恋愛を繰り返すとわかる、最後に残る人の条件とは? 「ドクターX」内山P×元官僚・山口真由さん【後編】

恋愛・結婚

2020/3/1

【前編はこちら】上司のミスが私のせいに! パワハラも失敗も、すべて仕事で跳ね返せばいい?「ドクターX」内山聖子P×元財務官僚・山口真由さん

 昨年、『ドクターX ~外科医・大門未知子~』第6シリーズで断トツの高視聴率を獲得したテレビ朝日プロデューサーの内山聖子さん。元財務官僚でニューヨーク州弁護士でもあり、現在はタレント活動のかたわら東大の大学院で学んでいる山口真由さん。この2人の華やかなキャリアの裏には、仕事でも恋愛でも数々の失敗をバネにしてきた共通点がある。

 内山さん初のエッセイ集『私、失敗ばかりなので』を読んで勇気づけられたと言う山口さん。山口さんが「家畜」呼ばわりされていた官僚時代のエピソードを赤裸々に綴った『いいエリート、わるいエリート』を読んで爆笑したと話す内山さん。

 パワハラ、セクハラ、失敗の数々もすべて糧にしてきた仕事論の前編に続き、後編では恋愛と結婚の失敗経験から学んだことを大いに語り合ってもらった。

山口 どんなに好きな人でも、お金がないと続かないですよね。私の先輩の弁護士は、年収6万円の哲学者の男性と結婚していたんです。だけど、彼が「30万円のコートがほしい」とか言い出すようになったんですって。

内山 ヒモ体質ですね。彼女が稼いでくれることに慣れてくると、30万円とか平気で言い出す。

山口 それで、弁護士の妻が死ぬほど働いて、つらい思いをして稼いだお金で、なんで30万円のコートを買ってあげなくちゃいけないんだと思ったらしくて。哲学者の夫は、とても頭のいい人で、彼女の方が大好きだったみたいですけど、結局、離婚しちゃいました。仕事もしない、家事もしない、癒しもせずに、浪費するだけ。じゃあ、つきあってる意味ない。ヒモならいらない!って(笑)。

内山 うん、そう思う(笑)。

山口 働いている女性の場合、相手の経済力は、結婚の絶対条件じゃないはずですよね。それでも、自分よりバリバリ働いて、自分よりお金を稼いでいる人がいいっていうケースは意外と多い。

内山 私も、自分が尊敬できる人と一緒にいたいという気持ちがあるから、そうなるとどうしてもマーケットが同じになる(笑)。

山口 でも、バリバリ働いている人を好きになると、結婚しても、子どもが生まれても、彼が家事を手伝うわけではない。それで苦労している友人を何人も見ています。子どもを産んで、子育ても家事もちゃんとやりながら、仕事を続けるって本当に難しい。だから本当は、結婚相手に求める条件を変えて、市場を変えたほうがいいんですよね。そのために、尊敬ポイントをずらせないかな?って考えているんです。たとえバリバリ稼いでいなくても、「アーティストってすごいよね!」とか。

内山 アーティストって、自分に刺激を与えてくれたり何かを触発してくれる相手かもしれないけど、結婚って生活だから。それだけじゃ成り立たないところもある。やっぱり同じマーケットで尊敬できる人とつきあって、「この人の才能のためなら、少し仕事を減らして子育てや料理をがんばってもいいかな」って思えればいいですよね。そういう自分を肯定できれば。

山口 そう思ったこと、あります?

内山 今までなかったら、そういうつきあい方もいいなと(笑)。今までたくさん恋愛して、結婚して、離婚もして思うのは、自分がその人のことをどんだけ好きかっていうよりも、その人といる自分のことをどんだけ自分で好きって思えるかのほうが大事だっていうことです。この人といるときの自分はよく笑っているなとか。そういう恋愛が一番幸せだと思う。

山口 よくわかります。もともと私は、自分のコンプレックスを探しちゃうほうなんです。ここが足りない、あれもダメだって思うところを、なんとかしたいと思ってがんばってきて。そういう人って、実はエリートとされる世界には多い。でも自信がない人って、人を貶めることで、自分の優位性を確立しようとするから、そうすると家に帰ってからも、パートナーとお互いマウンティングし合うような関係になりがちで。

内山 わかるわかる。そうなりますよね。

山口 いくら相手のことが好きでも、それじゃ困る。自分のことを好きでいられないと。自分のことが好きじゃないのに、相手のことを好きになんてなれないですよね。

内山 やっぱり自分を肯定できて、相手も自分の肯定感を高めてくれるような関係がいいですよ。昔、内舘牧子さんが脚本を書いてくださったドラマをつくったときに、「こんなに飲みたい夜なのに、一緒に飲みたい相手がいない私は可哀想な人だ」っていう台詞があって、「私がまさにそうだ」と思ったんですよね。同業者の彼氏もいたけど、その人じゃない、あの人でもない、嬉しいことを分かち合える相手が誰もいない」って気づいて、サーッと青ざめてしまって。

山口 なぜ、彼氏じゃないと思ったんですか?

内山 同業者にとって私が嬉しかったことは、さっきの話のように相手のコンプレックスを刺激してしまうから。口では「よかったね」と言いながらも嫉妬するだろうなと思ったんです。

山口 素直に喜んでくれないわけですね。結局、人と深く関わると傷つくこともある。だったら、はじめからやめとこうと思う人もいるみたいですし、私もそういう気持ちはすごくよくわかります。どうすればいいんでしょうか?

内山 山口さんは意外と恋愛体質じゃないかな。

山口 そうなんです。自分でもそれに気がつきました。惚れっぽいんですよね。

内山 私の周りには恋愛体質の人が多くて、みんな綺麗でバリバリ働いていてモテそうなんだけど、自分からガンガンいくのね。好きな人には自分から、「好きになった」って言ったりして。だから山口さんもそうなのかな?って。

山口 私、自分からは行かないんです。そのかわり縁結びの神社に行って、「来い、来い、来い!」ってお祈りするほうで(笑)。

内山 逆に、自分を好きになってくれた相手に対してはハードルが低くなって、いったん受け入れると自分も好きになる?

山口 すごい! どうしてわかったんですか?

内山 自分に好意的な人に対しては、ちゃんと付き合っているように感じたから。

山口 妹から、「お姉ちゃんはハードルが低すぎる」って言われてます。「そんな思いやりのない男、こっちから断りなよ」って。けっこう個性的な人しか集まってこないので、変わった男性を収集する「博物館」なんてね(笑)。

内山 受け皿が広いんだ。

山口 それぞれ、その人なりにいいところはあるんですけどね。「彼に何をご馳走になったの?」って妹に聞かれて、「ファミチキ(ファミリーマートのチキン)」とか。「昨日は豪華だったよ」って言っても、相手が接待で会食したお店がお土産に持たせたご飯だったり。それはそれでおいしいんだけど。

内山 そこまでケチな人と付き合ったことはないかな(笑)。

山口 私、執着しちゃうんですよね。最初は相手が自分のことを好きで、付き合っているうちに、相手の熱がすーっと冷めていく。そうすると、自分の価値が下がったように感じてしまうから、下がったものは元のレベルまで取り返さなくちゃと思ってしまう。こういう執着心って、どうしたらいいんでしょう?

内山 それはどうしようもないよね。自分に対する相手の関心や執着が薄れていくときの焦る気持ちはよくはわかる。私はそういうとき、自分から別れを切り出しますね。離れていくときは離れるから、怖いし、傷つきたくなくて。

山口 私も今までの経験上、こっちが躍起になればなるほど、相手はますます冷めていくってわかってます。思い切ってスパッと切っちゃったほうがいいのかな。

内山 でも別れを切り出して、相手が戻ってくることもあるでしょう?

山口 あります。

内山 結局、自分に関心がなくなるときは、他の人に関心がいっちゃってるから。

山口 それでも相手に執着するなんて意味のないことだと、どこかで分かってるんですけどね。どこまでも執着せずにはいられないって愚かですよね。

内山 感情のまま動くのは人間ぽくっていいと思うけど。よく「恋に落ちる」っていうけど、山口さんの場合は「恋に捕まっちゃう」ような感じかも。

山口 面白いですね! その表現。

内山 でもそういうふうに恋愛を繰り返していると、自分の仕事や苦労をリスペクトしてくれる人が最終的に残るから。恋愛はしないよりたくさんしたほうがいいですよ。

山口 私もリスペクトがほしいです。

内山 女性の場合、子どもを産めるリミットがどうしてもあるけど、それが関係なければ、恋愛に年齢的な制限はないですからね。幸せになる条件に年齢制限はないから。だから、ゆっくり幸せになったほうがいいなって最近は思います。

山口 私も結婚にはこだわらなくていいかなと思ってるんですけど。内山さんは結婚されてみていかがでした?

内山 同業者の人と5年間、結婚していました。その頃どんどん私の仕事が忙しくなってきて、ご飯も作らなきゃ洗濯もしなきゃって、ちょっと頑張り過ぎてダウンしてしまって。ドラマのプロデューサーとしてエンジンがかかった時期と結婚が重なったんですよね。あのまま子どもを産んで家庭を重視していたら、全然違う人生を楽しんでいたかもしれない……と思うことはあります。

山口 人生は選択ですからね。どっちかを選ぶと、どっちかをあきらめなきゃいけない。

内山 体力とエネルギーがあれば、今は両方選ぶこともできるから。

山口 私は今、結婚制度について勉強しているんです。その中で、人生を一緒に乗り切るパートナーとは、必ずしも婚姻関係である必要はないなと思っていて。

内山 私も結婚するよりパートナーでいるほうが楽ですね。

山口 たとえば、全然ときめかなくてもいっしょにご飯を食べたり仲良くできる男女の友情って成り立つと思います? 私はまだそういう経験ないんですけど。

内山 男性も年をとるとオバさん化するから、そういう人はいっしょにいて楽ですね。面白いけど恋愛関係にはならない男友達もいいですよ。

山口 そうなんですね。私も、そういう友達がほしいです(笑)。

取材・文=樺山美夏 撮影=海山基明

<プロフィール>

内山聖子(うちやま・さとこ)
テレビ朝日総合編成局ドラマ制作部エグゼクティブP。
1965年福岡県生まれ。88年、津田塾大学卒業後、テレビ朝日入社。秘書室、制作現場を経て、95年からドラマプロフーサーに。『ガラスの仮面』(97年)、『黒革の手帖』(2004年)、『交渉人 THE NEGOTIATOR』、(08年)、『ナサケの女~国税局査察官~』(10年)、『ドクターX~外科医・大門未知子~』(12年~)など、連続ドラマ、スペシャルドラマを数多く手がける。著書に『私、失敗ばかりなので へこたれない仕事術』(新潮社)がある。

山口真由(やまぐち・まゆ)
ニューヨーク州弁護士。元財務官僚。
1983年北海道生まれ。2006年、東京大学法学部卒業後、財務官僚を経て、2015年まで大手法律事務所に勤務。16年にハーバード・ロースクールを卒業し、ニューヨーク州弁護士登録。17年より東京大学大学院博士課程 法学政治学研究科 総合法政専攻に在籍。著書に、『いいエリート、わるいエリート』、『リベラルという病』(共に新潮新書)など多数。最新刊は『思い通りに伝わるアウトプット術』(PHP研究所)。テレビ出演、執筆など幅広く活動している。