【ひとめ惚れ大賞】 「理系/文系」はあくまで一時的なカテゴリ分け『理系という生き方』最相葉月インタビュー
公開日:2018/5/8
本書は東京工業大学で行った講義がもとになっています。様々な分野の第一線で活躍している研究者の生涯を紹介する講義で、実際に研究者の方をお招きすることもありました。受講者は200名ほどいたでしょうか。金曜朝イチの講義にもかかわらず出席率もよくて、講義後に質問に来てくれる子も少なくなかったですね。ときには「まだ何をやりたいのかわからないんです」という相談も……。私にその答えを出すことはできないのですが、受験勉強ばかりやってきて、そういった問いについては考えてこなかった子も少なくないのかもしれません。その意味で、いま学生に必要とされている授業なのかもと感じました。
本書では「理系という生き方」とタイトルに掲げていますが、そもそも「理系/文系」というのは、あくまで日本の教育システム上の区分け。大学を卒業してからは、そんな分類を超えて学ぶべきことが本当にたくさんあります。その先にある学びのための一時的なカテゴリにすぎないわけですが、受験を控えた年頃の子のなかには、自分が文系か理系かと深く悩んでしまう子もいるみたいですね。私自身のことをいえば、「理系」ではないんです。高校物理で滑車の問題でつまずき、理系の道は早々にあきらめました(笑)。でも科学的思考は物事を多角的にとらえるうえで有用なので、一つの視点としてサイエンティストの視点を借りることはよくあります。
私は科学者たちのように生涯一つの分野に賭けたい欲望はありませんが、ノンフィクションライターとしては一定期間あるテーマを追い求めます。一つのテーマを追うのは数年の時間がかかります。そのあいだ自分の興味をそらさないために、追っている最中はそのテーマについてしゃべらないと決めているんです。次回作、お待ちください。(最相さん談)
|| お話を訊いた人 ||
最相葉月さん東京都生まれ。神戸市出身。1998年に出版した『絶対音感』がベストセラーに。『星新一 一〇〇一話をつくった人』は大佛次郎賞、講談社ノンフィクション賞だけでなく日本SF大賞なども受賞した。他に『ナグネ 中国朝鮮族の友と日本』などがある。
取材・文/田中 裕 写真/首藤幹夫
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