アニメ『おさまけ』完結! 松岡さんが一番印象に残っているシーンは?──『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』松岡禎丞インタビュー

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公開日:2021/7/1

幼なじみが絶対に負けないラブコメ
(C)2021 二丸修一/KADOKAWA/おさまけ製作委員会

 いつの頃からだろう、「幼なじみ=負けヒロイン」の図式ができたのは……。子どもの頃から主人公の隣にいたのに、いつのまにか他のヒロインにかっさらわれる。ずっと彼を支えてきたのに、不遇な当て馬ポジションに追いやられる。そんな暗黒時代に終止符を打つべく、冷遇され続けた「幼なじみヒロイン」の復讐(リベンジ)が今、始まる! さあ、全国ウン千万の幼なじみラバーよ、立ち上がれ──!!

 4月から放送されていたTVアニメ『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』(通称『おさまけ』)が最終回を迎えた。小悪魔系幼なじみ・志田黒羽(クロ)、クールビューティーな女子高生作家・可知白草(シロ)、若手人気女優の桃坂真理愛(モモ)の3人が、主人公の末晴をめぐってぶつかり合うストーリーは予想外の結末へ!

 そんな全12話で送られた『おさまけ』を演じ終えた、主人公・丸末晴役の松岡禎丞が作品を振り返る。『おさまけ』をもう一度見たくなる、ラストインタビュー!

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島﨑さんとの友情が支えた第1話の収録

――『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』の放送が一段落しました。「恋は落ちるものじゃない、身体を蝕むものだ」というようなセリフから始まる本作でしたが、収録とオンエアを終えられてのご感想はいかがですか?

松岡:この座組で収録ができて良かったなというのが正直な感想です。このメンバーじゃなければ、毛色の違った作品になったと思います。今回のメンバーはこれまで何作品も共演してきた方々なので遠慮せずに演技でのぶつかり合いができました。監督やスタッフのみなさんも「このメンバーで良かったです」とおっしゃってくださいました。

――手ごたえを感じた作品だったんですね。

松岡:この作品は、最初にドラマCDの収録がありました。ドラマCDがお芝居の主軸にありましたが、アニメだと絵が付くので芝居が変わりますから、どうなるんだろうと第1話の収録までは不安でした。

――そういう不安な第1話の中で、松岡さんの心を支えたキャストさんはどなたでしたか。

松岡:今回の作品に登場する女性キャラクターは気が強い女の子が多いので……(笑)。(甲斐)哲彦(CV:島﨑信長)と会話をしているときは、末晴(丸末晴)も教室でも、部室でも、自然なやりとりの会話ができたと思います。

――この作品は女の子同士がバチバチとぶつかる作品でもありました。こういう関係はいかがでしたか。

松岡:この作品に登場する女の子はみんな裏で画策して暗躍していますよね……。でも、その中でクロ(志田黒羽)はかなり話しやすい印象がありました。

――第3話、末晴は絶叫とともに、クロに告白をしました。あのシーンの収録はいかがでしたか?

松岡:一世一代の決心で告白したシーンだなと思いました。でも、末晴の心の中ではほぼ王手、勝ち確定していたと思います。だから「クロ! 好きだ!」と、みんなの前で言えたと思うのですが、クロは「――ヤダ」と。王手に逆王手で返されたような気持ちでしたね。あの空気を読まない感じが、すごくよかったです。

――松岡さんからご覧になって、シロやモモの印象はいかがでしたか。

松岡:あくまで僕自身の考えですが、シロ(可知白草)は、末晴と同じように意固地になっているだけの印象がありました。演じている佐倉(綾音)さんには、シロっぽい一面があると思う時があって。不思議な圧があるというか、そういうところがおもしろいなと思っていました。(桃坂)真理愛はちょっと手に負えない感じがあります。彼女は「わかってやっている」ところが怖いんです(笑)。笑顔が怖く感じました。

――じゃあ、松岡さんとしては、一番やっかいなヒロインはモモということですね(笑)。

松岡:モモと普通に会話ができる末晴はすごいなと思いましたね。おそらく末晴も真理愛がそういう女の子だとわかったうえで会話していますから。

幼なじみが絶対に負けないラブコメ

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掛け合いをすることでたどり着けた、第11話のクライマックス

――末晴は天才子役という役どころでした。彼が再び表舞台への足がかりを得るまでの物語でもあったと思うのですが、こういう役柄にどんなおもしろさを感じていましたか?

松岡:日常生活では末晴は慌ただしくしていますが、子役時代にお母さんを亡くしているという重い過去を背負っていて。それこそ僕の想像では、ふさぎこんで家から出られなくなるくらい重い出来事だと思います。そんなトラウマを乗り越えられるのは、まわりの仲間たち、哲彦や志田家の全面的な支えがあったからだと思います。

――ひとりでは立ち直れなかったかもしれなかった?

松岡:末晴はやっぱり芯が強いというところと天才肌的なところがあるなと思います。ダンス対決の時も、ダンスをその場で踊ってしまったりできる。芯の強さと天性みたいなものが、彼のベースにはあるような気がします。

――全12話を演じ終えて、末晴を演じて印象に残っているシーンはありますか?

松岡:第11話で末晴が真理愛にお母さんとの過去を語るシーンで、「なんだかすごく悲しいけど、全く涙がでてこねえな」と思うところがありましたが、ストーリー的には泣いていて、本来は演じる立場として泣かなきゃいけないんです。ただ、収録前に練習をしている時に、どうしても泣けなかったんです。その時は気持ちの整理が上手くできなくて、不安なまま収録に挑みました。ところが、収録の時に、真理愛役の大西(沙織)さんと実際に掛け合いをして。大西さんが出したお芝居に、本当に涙があふれ出てきて、止められなくなってしまいました。あれには自分でもびっくりしました。

――大西さんのお芝居を受けたことで、芝居が成立したんですね。

松岡:本当にほっとしました。やっぱり、ひとりで練習する時と掛け合いは違うもので、芝居は生ものというのを改めて実感しました。

――すごくおもしろいですね。当然、末晴の過去や人生は、松岡さん自身が経験したことのないシチュエーションだとは思いますが、役者同士が掛け合いをすることで、感情が動くことになったと。

松岡:キャラクターの人生を僕が追体験することはできないので、キャラクターの最深部にまでたどり着くことは難しい。でも、役者同士が掛け合うことで、最深部に近づくことができる。演技することで、嘘が本当に近づくんです。役者ってそういう職業だと思います。

――役者同士の掛け合いが重要な現場だったんですね。

松岡:この『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』の現場は基本的に、役者同士から生まれたものだったらOKが出る現場だったと思います。僕はいろいろな現場でけっこう「やりすぎ」と言われることがあります。最初のテスト収録をやってそれぞれの芝居を確認して、いつもテスト収録のあとに音響監督さんから「松岡くん、ここのカットとここのカットがやりすぎている」とご指摘いたただいて、それで調整したうえで本番収録に臨んでいます。

幼なじみが絶対に負けないラブコメ

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――『おさまけ』の末晴はドギマギしたり、ヒロインに翻弄されたりしますが、そういうシーンを演じるときに、松岡さん自身はためらったり、怖かったり、恥ずかしいと感じたりすることはありますか?

松岡:それはないですね。基本、その役に入ってしまえば、何でもできます。今回のキャストはとくに共演経験がある顔ぶれだったので、自分が何をやっても上手く受け止めてくれるという信頼感がありました。現場でこっちが出したもの、向こうから出されたもののキャッチボールをしていく感じです。

 あと、収録自体もコロナ禍ということもあって、一度にスタジオに入ることができるのは最大4人という状況でした。僕が一緒に収録をするのは水瀬(いのり)さん、佐倉さん、信長で。信長があまり出番のない時は、そこに大西さんが入る感じでした。収録の合間に、僕は信長とずっと話していて、僕は信長がいないときは、誰とも会話をしていませんでした(笑)。台本をチェックして、ケータイをチェックして、そうしたら収録が始まるっていう。あれ? 今日は誰ともしゃべっていないなと帰り道で気づくという(笑)。

――(笑)

松岡:信長の存在が、僕にとってはとても大きなものだったということを、今回の『おさまけ』で気づきました。

――最後に、放送を最後までご覧になったファンに向けて、メッセージをお願いします。

松岡:『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』というタイトルだけを見ると、慌ただしい作品に思えるかもしれませんが、話が進むにつれて、ひとりひとりが抱えているものが深くて重いものだったということが解き明かされていく作品です。その抱えているものを克服していく過程が繊細に描かれているので、その部分をぜひ、もう一度見ていただけると良い作品に出会えたなという気持ちになれるかと思います。あと、ラブコメの状況を哲彦と阿部(充)先輩がいっしょに解説するところも、すごくおもしろいので、ぜひ注目してほしいです。

TVアニメ「幼なじみが絶対に負けないラブコメ」公式サイト

取材・文=志田英邦

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