舞台『フルーツバスケット』草摩由希役・北川尚弥さんインタビュー「透って本当にまっすぐで…僕がもしこの世界にいたら、多分好きになっちゃう」

映画

公開日:2022/2/6

北川尚弥さん

生身の人間が演じるリアリティを届けたい

 1996年生まれの北川さんは、原作マンガの連載が始まった頃はまだ2歳。今回、草摩由希役を演じるにあたって、初めて『フルーツバスケット』の世界に触れたという。

「時代に左右されない人間関係を描いているので、世代を問わず楽しめる作品だなと思いました。透を通じてみんなが少しずつ心を開いて、成長していって。僕が演じる由希も、それまではあまり本心を見せてこなかったんですけど、透に出会ってどんどん変わっていきます。透って本当にまっすぐで、でもドジなところもあって応援したくなるんですよね。いろいろな人の気持ちになって考えてあげられる、絵に描いたような素敵な子……って、実際絵に描いてるか(笑)。僕がもしこの世界にいたら、多分好きになっちゃうでしょうね」

 草摩家の人々は、異性に抱きつかれると十二支の物の怪に変身するという特性を持つ。由希はネズミに憑かれているが、北川さんも子年だという。

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「そうなんです。演じる役と共通点があるのは、うれしいですね。『あ、運命だな』って思いました(笑)」

 実を言えば、ほかにも由希との共通点があるとか……?

「僕、北海道の村出身で、幼稚園から中学生まで1クラスしかなかったんです。高校で札幌のほうに行ったら、入学式でたくさんの人から『連絡先を交換してくれ』って言われて。最初の1週間だけでしたけど、由希みたいなモテ期を味わいました(笑)」

 取材を行った時点では稽古はまだ始まっていなかったが、透、ライバルの夾、従兄の紫呉役のキャストとはすでに顔を合わせたそう。ひとつ屋根の下で暮らす4人がそれぞれの衣装を着て、ビジュアル撮影を行ったという。

「スタジオも、古民家みたいで草摩家のイメージそのまま。夾役の(橋本)祥平君とは何度か共演経験がありますけど、安里(勇哉/紫呉役)さん、吉田(綾乃クリスティー/透役)さんとは今回が初めてなので緊張しちゃいそうだなと思っていたんです。でも、安里さんと祥平君の掛け合いが面白くて、『フルーツバスケット』の世界観そのままじゃんって。短い時間でしたけど、僕らの日常が垣間見えて『役作りしなくても、もう草摩家が出来上がってる!』と思いました」

 マンガやアニメとは違う、舞台ならではの見どころにも期待が高まる。

「まだどうなるかわかりませんが、舞台でしか表現できないリアリティ、ナマの部分をお届けできたらうれしいです。例えば夾との喧嘩は、おそらく殺陣になるんじゃないかな。動物に変身するシーンは、多分声での芝居になると思うので、その表現も力を入れたいですね。気になるのは、動物から人間に戻る時。裸じゃないですか(笑)。どうやって表現するのか楽しみです」

 ヒット作の舞台化とあって、最初はプレッシャーも感じたという北川さん。だが、今は初日を迎えるのが楽しみだと話す。

「プレッシャーばかり抱えていても良いものができないので、まずは自分が楽しまなきゃと思って。舞台化を発表した時、SNSの反応を見て『期待している方がこんなに多いんだ』と思いましたし、だからこそ『マンガもアニメも素敵だけど、生身の人間が演じる舞台もすごく良かった』と言ってもらいたくて。自分を奮い立たせればおのずと作品も良くなるし、全員がひとつの方向を目指せばより原作の世界観に近づけると思うんです。お客さんも巻き込んで、みんなで良い舞台を作りたいですね」

 今なぜ『フルーツバスケット』が受けているのか。最後にそんな質問をぶつけてみると……?

「多分、皆さん心が疲れてるんですよ(笑)。『フルーツバスケット』を読めば癒やされるし、心がちょっと浄化される。人間関係のもどかしさも、今の世の中に当てはまる部分があるのかなって。他人への興味が薄くなっている時代だからこそ、この作品で描かれる関係性に心を動かされる方が多いんじゃないかと思います」

(取材・文=野本由起 写真=川口宗道 ヘアメイク=平 笑美子)

北川尚弥
きたがわ・なおや●1996年、北海道生まれ。2013年、「第26回 ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」ファイナリストに選出。15年、ミュージカル『「テニスの王子様」3rdシーズン青学vs山吹』で初舞台を踏む。舞台『刀剣乱舞 天伝 蒼空の兵-大坂冬の陣-』、ミュージカル『スタミュ』などに出演。

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登場人物

草摩由希

草摩由希(北川尚弥)
眉目秀麗、文武両道で、ファンクラブまで存在する人気者。親戚の紫呉と暮らしていたが、同級生の透、親族の草摩夾と同居することに。異性に抱きつかれると子の物の怪に変身してしまう。

舞台 『フルーツバスケット』

舞台 『フルーツバスケット』
原作:高屋奈月『フルーツバスケット』(白泉社花とゆめC)
脚本・総合演出:毛利亘宏(少年社中) 演出:長谷川太郎(少年社中) 出演:吉田綾乃クリスティー、北川尚弥、橋本祥平、安里勇哉ほか 上演期間:2022年3月4日(金)~13日(日) 会場:日本橋三井ホール
詳細はhttps://fruba-stage.jp/
(c)高屋奈月・白泉社/舞台「フルーツバスケット」製作委員会2022