凪良ゆう作品の魅力を担当編集者と書店員に聞いた!「料理でたとえるなら『流浪の月』はステーキ、『滅びの前のシャングリラ』はユッケ」その真意は?

小説・エッセイ

公開日:2021/4/24

本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』5月号からの転載です

担当編集者

担当編集ズによる凪良さん情報アカウント
「チーム凪良ゆう」も要チェック!
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書店員

 本屋大賞2年連続ノミネートなど、目利きの書店員さんも大注目の凪良作品。現場から熱いエールが届きました!

 

丸善 丸の内本店
高頭佐和子さん
 初めて読んだ凪良ゆう作品は『流浪の月』である。きっかけは本屋大賞にノミネートされたことだ。作品を読み終わった時、たくさんの人に勧められていたにもかかわらずこの作家の小説を読まずに生きてきたことを深く反省した。そして、私に読むきっかけを作ってくれた凪良さんファンの同業者たちに深く感謝をしつつ、刊行されている小説を次々に購入したのだった。凪良さんの作品には、世の中とうまくやれなかったり、誰にも言えない苦しみや秘密を抱え、傷だらけになりながらも必死に生きる人々が登場する。読み進めていくうちに繊細な心理描写に惹き込まれ、実在しない彼らの無事や幸福を真剣に祈っていることに気がつく。そして、共感できる点が見つけ難い生き方をしているはずの彼らの痛みが、自分の中にずっとあった痛みと呼びかけ合い、何も見えなかった暗闇の中で小さな光を見つけたような気持ちになる。その瞬間を、私は奇跡のようだと思う。凪良さんの小説が必要としている人のところに届くことを、書店員として、一読者として、心から願っている。

丸善 丸の内本店
高頭さんが実行委員を務める「本屋大賞」2020年は『流浪の月』が大賞に

 

大盛堂書店
山本 亮さん
 嘲りと好意が満ちるモラルとインモラルの狭間に、綺麗だけど鋭い一筋の光を貫く類まれな作家。「凪良ゆう」とは?と問われたら、自分は迷いなくそう答える。もっと言えば、本当の意味でフィクションの力を信じて表現できる小説家と付け加える。その作品を巡る世界が多くの人々に支持される理由とは、おそらく彼女から放たれる視線と描写に、理屈では言い難い狂おしいほど嫉妬したくなる風景が詰め込まれ、時には自由自在に形を変える祝祭にも似た高揚感を、読みながら得られるからではないか。そこに読者のみならず、編集者や書店員が魅了されるのだと思う。そして、だからこそ昨年1月に当店で開催した「凪良ゆうを語る」と題したトークイベントに、垣根を越えて出版社や個人的に信頼している他店舗の書店員二人に協力してもらえたのだろう。これからも彼女の作品は我々の心を、静かな刃と照れたような愛をもって満たしていくはずだ。

大盛堂書店
大盛堂書店では凪良作品を語る書店員トークイベントも開催するなど大応援!

 

紀伊國屋書店 横浜店
川俣めぐみさん
 凪良さんの魅力はなんといっても、ずば抜けた情景描写と感情表現。『流浪の月』で「ふみいいい、ふみいいい」と泣く更紗のことがいまだに忘れられないのは、泣き叫ぶしかなかった彼女の絶望が読んでいるだけで押し寄せてきて、胸に刻みこまれてしまったから。この文章世界にもっと浸っていたいと願うから、他の作品も読まずにはいられないんです。「こうあらねばならぬ」という世間的な普通にどうしてもはまることのできない人たちの弱さを、凪良さんは掬いとって肯定してくれる。でも、ただ優しいだけじゃなくてそこには必ず、毒もある。その芯はどの作品も揺るぎないのに、いつも私たちの予想をはるかに超えた物語を提供してくれる――書店員として、推さざるをえない作家さんです。

紀伊國屋書店 横浜店
本屋大賞受賞時の写真。「受賞決定翌日から休業で、泣きたい気持ちのまま、くやしいけど、でも並べてやる!と並べました」(川俣さん)

 

宮脇書店 ゆめモール下関店
吉井めぐみさん
 わたしが今まで読んだ凪良さんの作品は、全て文体が異なっており、同じ人が書いたの?と思わず疑ってしまうほどだ。作品ごとに文体から受ける印象がここまで違うとは「凪良ゆう」という作家の力はまだまだ計り知れない。そして紡がれる言葉はどれもみずみずしく情景を思い描きやすい。まさに映像が降ってくる感覚だ。この感覚は凪良さんのどの作品でも感じることができ、今までにない読書体験を味わえる。他の作品を読む時は、文章にしがみつくように文字を追って必死に情景を想像しながら読んでいた気がする。だけど、凪良さんの作品では降ってくる。文字を追うだけで、自然と情景が脳に降り注ぐのだ。一ヶ月後に隕石が落ちてくるという設定の『滅びの前のシャングリラ』では、終末ということで身構えて読み始めたが、読み進めると登場人物たちが数々の困難を力を合わせて乗り越え、最後はみんなのキラキラと輝く笑顔を見ることができ、わたしも頑張ろう! 頑張りたい!と生きる希望をもらった。凪良作品で新しい読書体験をしたことが、さらに他の小説を楽しむ力になると思う。まだまだ新しい世界が小説にはあるのだと気付かされた。まだまだ読みたい、自分の可能性を広げたい、そう思わせる力が小説にはあるのだ!

宮脇書店 ゆめモール下関店
寄稿を頂くタイミングでパシャリと撮っていただきました。この販促物の多さよ!