サイコパスは隣にいるかもしれない…エグいけどクセになるサイコパス系マンガ5選

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更新日:2018/9/3

「サイコ」(psycho)とは、「精神の」、「心理的な」という意味がある言葉だ。最近よく耳にする「サイコパス」とは、反社会的で他人への同情心がなく、強い支配欲を持つ特異な精神の持ち主である一方、社交的で人としての魅力があり、高い知能の自信家という顔も持つ。華麗なほどに冷酷で残忍、じりじりと読む者の心理を追いつめ、その心に闇を覆いかぶせるようなエグい「サイコ」感がほとばしるホラーやサスペンス漫画を5作品紹介しよう。

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■愛しい気持ちが殺意に変わるとき――

『今夜は月が綺麗ですが、とりあえず死ね』(要マジュロ:原作、榊原宗々:漫画/講談社)

『今夜は月が綺麗ですが、とりあえず死ね』(要マジュロ:原作、榊原宗々:漫画/講談社)は、「愛情」が「殺意」に入れ替わるストーリー。クラスの地味キャラ、神城卓(かみしろ・たく)は、学校きってのモテ美少女、花園魅香(はなぞの・みか)と幼なじみで気兼ねのない仲。卓はずっと秘めてきた魅香への恋心を打ち明けようと決心するが、その前夜に起こった“ある事件”のせいで「好き」の気持ちが「殺したい」に置き換わるようになってしまった。告白しようとすると、魅香殺害のシーンが頭に浮かぶ。愛しい、殺したい、好きだ、殺したくない…。卓の心の葛藤が、美麗な絵で残酷に描かれる。

■壮絶ないじめの果てに家族を焼き殺された主人公を救うものは?

『ミスミソウ』(押切蓮介/双葉社)

『ミスミソウ』(押切蓮介/双葉社)は、まもなく卒業式を迎える過疎の町の中学校が舞台。東京から雪深い田舎に引っ越してきた野咲春花(のざき・はるか)を待っていたのは10人にも満たないクラスメイトの壮絶ないじめと、それを見て見ぬふりの教師。たったひとりの味方、相場晄(あいば・みつる)に支えられて、家族に心配かけまいと春花は学校に通い続ける。卒業まであとわずか…そんな矢先、クラスメイトが春花の家に放火する。最愛の家族を火事で亡くした春花は復讐に目覚め、放火に関与したひとりひとりを追いつめていく。愛情と狂気がないまぜになり、静かに事を成していく姿に背筋が凍る。

■蛙男の私刑、あなたはどこまで直視できるか?

『ミュージアム』(巴 亮介/講談社)

『ミュージアム』(巴 亮介/講談社)は、刑事という仕事に没頭するあまりに家庭を顧みず、妻と子に出ていかれてしまった沢村久志と、カエルのかぶりものをかぶった猟奇的なシリアルキラー「悪魔の蛙男」の戦いの記録だ。私刑に興じる蛙男。「針千本のーますの刑」では被害者の口いっぱいに画鋲を詰め込み絶命させ、「母の愛を知りましょうの刑」では引きこもりのニートの体から、出生体重分の体の肉を生きながらに切り取るという、残忍な方法で殺した。殺害現場はまるで蛙男の作品を陳列する“ミュージアム”。そして遂に、沢村の妻と子どももこの「蛙男」の標的となってしまう。沢村は、最愛の家族を守れるのか…。本作は、小栗旬、妻夫木聡出演で映画化もされた。読んでから観るか、観てから読むかはあなた次第だ。

■愛にあふれた甘い生活を、邪魔する者は許さない

『ハッピーシュガーライフ』(鍵空とみやき/スクウェア・エニックス)

『ハッピーシュガーライフ』(鍵空とみやき/スクウェア・エニックス)は、タイトル通り、甘い恋の話だが、それだけでは終わらない。女子高生の松坂さとうは、バイト先の友人飛騨しょうこと、男遊びに明け暮れていた。しかしある日「心に決めた人ができた」と、しょうこに告げる。さとうが出逢った「心に決めた人」とは、神戸しお。全てが謎に包まれた幼い女の子だ。キラキラしていてお菓子より甘くていい匂い…さとうは、しおとの愛の共同生活を守るためなら、なんでもする覚悟だ。人を脅すことも、監禁することも、そして、人を殺めることさえもいとわない。そう、全ては、しおとの愛のためだから。本作は現在(2018年7月期)テレビアニメ化され放映中だ。

■グロくないのに、怖い…これが真のサイコパスか

『眠れる森のカロン』(茂木清香/講談社)

『眠れる森のカロン』(茂木清香/講談社)は、絵を一見すると子ども用の絵本かと見まがうばかりの幻想的な妖精の世界を思わせる。くるりとした丸い目を持つ愛らしい登場人物たち…しかし、何かが違うとやがて気づくだろう。冒頭の「この門をくぐるもの、一切の希望を捨てよ!」という言葉や、「王子様」と皆に呼ばれる少年の体に付着した謎の“黒いもの”…そして、カロンの正体とは誰なのか? 塩気が甘味を強調するように、メルヘンチックな絵は、時として絶望的なほどダークな内容を引き立て、不安を、恐怖を、煽り立てる。幻想的な世界観の中で、読者は夢見るように、どん底に落とされていく…。

 現代は心(psycho)の時代といえるのではないだろうか。サイコパスは、「25人にひとり」とか、企業の高い地位についている人の「5人にひとり」存在するなどといわれている。私たちは、決して無関係ではいられないのだ。もしかしたら、あなたの隣に、あなたの大切な人の近くに、あなた自身の中に…そう、誰も気づかないうちに暗闇の中で、影のように様子をうかがっているかもしれないのだから。

文=水玉璃