく幸せだなって思います。

取材・文=清水大輔 写真=GENKI(IIZUMI OFFICE)
スタイリング=伊藤彩 ヘアメイク=サカノマリエ(Allure)