『岡崎に捧ぐ』の杉ちゃんが『コンビニかけ合わせグルメ』本を出した! ディスク百合おん×山本さほの幼なじみ対談【前編】

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公開日:2017/11/3

「お刺身かにかま」と「冷凍チャーハン」を合わせただけの「かにチャーハン」、「わらび餅&白玉ぜんざい」と「抹茶練乳氷」を合わせた「宇治金時パフェ」などなど……。Twitterでたびたび話題を呼んでいたディスク百合おんの“コンビニかけ合わせグルメ”が単行本化! その発売を記念し、幼なじみの漫画家・山本さほと対談。前編ではマンガ『岡崎に捧ぐ』の著者と杉ちゃんのモデル(本人)ならではのユルくブッ飛んだ昔話に花が咲いた。

「この本、何がいいってイラストがいい!」(山本さほ)
「レシピもいいだろ!」(ディスク百合おん)

山本さほさん(以下、山本) (『コンビニかけ合わせグルメ』の本を見て)この本、凄くいいですよ。何がいいって、とにかくイラストがいい!

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ディスク百合おん(以下、百合おん) レシピを褒めてよ!

山本 イラストだけでいい!

百合おん 買う人減るからマジやめて(笑)。この本、山本さんのファンと、帯を書いてくれたねむきゅん(でんぱ組.inc・夢眠ねむ)のファンと、寄稿してくれた漫画家達さんのファンに頼って売っていくつもりなんだから!

山本  大丈夫。すごくイラストがいいから。

百合おん レシピもいいだろ!

山本 フルカラーなのもいいんだよねぇ……。あ、さっき食べたコロッケの衣が挟まってた。

百合おん 山本さん、この本渡したらコロッケ食べながら読んでるんですよ。「そんなボロボロこぼれるもの食べながら読むか?」って。しかも著者の前で!

――さすが幼馴染ですね(笑)。お2人の関係は『岡崎に捧ぐ』の中にも出てきますが、小学生の頃からの仲なんですよね。

『岡崎に捧ぐ』1巻より

百合おん そうですね。4年生のときに山本さんが引っ越してきて同じクラスになったんです。2人とも目立ちたがり屋で、ふざけるのも絵を描くのも好きだったから、すぐ仲良くなったんです。

山本 そうだね。最初に仲良くなったのが杉ちゃんだった気がする。

百合おん 『岡崎に捧ぐ』の中で山本さんが『町のコンビニエンスストアー』というマンガを描いてた話がありますけど、僕もマンガを描いてたんですよ。でも山本さんのほうが圧倒的に上手くて。僕はそこで心が折れて、漫画家の道は諦めました。

山本 杉ちゃん漫画家になりたかったの?

百合おん なりたかった! でも、ちゃんとしたマンガが全然かけなくて。

――お笑い芸人にもなりたかんたんですね。

百合おん 一番はお笑い芸人でしたね。

――山本さんから見て、当時の杉ちゃんは面白かったですか?

山本 まぁ、そうですね。小学生にありがちな、テレビで見た芸能人のマネをするみたいな感じで。

百合おん 俺は山本さんのマンガを褒めたのに、なんでシビアに評価すんだよ! でもまあ、実際そんな感じでした。当時好きだったつぶやきシローの真似したり。

山本 江頭2:50のマネもしてたよね。

百合おん やってた! 上半身脱いで「ワー!」とか言って出てくるみたいな。

山本 面白くて目立っている子でしたね。あと、私も杉ちゃんもクラスの特定のグループに属してなくて、みんなと仲がいい不思議なポジションでした。だから余り者同士で仲良くなったみたいな。

百合おん まんべんなく広くね。で、深くはないみたいな。

山本 ほんと杉ちゃんの人付き合いは浅かった! 昔から誰とも親友にならなかったし。

百合おん みんなとは喋るんだけど、だれも俺の連絡先は知らないみたいなね(笑)。

山本 でも今は友達いるもんね。

百合おん 「年を取ると友達ができなくなる」って痛感して。やっと心を入れ変えた感じです。

■内緒でやっていたネットラジオをクラスで流され「死ぬほど辛かった」杉ちゃんの高校時代

――『岡崎に捧ぐ』では山本さんが口喧嘩で杉ちゃんを泣かせていましたよね。

山本  私の方が圧倒的に強かったですね。あと、クラスのみんなを味方にしていました。

百合おん 「かかれー!」みたいなね。そうなると、こっちは広く浅く付き合ってるから、みんな山本さんの側に立っちゃうんです。それで運動会では全員寝返って。

――応援団長になったときに調子に乗りすぎて、クラス全員に応援をボイコットされた話ですね。読んでいて切なくなりました。

『岡崎に捧ぐ』1巻より

百合おん いまだに心が癒えてないですから(笑)。僕は山本さんを勝手にライバル視していたんですけど、何をやっても勝てないんですよ。文集に絵を載せるときも、山本さんは表紙の絵を描いていて、僕はクラスごとのページの絵を描いている感じで。だから僕は先生へのご機嫌取りで勝負してました。

――ディスク百合おんさんは勉強もできたんですよね。

百合おん でも推薦で男子校に入ったら急激にバカになったんです。周囲からいじられる立場にもなって、順調だった人生の階段を転がり落ちた感じでした。大学でも就活はせず、お笑いの道に進んじゃって。大人になるにつれて真面目になっていった山本さんとは逆の人生なんですよ。

山本 高校の頃は杉ちゃんとあまり会ってなかったから、杉ちゃんはいい高校に行って、真面目に勉強しているんだと思ってた。

百合おん 高校ではバカだったんだよ。漫画の中で山本さんが、学校の駅で降りられずに電車の終点まで行っちゃって、そのまま家の駅に戻って帰る日があった……って描いてたけど、俺も同じことやってたもん。

山本 そうだったんだ。

――一方で高校の頃にはDJの機材を買ったりと、今の音楽活動につながることを始めているんですよね。

百合おん 高校のときにパソコン買ってもらって、パソコンで曲を作ったりもしていましたね。

――その作った曲をアップしたホームページがクラスメイトにバレて、「悪いのは全部俺」という名言を残して閉鎖した……という話も『岡崎に捧ぐ』でバラされてましたね。

百合おん キツかったですよホントに! 学校に行ってクラスに入ったら、誰かが持ってきたノートパソコンで、みんなが俺のホームページを見てるんですよ。学校では内緒にしてたのに。

山本 地獄だ(笑)。

百合おん でしょ? そのとき俺、ネットラジオみたいなのもやってたんですけど、それを大音量で流されてさ。今だから笑えるけど、あのときは死ぬほど辛かった。

――昔の自分をマンガに描かれるって、どんな気分なんですか?

百合おん 基本はイヤなんですけど、これをきっかけに僕を知ってくれる人も多いんですよね。ネットで僕をディスク百合おんとして認知してくれていた人が、杉ちゃんのほうを知ってくれたり、逆に杉ちゃんのほうからディスク百合おんを知ってくれたり。当時イヤだった思い出も、みんな笑ってくれたり共感してもらえるとなると、まあまあいいのかなって。ただもう、自分が結婚して子供ができた時は、子供には絶対見せられないですね。

――「天然パーマにペンを挿してギネスに挑戦」って遊びをされてたり、口喧嘩で女の子に泣かされてたり……。

『岡崎に捧ぐ』2巻より

百合おん 親としてのプライドがね。実際に泣いてばかりだったんですけど(笑)。

山本 女の子みたいでしたね。

■『OH! MYコンブ』や闇鍋パーティーに「コンビニかけ合わせグルメ」の原点が

――そんな中で、今回発表された『コンビニかけ合わせグルメ』に関連する話だと、お菓子で料理を作るグルメ漫画『OH!MYコンブ』は子どもの頃から好きだったんですね。

百合おん そうですね。『コロコロコミック』と『コミックボンボン』を親にずっと買ってもらっていて、その時にハマってのが『OH! MYコンブ』だったんです。

山本 『OH! MYコンブ』大好きだったもんね。

『OH! MYコンブ』(秋元 康:著、かみやたかひろ:イラスト/講談社)

百合おん 実際にお菓子を混ぜて何か作ってましたね。高校生の頃に曲を公開していたホームページでも、『OH!MYコンブ』の再現レシピの話を載せていました。それで大人になって、一人暮らしをはじめてから、抑制されていた熱がまた湧いてきて。コンビニで買ってきた食べ物を組み合わせて楽しむようになったんです。

山本 杉ちゃん、ホントによく「オーマイコンブ!」って言ってたんですよ。
百合おん おいしいものを食べた後にボケみたいな感じでね。あと、中学生の頃に山本さんの家で闇鍋パーティーしたこともあったよね。

山本 みんなで3~4品を持ち寄って、真っ暗な中で1品ずつ入れてね。私はプリンとかも入れたなぁ。でも暗闇の中でみんながゴソゴソ動いてたから、誰かがコード引っ掛けて、鍋が全部ひっくり返っちゃったんですよ。

百合おん そうだっけ。

山本 そうだよ! 電気つけたらメッチャ地獄の状態で、もう臭いも凄くて。みんなで頑張って拭いたよね。

百合おん カーペット拭いた記憶ある!

――まず中学生が闇鍋って、なかなかやらないですよね(笑)

百合おん やっぱり食べ物を混ぜたりするのが好きだったんでしょうね。そういう闇鍋みたいなことが好きで、コンビニかけ合わせグルメもやっていたら、ツイッターで今までの音楽活動を超えるような話題になっちゃって。

山本 「かけ合わせグルメの人」みたいになってるもんね。

百合おん だから音楽活動の僕と、『岡崎に捧ぐ』の杉ちゃんに加えて、「かけ合わせグルメの人」っていう要素がまた増えちゃったんです。

■DA PUMPを聞いている山本さんにテクノのMDを無理やり聞かせていた

――山本さんから見て、今の杉ちゃんの多様な活動はどう見えますか?

山本 意外な感じはまったくないですね。かけ合わせグルメと『OH! MYコンブ』のつながり以外にも、近くで見ていた身としては、今の活動につながる要素がいっぱいあって。中学生の頃、私は普通のJ-POPとかを聞いてたんですけど、杉ちゃんは私にメチャクチャにリミックスされた音楽をMDで渡してくるんですよ。

百合おん サンプリングが多いテクノですね。ナードコアっていうジャンルで、今もやっている音楽なんですけど、それを山本さんに聞かせてました。

山本 そんなのDA PUMPとか聞いてる女子中学生に理解できるわけないじゃないですか! 赤ちゃんにふぐ食わせるみたいな感じですよ。

百合おん 当時はパソコンを持ってなかったから、同じ音楽好きな人とつながれなくて、無理やり聞かせてたんですよね。

山本 それで実際にミュージシャンになってからの曲を聞いても、その頃に聞かせてもらった音楽の雰囲気まんまだったんです。「なんも変わっちゃいないな」って。お笑いをやってたときも、見に行ったら小学校のころやってたことそのまんまで。

百合おん ジャージのズボンを引っ張って肩まで上げるみたいなね(笑)。

山本 アニメの『キテレツ大百科』で、キャラクターの顔の部分だけが丸く切り抜かれて、「とほほ」って言いながらチャンチャン♪ となる終わり方があるんですけど、それを芸人になってもやってたんです。

百合おん それがおもしろいと思ってるんだよね。

山本 変わってないなって。

百合おん 変わった方がいいよね(笑)。辞めて正解ですよ。でも、こうやって言ってくれるのは嬉しいですね。はたから見たら「バラバラなことをやってる」って言われがちなので。

山本 「いろんなことに手を出して」みたいな?

百合おん そう思われがちかも。でも、昔から知ってる人は「なんか一貫してる」、「相変わらずだね」みたいに言ってくれて。

山本 一貫性はあるよね。こういうグルメ本も、「好きじゃないけど仕事だからやる」っていう人もいると思うんですけど、杉ちゃんはホントに好きでやってるのが伝わってくるんで。音楽もそうだし、愛をもって作ってると思う。

百合おん いいこと言ってくれるね!

【後編】につづく

取材・文=古澤誠一郎

ディスク百合おん

ナード(オタク)カルチャーとダンスミュージックを融合させた音楽ジャンル「ナードコア」を得意とするミュージシャン/DJ。数年前から独自に「コンビニかけ合わせグルメ」を楽しむようになり、完成品をTwitterにアップしたところ、多くのリツイートと「いいね! 」を集めて話題を呼んでいる。

山本さほ

漫画家。ウェブサイト「note」で発表していたマンガ『岡崎に捧ぐ』が話題となり、『ビッグコミックスペリオール』(小学館)で連載開始。現在3巻まで発売中。そのほかの作品に『山本さんちのねこの話』(小学館)『無慈悲な8bit』(エンターブレイン)がある。