「お姉さま、百合のどこがお好きなんですか?」 百合好きお姉さまたちの座談会【前編】

マンガ

更新日:2017/12/25

「ときめき百合入門」特集のために、日頃から百合作品に親しんでいるお姉さまたちにお集まりいただき、楽しみ方や魅力をお伺いしました。話題は百合への愛、好きな作品にとどまらず、社会情勢の変化、BLとの違いにまで及び、ジャンルの奥深い魅力が明らかに。ビギナーにも、百合好きにも届けたい、百合好きお姉さまたちのリアルな声です。前編は、百合を好きなったきっかけ、魅力を語り合います。

<座談会参加者プロフィール>
Gお姉さま 百合歴10年。女性と交際経験あり。
Dお姉さま 百合歴半年。最年少ビギナー。
Bお姉さま 百合歴20年。もと文学少女。
Tお姉さま 百合歴10年。マンガ家と同居経験あり。

■仲の良すぎる女の子二人がすごく好きなんです

――みなさんが百合を好きになったきっかけを教えてください。

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Gお姉さま(以下、G) 映画化もされた『blue』(魚喃キリコ)で興味を持ちました。当時はまだ百合という言葉は知らなくて、ただ女の子同士の恋愛が好きで。そのあと意識したのが『ゆるゆり』(なもり)。いろんな女の子が出てきて、カップリングで楽しむのを覚えて。そこからわざわざ百合作品を読むようになりました。

『blue』魚喃キリコ

Bお姉さま(以下、B) よくよく原点を考えたら、アニメの『アルプスの少女ハイジ』かなと……(笑)。

一同 爆笑

B 仲の良すぎる女の子二人がすごく好きなんですが、少女マンガのヒロインはだいたい親友がいますよね。百合は小説から入っていて、最初に好きになったのは、『花のもとにて』(堀田あけみ)。そこから『至高聖所(アバトーン)』(松村栄子)、中山可穂、鷺沢萠、吉屋信子にも遡って、それ系を漁っていた感じでした。

Dお姉さま(以下、D) 百合と意識して読んだのは、『やがて君になる』(仲谷鳰。以下、「やが君」)なので最近です。話題だったので読んでみたら、痛いくらい切なくて、共感できて、おもしろかった。絵も繊細で楽しめました。

『やがて君になる』仲谷鳰

G 「やが君」は、好きという気持ちからではなくて、あなたの特別になりたい、ではじまっているのがすごいですよね。今まであまりなかった。

Tお姉さま(以下、T) 私が女の子同士の恋愛をはじめて意識したのは小説の『ナチュラル・ウーマン』(松浦理英子)。その後BLなども読んでいて、『青い花』(志村貴子)で、とにかく制服がかわいいなと目覚めて。『どうにかなる日々』(志村貴子)も読んで、百合にも幅があるんだなと思いました。百合の魅力は、女の子の制服です!(笑)。マンガ家さんもこだわって描かれるし、造形がいいですよね。

『青い花』志村貴子

■制服の百合が好きなのは、あこがれがあるから

――女性にとっても、女の子の「制服」は萌えの対象なのですね。

G 私も『ゆるゆり』を好きになったのは制服からでした。コスプレイヤーさんも多かったですし、原作も、コスプレも、ほんとうにかわいくて。

T 『たとえとどかぬ糸だとしても』(tMnR。以下、「とど糸」)の制服もかわいいですよね。腰リボンとか(笑)。

G かわいいですよね! 身体のラインが出るのにふんわりしていて、女の子の魅力がとても伝わってくる。

『たとえとどかぬ糸だとしても』tMnR

B 『マリア様がみてる』(今野緒雪。以下、「マリみて」)とかもそうですよね。コスプレも多かったような。上品でいいですよね。

T 制服の百合が好きなのは、あこがれを読みに行くところがあって。百合=恋愛ジャンルだと思っているので、恋へのあこがれ、女子校へのあこがれ、かわいい制服へのあこがれ、女の子のいい匂いのする肌へのあこがれ……。そういう気持ちがあるので、よりうつくしさ、はかなさ、切なさを求めてしまいますね。好きってどういうことなのかなとか、女の子が二人でずっと一緒にいられるんだろうかとか。いろいろなバリエーションで、そういうあこがれを形にして読ませてほしいという気持ちがあります。

B 百合は学園もの命、というところがありますよね。終わりが見えている恋愛のはかなさ。

T どれにもただようさみしさ、みたいな。

B 現実世界だと、男同士の親友と違って、女性は環境が変わるから、一生密な関係のままの親友同士ではいられない。でも女の子にも密な時間や関係性があるよ、というのが百合なのかもしれませんね。

G 私も百合=恋愛で、百合ソーシャル(=主に女性で形成されているコミュニティ。恋愛要素はなくとも、恋愛に発展する可能性は秘めている)とはまったく別だと思っているんです。「マリみて」などは百合っぽいけれど、私の中では百合じゃないんですよね。女性アイドルや『ゆるゆり』も百合ソーシャル。絶対的に相手のことを「つがいにしたい」と思うのが百合。

『マリア様がみてる』今野緒雪

■もし、誰でも愛していいなら、誰を愛する?

――百合ブームで、ニッチだったジャンルへの注目度が高まっています。

T 少し前の百合小説だと、いずれ男性と結婚するエンドが多いんですよね。でもいま、百合が流行っているのは、LGBTへの理解の盛り上がりや、ジェンダー意識の変化も影響していると思うんです。女の子が誰でも愛していい、となったときにどうするか、というのが百合ブームの背景にあるのではと思っていて。あと10年経てば、きっともっと変わりますよね。

B 随分前ですが、百合小説は出版社の会議で通らないという話も聞いていました。当時はすごく残念に思っていました。

D 百合作品がアニメ化される今の状況は想像もしていなかった感じですか?

B ぜんぜん。びっくりしますね。

T アニメ化ってすごいことですよね。しかもけっこうコンスタントにやっているし。

D 『citrus(シトラス)』(サブロウタ)も来期アニメになりますし、『立花館To Lieあんぐる』(merryhachi)もアニメ化が発表されましたね。

『立花館To Lieあんぐる』merryhachi

T 普通のマンガでも、百合っぽい描写があるというより、もうテーマが百合という作品も増えてきて。

B 女性同士の恋愛は、以前は行き過ぎた友情として描かれていたけれど、最近は完全に恋愛関係として、いろいろな媒体に出てきますよね。ほんとうに時代が変わったなと思います。海外ドラマでも普通にレズビアンカップルが出てくるし。私は映画が好きなんですが、百合映画も増えているんですよね。イチオシはケイト・ブランシェットが驚くばかりにかっこいい『キャロル』です。まさに、もし自分が心から愛して人生をともにするのが誰でも良かったらどうする? というお話。フランス映画の『彼は秘密の女ともだち』もおすすめ。説明するとややこしいんですが、愛のひとつの答えが描かれています。

G エンタメの題材になるのは、BLカップルより、百合カップルのほうが多い印象です。女性同士のほうが綺麗で見やすいんでしょうか。

D たしかに、百合マンガを読んでいて「綺麗」と感じることは多かったですね。人を好きになる純粋な気持ちを思い出したり。女性は妄想も好きだし、人の気持ちもすぐ知りたくなるし、男性に比べて感情をうまく伝えられる人が多いので、精神性をすごく大事にしている百合というジャンルは、親しみやすい気がします。初心者としては、等身大のお仕事マンガで、同居する二人の日常が描かれている『2DK、Gペン、目覚まし時計。』(大沢やよい。以下、「2DK」)は特に入りやすかったですね。

【後編】「大学生のとき、女の子と付き合っていたんです」 百合好きお姉さまたちの座談会

構成・文=波多野公美