【織田裕二インタビュー】伝説の経済コミックがドラマ化『連続ドラマW 監査役 野崎修平』――舞台はバブル崩壊後、金融ビッグバンに銀行業界が直面した1990年代末

エンタメ

2018/1/10

熱い正義感と人情、冷静な判断力を持った、圧倒的なドラマヒーローがまたひとり誕生する。原作は、時代を先取りしたテーマで読者をくぎ付けにした経済コミックの傑作。撮影真っ只中のスタジオで、“野崎修平”の熱量そのままに、織田裕二さんが語ってくれた、今、この作品が世に出る意味とは――?

織田裕二さん
織田裕二
おだ・ゆうじ●1967年、神奈川県生まれ。87年、映画『湘南爆走族』でデビュー。出演作に、ドラマ『振り返れば奴がいる』「踊る大捜査線」シリーズ、『IQ246 ~華麗なる事件簿』、映画『ホワイトアウト』『県庁の星』「踊る大捜査線THE MOVIE」シリーズ、『ボクの妻と結婚してください。』など多数。http://www.yuji-oda.com/
ヘアメイク:須田理恵 スタイリング:大迫靖秀
衣装協力:ポロ ラルフ ローレン/ラルフ ローレン TEL0120-3274-20

「“仕事帰りに居酒屋で一杯、やっていこうか”みたいなときって、あるじゃないですか。僕はこれまで撮影中、酒は一滴も飲まずとも平気だったんですが、この作品に関しては、家に帰るとビールを飲んでるんです。一回リセットというか、モヤモヤを浄化せずにはいられない。喉を潤しつつ、これが明日からの闘いへの活力だ!って(笑)。サラリーマンの方たちの足が飲み屋へと向かうのはこういうことかと、しみじみ感じています。――無理してるんですよ、野崎修平は」

 そう言って織田さんは破顔する。

「これまで僕が演じてきた役は、けっこう好き勝手に上司に楯突いていたんですが、野崎修平という役はもっとリアルで、“楯を突く=とんでもないことが起きる”ということも重々わかっている。けれど、監査役となり銀行内での不正を目の当たりにした彼は、そこにある闇を公にしなければいけない、そして、この銀行を変えなければならないと、本来なら刀を抜けない雲の上にいるような相手にも闘いを挑んでいく。自分の信念に正直に。これが自分の生き方なんだと。でも、本当は苦しいと思うんです。真面目な彼が投げ続けていく直球は、演じていても、肘や肩が壊れてくるようで」

 野崎が闘う舞台は、バブル経済が崩壊し、金融ビッグバンに銀行業界が直面した1990年代末。不良債権をひた隠しにする銀行、汚職に手を染める政治家……と、日本が金と権力にまみれていた時代だ。そのなかを商店街にある小さな支店の支店長から、取締役を監査する“監査役”へ突然の辞令を受けた、ひとりの男のストーリー。原作の『監査役 野崎修平』は、1998年の連載開始直後から、ビジネスマンの間で熱狂的に受け入れられた経済コミックだ。

「オファーをいただいて、原作を読み始めたんですが、コンプライアンスという言葉すらなかったこの時代に、今を先取りした野崎のような考え方を持った人物を描いていたなんてすごいなと。続編『頭取 野崎修平』もすぐ買ってきて、夢中で読み続けていました」

 織田さんは、2014年に『連続ドラマW 株価暴落』でも、自らの信念を貫く、熱きバンカーを演じた。「痛快だけど、“すっきり”というのではなく、観た人に何かが提示されていくという題材が、やはりWOWOWドラマならでは」と語る。

「その時ひとつ、宿題があったんです。本作でも再びご一緒しているプロデューサーの青木泰憲さんが、“題材は社会派だけれど、もっとエンターテインメント性を出してもらってもいいんです”と、当時おっしゃっていた。あの時は、愚直に真っ直ぐに演じていたので、また『連続ドラマW』に出演させていただく機会があったら、ちょっと違う角度で演じてみたいという思いをずっと持っていたんです。でも、今回の台本を読んだら、“うわ! またこれは直球のスーパーマンだ”と(笑)。なので、“ちょっと地べたに落としてもいいですか?”と。ドラマには原作ほどは強くない、“怖い”という感覚を表に出してくる彼がいます」

 そんな野崎が対峙していくのは、銀行の腐敗体質や巨額の不良債権だけではない。

「彼には一人ひとりの顔が見えてしまうんです。バブルの負の遺産を被ってしまった人々や、お金を貸したことでそうした結果を図らずもつくってしまった銀行員たちの。だから彼を突き動かしているのは、単なる正義感だけじゃない。さらに背中を押してくれる“同志”と呼べるような同僚や、応援してくれる家族の想いも背負っていると思うんです」

 ドラマでは、野崎を中心にした、そんな人情のやりとりがこまやかに、時に温かに交錯する。だが、銀行が抱える闇の核にいる者たちとの闘いは熾烈だ。それは頭取演じる古谷一行、剛腕専務役の岸谷五朗をはじめとする、ベテラン俳優たちとの演技の応酬においても同じだ。

「久しぶりに、自分より年配の役者の方たちが多い撮影現場です。だから野崎同様、僕も小僧(笑)。すごくいい意味で叩かれています。頭取役の古谷さんの演技を拝見していても、凄まじい長セリフをただの一度も間違えない。その芝居を見るたび、役者としての自分も、とんでもない人を相手に闘っているんだなと。ストーリーもすごければ、役者陣もすごい。こんな作品に出会えて本当に幸せだなと感じています」

撮影が始まってからも ことあるごとに原作を読み返しています

『監査役 野崎修平』の舞台となった1990年末といえば、映画作品も含め、超ヒットシリーズとなったドラマ『踊る大捜査線』がスタートした頃。本作に横たわる、あの当時の空気を、湾岸署刑事・青島俊作として奔走していた織田さんはどう感じていたのだろう。

「金融ビッグバンが起きたあの頃、僕はまだ20代でした。それこそ青島と一緒で、上に向かって吠えていればよかった。でも、あの時代を野崎と同じ40代で迎えていたら、感じる空気はまったく違っていたでしょうね。実は、『踊る大捜査線』シリーズを作っているとき、プロデューサーの方から、“織田くん、本店に行かない?”と言われたことがあったんです。つまり柳葉敏郎さん演じる室井のいる警視庁へ異動してはどうかと。“いや、青島は所轄の人間です”とお断りしたのですが、もし“本店”に行っていたら、立場的には野崎と同じだった。『監査役~』には、あのシリーズで共演したユースケ・サンタマリアさんや甲本雅裕さんも出演なさっていて、お二人とも演じるキャラクターはまったく違うのですが、何か巡り合わせのようなものも感じますね」

 時代の空気感を引き寄せるために、当時、自身が出演していた携帯電話のCMも見直した。

「こんなにズボン、太かったんだなって(笑)。監督の意向で、衣装は20年前のファッションそのまま。ダボダボだなと思っていたのですが、着慣れてくると、男臭い、愚直な感じがよく出てくる。原作に描かれている、野崎の“ドーン”とした体勢も様になってきて面白いんです」

 撮影に入っても、原作は傍らに置き、繰り返し読んでいるという。

「演じながら読むと、より深く解釈できてくるんです。原作を手掛けた周良貨さんは元銀行マンで、ご自身が勤めていた銀行のこと、金融界で実際にあったさまざまなことをミックスして創作されたとうかがっています。だから生々しくもある。メガバンク誕生の話も、新聞などで最近、目にすることも、“あれ? これって、もしかして”と、20年前に書かれたとは思えないくらい、今にリンクしてくることが多々ある」

 それがきっと、この作品が“今”ドラマ化されることの意味なのだろう。野崎修平の真っ直ぐな精神とともに。

「このドラマを観ると、きっとメディアでは語られてこなかったさまざまな部分にも想像が及んでいくと思うんです。“こんなことが本当にあったのかもしれない”と。そしてその想像の世界をリアルに表現できるのが、ドラマだと思うんです。本来なら30話を超える連続ドラマにもなる長編作を8回に結実させた本作は、一回一回のエピソードが濃い。それを観て、笑ったり、怒ったり、スカッとしたりして、明日への活力にしていただけたらうれしいですね」

取材・文:河村道子 写真:干川 修

原作マンガ

『監査役 野崎修平』原作マンガ
原作コミックの野崎修平の姿勢が、織田さんの演技の指針となっている。
(c)周 良貨・能田 茂/集英社

『監査役 野崎修平』(新装版)全12巻
周 良貨:原作 能田 茂:漫画
集英社ヤングジャンプC 各630円(税別)
1990年代後半、バブル崩壊後の銀行を舞台に銀行改革を叫んだ伝説の傑作コミック。待望の新シリーズ『新・監査役 野崎修平』が『グランドジャンプ PREMIUM』にて連載中。地方銀行を舞台に、野崎が“アパートローン”に立ち向かう!

ドラマ放送情報

ドラマ『監査役 野崎修平』
ドラマ『監査役 野崎修平』

『連続ドラマW 監査役 野崎修平』(全8話)
1月14日(日)より、毎週日曜22:00~ WOWOWにて放送 *第1話無料放送
脚本:前川洋一 監督:権野 元 出演:織田裕二、岸谷五朗、松嶋菜々子(特別出演)、古谷一行ほか
出世コースから程遠い行員生活を送ってきた野崎のもとに下りた辞令は、なんと役員昇進である監査役への就任。だがそこで、彼は銀行内の不正を目の当たりにし、この銀行を変えると決意する。そして辿り着いた銀行の抱える“究極の闇”。そこには頭取の影が……。やがてストーリーは銀行内に留まらず、魑魅魍魎うごめく政界へも発展していく――。

ドラマ『監査役 野崎修平』

『連続ドラマW 監査役 野崎修平』放送記念!「俳優 織田裕二」特集
1月14日(日)~18日(木)放送予定
「踊る大捜査線」シリーズをはじめとする、織田裕二主演の人気映画8作品を[WOWOWシネマ]で特集! [WOWOWメンバーズオンデマンド]では『連続ドラマW 株価暴落』を配信中。