シュールな世界観に中毒者続出!? 「フテネコ」作者の芦沢ムネト氏インタビュー

マンガ

公開日:2017/12/24


「そんな日だってある」

「サンタへのプレゼント」

 TwitterやFacebookといったSNSが普及したことで、創作物を世に送り出すことが容易になった。そして、SNSからブレイクし、人気コンテンツになっていくという流れも、近年は当たり前の流れに。

 そんな中、Twitterから誕生した「フテネコ」というキャラクターをご存じだろうか。お笑いユニット・パップコーンの芦沢ムネト氏が生み出したフテネコ。時に人間のおかしな行動にツッコみを入れ、時にフテネコ自らおかしな行動を取る、どこか不思議で、シュールな世界観が描かれている。そんなフテネコはTwitterでじわじわと人気となり、その後書籍化、さらにミュージシャン・高橋優 の「Mr.Complex Man」のMVに使用され、注目を集めている。そして、2017年11月に新刊『チャンネルはフテネコのままで』(芦沢ムネト/KADOKAWA)が刊行。週刊ザテレビジョンで連載してきた「フテネコの週刊ニャテレビジョン」をまとめた1冊で、テレビをテーマにちょっぴりおかしな番組や人間たちと繰り広げるシュールな笑いが満載だ。どちらかというと、“ボケ”ることが多かったフテネコが、焦る、困る、ビビる、笑う、そしてツッコむという、これまでにない姿が描かれている。

 本稿では著者・芦沢ムネト氏にインタビューを行い、どのようにしてネタを生み出しているのか、フテネコの誕生秘話などを伺った。

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『チャンネルはフテネコのままで』(芦沢ムネト/KADOKAWA)

■もともとサブキャラだった!? フテネコの誕生秘話とは


――多摩美術大学卒業とのことですが、美大卒で芸人さんというのは珍しいですよね。

芦沢ムネトさん(芦沢):そうかもしれないですね。美大に入った理由はもともとアニメーションがやりたかったから。僕が高校生のときは「エヴァンゲリオン」の放送や「もののけ姫」公開などがあったので、影響を受けました。でも僕は流されちゃう人間なので、6人組のお笑いユニット・ジョビジョバさんにハマって演劇、気づけばお笑い志望に。お笑いで売れたら、映画製作や声優、音楽とか何でもできるじゃんって思ったんです(笑)。

――なるほど。様々な紆余曲折があったと。その中でフテネコはどういった経緯で誕生したんですか?

芦沢:芸人になってから、アルバイトでホテルの仕事をしていました。深夜のバイトだったのですが、暇だったんです。そこで絵を描いて、まだ今ほど盛り上がっていなかったTwitterに投稿するようになりました。コントで絵は使ってなかったんですけどね。

――そこで生まれたのがフテネコだった。

芦沢:いえ、当時は禿げたサラリーマンがヒーローみたいなことを言ったり、やったりするネタを描いていました。ある時、たまたま犬よりも描きやすくてシュールな存在のネコを添えたんです。だから、もとはサブキャラというか、本当にただのネコでした。

――そこから、サラリーマンのネタよりもネコが注目されるようになったと。

芦沢:そうですね。音楽関係の知り合いが「カワイイ」「ウチのネコに似てる」って言ってくれて。それなら、とバンドっぽい楽器を持ったネコや、「ステージ袖で腕を組んでいるスタッフが気になる」「ライブハウスの変なところに柱がある」とかバンドあるあるを描いて投稿するようになりました。

■フテネコのネタが生まれる裏側


――そこから人気に火が付いていったんですね。ちなみにフテネコのネタはぱっと思いついたものが多いですか? それともじっくり考えますか?

芦沢:割とぱっと思いついたやつの反応がいいですね。自分も出来がいいと思います。考えを巡らせて、狙って描いてしまうと妙な感じになってしまう。だから、思いついたら道端で描くこともありました。道端の隅っこで怪しい人ですよね(笑)。

――お笑いのネタとフテネコのネタを考えるときの共通点はありますか?

芦沢:リアクションの“間”ですかね。ボケが変なことを言ったら、すぐにツッコむんじゃなくて、一回自分の中で飲み込んでみる。でも飲み込めなくて、ツッコむ。こういう間があると、また趣があるんじゃないかな。それをフテネコでは、ボケから2コマ空けて、とか。

――逆にお笑いと違う部分はどこでしょう。

芦沢:お笑いは自分が演じて、ツッコんで、と必ず自分目線が入る。自分ありきなんですよね。でも、フテネコは、人にやってもらってる感覚です。それにマンガは自由ですね、キャスティングや世界観とか。本書でもありますが、キダタローさんや松本人志さんを登場させることもできます。

「1人多い」

■人間の毒っぽさを中和するフテネコ

――高橋優さんのMVでもフテネコが活躍していますね。

芦沢:人間を置き換えたいときにネコが使いやすいみたいです。人間がやると角が立っちゃうけど、人間みたいなネコだと、いい感じに人間の毒っぽさが中和されるんでしょうね。人間同士が抱き合っていると、なんか恥ずかしさがありますけど、人間とネコならほっこりみたいな。まぁ、ネコ好きの人からすれば「あれはネコじゃねぇ!」って言うかもしれないですけどね(笑)。

――なるほど、ありがとうございます! 最後に今後の活動の目標などあれば教えてください。

芦沢:いつか個展をやりたいなとは思っています。けれど、僕は何をしているのかわからない人になりたい。何かを突き詰める人はすごいと思いますけど、“何をしているのかよくわからない”を突き詰めてもすごい人になれると思うんです。だから、いい意味で「なぜあの人があそこにもいるのかな」と言われる人になりたいですね。フテネコも言うなれば“放し飼い”の状態なので、自分が想像していないところで使ってほしいです。

 ゆる~いフェイスで日常のあるあるや、時折鋭いツッコミが繰り出されるフテネコ。不思議な世界観がついクセになってしまうはずだ。


ダ・ヴィンチニュース読者に向けた芦沢ムネトさん直筆のオリジナルイラスト。

文=冴島友貴 写真=阿萬 泰明(PEACE MONKEY)