明るい未来と世界が広がる! 笑いと発見がいっぱいのオモシロ絵本
公開日:2013/9/6
“折れて、上がって”のエネルギーがこの本の源
「“これは、いよいよすごいものができるなぁ!”と思った」
それは絵札を描いたテッポー・デジャイン。さんからイラストの最終版が上がってきた時のこと。色、大きさ、フォルム、強調する箇所……言葉の意図から離れ過ぎないように、デザイナーを通じて間接的に要望を伝えていた。描き直しの作業は何回にも及んだという。
「締切ギリギリで最後の修正依頼がきた時、“ムリかも”って思ったらしいんです。ちょうどその時、僕がツイッターで“今、日本一のカルタをつくっている最中です”って、つぶやいて、それを彼が偶然にも見て奮起したそうなんですよ。火事場の馬鹿力が出たと」
こんなにコンパクトなのに、持ち重りがするように感じるのは、そんな切磋琢磨と、この言葉が生まれてきた過程─躓いては自分を勇気づけてきた倉本さんの、子どもの頃からの過程から連なる、つくり手の“折れて、上がって”のパワーがみなぎっているからだろう。
「摩擦熱のようなものがこもっているんだと思います。そして普遍的な、時間に耐えるものって、そういう圧縮されたエネルギーが必要なんだと思う。それはなんかできたような気がするんです。長く残っていくような本になったら、うれしいなぁ」
そのエネルギーは読む人にもチャージされ、確実に何かを変えていく。この本が売れている理由は、きっとそこにある。
「今、これまでの価値観やルールというものだけに頼っていける時代ではなくなってきているという感覚をみんなが持ち始めていると思うんです。不測の事態が起こっても、自分の発想力でくぐり抜けていかなければあかんっていう。そういうものをみんなが必要としているタイミングに、この本はフィットしたのかもしれませんね」
明るい日と書いて“明日”。その言葉をタイトルに冠したことが指し示すように、この本が連れていってくれるところは強くて、明るい。“こんな時代に生まれて可哀そう”という、世に蔓延する失敬な空気を吹き飛ばすように。そして、この“明日”という文字に隠れていた、あるスゴイことも発見されている! それはまさに、この本を象徴するような大発見だ。
「明日なんて言葉、ずっと見ているでしょう。でも、こんな当たり前の言葉の中にも気付きはある。発見はいつも傍にあるんです。この本もそばに置いといてほしいですね。冷蔵庫の中に入れといてもらってもいい(笑)。喉が渇いたとき、自分が乾いたとき、役に立てばうれしいです」
取材・文=河村道子 写真=松田優子