サメフライ大反響! ガチャ界のヒットメーカーに聞く、企画作りの参考書

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公開日:2013/10/25

ホホジロサメフライ

写真は「ホホジロサメフライ」。ほかに「ノコギリザメフライ」「ジンベイザメフライ」などがある

 タカラトミーアーツと“謎のクリエーティブ集団”がコラボした“新ガチャブランド”「パンダの穴」が熱い注目を集めている。サメに衣をつけてカラッと揚げた第1弾「サメフライ」は、発売されるやいなや「なぜ揚げたw」「可愛すぎ! 欲しい!!」「ジョーズに揚がりました!」などとネット上で大反響に。第2弾として、動物たちの寝姿がかわいい「Zoo Zoo Zoo もうしら寝」が11月上旬に発売予定だ。

 ほか、アニメ、コミックのキャラクターものをはじめ、LINEのサービス開始後にキャラクターをいち早く商品化した「LINE FRIENDS」シリーズ、さわやかな佐川急便のおにいさんをグッズ化した「佐川男子 シチュ萌えグッズ」など、時代の空気を反映したガチャに定評があるタカラトミーアーツ。一方で、「食品サンプルシリーズ あこがれの朝食編」「ハリー・ポッター 杖コレクション」など、思わずニヤけるひねったラインナップまで、手掛けるジャンルは幅広い。

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 「タカラトミーアーツでは現在、毎月25個近くの新作ガチャを発表しています。ひとつのガチャを企画してから世に出すまでに、かかる期間は約5ヵ月。時代に沿ったスピード感を重視し、とがった企画にもどんどんチャレンジできる風土があるんですよ」

 そう教えてくれたのは、同社のガチャ・キャンディ事業部に所属する佐藤涼子さん。自身も毎月5企画以上を商品化するアイデアマラソン状態にあるといい、これまでに企画したLINEガチャは累計約500万個、『家庭教師ヒットマンREBORN!』グッズは累計約2000万個など、脅威の売り上げ記録を叩きだしてきた。もちろん「パンダの穴」にも携わる、今をときめくヒットメーカーだ。

 「ヒットの芽を探すために欠かせないのが雑誌です。ファッション誌は男女問わず、コミック誌は男性系を中心に、ゲームやアプリ、グルメ、旅行などあらゆる情報誌を大量に読むようにしていますね。変なキャラや、とがったアイデアは男性誌から拾うことも多いですよ」

 グルメや旅行の一見関係のない情報も、表現方法を練る際には役立つこともあるという。たとえば、新撰組系の乙女ゲーム『薄桜鬼』の商品化の際は、各キャラクターたちを京都の和菓子で表現。リアルでかわいい和菓子モチーフが女子たちに大ウケし、ヒットアイテムになったという。

 一方、企画案を考える上で欠かせないのが、少女マンガや少年マンガなどを図鑑形式で紹介する「子どもの昭和史」シリーズ(平凡社)、『決定版! 80年代おもちゃ大全』(宝島社)、『ふぁみ中 青春ファミコン劇場’80』(綜合図書)、『超クソゲーrevolutions』(多根清史、箭本進一、阿部広樹/太田出版)などの“総集編”系ムックだ。

 「これらは“売れたもの”をまとめているので、これから売れるものを作る上で勉強になる点が多いのです。近年はガチャの世界でも、70年代、80年代ブームが来ていましたが、そろそろ頭打ちが見えてきた感も……。今後は90年代が来る予感がするので、その研究にも役立てていますね」

 企画に行き詰まった際に、しばしば読み返す本もある。ドアにまつわる奇妙な5つの短編を収録した『ドアの向こうの秘密』(三田村信行:著、古味正康:イラスト/偕成社)や、寺村輝夫氏の不朽の名作「ぼくは王さま」シリーズ(寺村輝夫:著、和田誠:イラスト/理論社 )など、子ども時代に読んだ“児童書”だ。

 「今にして思えば、これらの本は何が飛び出すかわからない感じがガチャの世界とよく似ていました。企画出しに迷ったら、自分が昔、純粋に面白いと思ったものを思い出して、なぜそれが好きだったか、何が楽しかったのかを分析すると、新たな突破口やヒントが得られるかもしれません」

 ちなみに、この“王さま”好きが嵩じた結果、ガチャの商品化をなしとげた佐藤さん。ストラップからメモ帳、スタンプなど、全8種のグッズからなる「ぼくは王さまコレクション」として、10月末の発売を予定している。

 時代の空気をとらえつつ、自由な挑戦を続けるタカラトミーアーツのガチャ作り。最新トレンドの情報収集も、過去トレンドの研究も、子ども時代の記憶も、アイデアを練る上では等しく財産になる。ほかの人とはひと味ちがう企画を出したい方は、一度この発想法を取り入れてみては。

文=矢口あやは