『悠木まどかは神かもしれない』はまどマギと似ているか?

マンガ

公開日:2014/1/4

 最近、「新手の炎上マーケティングか!?」とまで言われ、ネットを騒がせている作品がある。それが、新潮文庫の『悠木まどかは神かもしれない』(竹内雄紀)だ。なぜこんなことになっているのかというと、このタイトルを見た多くの人が『魔法少女まどか☆マギカ』を連想してしまったから。『まどマギ』の主人公は鹿目まどかという女子中学生なのだが、その声優を務めているのが悠木碧なのだ。ネットでは「平野ハルヒ」とか「野沢悟空」「加藤サザエ」なんて名前は使えないだろうと言う人もいるが、「悟空」や「サザエ」に比べればまあ「まどか」はキラキラネームでもない一般的な名前だし、それだけで『まどマギ』のパクリだと叩くのはかなり無理があるだろう。

しかし、ここに「神かもしれない」というフレーズがついてしまったら話は変わってくる。『まどマギ』ファンならご存知だろうが、『まどマギ』ヒロインのまどかは、最終的に神に相当する存在になるのだ。これだけの要素がそろっていたら、「著者も担当編集者もその上司もまどマギを知らなかったんです」と言われても、「信じられない!」という熱狂的『まどマギ』ファンが出てくるのも仕方ないのかもしれない。しかし、実際のところ、肝心なストーリーのほうも似ているのだろうか?

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 まず、『魔法少女まどか☆マギカ』の方はタイトルにも“魔法少女”とあるように、それをモチーフにしたダークファンタジーになっている。まどかたちは願いを叶えた代償として魔法少女になり、敵となる魔女を倒していくのだ。そんな壮大な世界観とは裏腹に、『悠木まどかは神かもしれない』の舞台となるのは、国立中学を狙う小学生のための名門進学塾。そして、主人公の小田切やまどかを中心に、塾に通う5年生たちが日々ライバルと競い合い、友達と帰りにチーズバーガーを食べたり恋をしながら、日常で起こる小さな事件を解決したりする。

 また、ヒロインであるまどかの見た目や性格もまったく違う。『まどマギ』のまどかは、おとなしくて気弱そうなタイプで、ピンクのリボンとピンクのツインテールが特徴的。それに加えて劣等感も強く、思わず守ってあげたくなるような女の子だ。最後に決めなきゃいけないところはビシッと決められるが、そこに行くまでは優柔不断な面も多々見せる。

一方、悠木まどかは周りに振り回されたりせず、女子のグループにも所属しない。塾の子たちに独自のあだ名をつけて呼んだりするような、マイペースでちょっと変わった女の子。だけど、いじめられているとか、クラスの子たちに嫌われているわけでもない。むしろ、男子と女子が話すことが少ない塾において、唯一男女かまわず話しかける存在なのだ。そのうえ頭もよく、アヒル口やえくぼが魅力的なので、毒舌キャラにも関わらずクラスの男子はほぼ全員が彼女のファンであり、女子からも一目置かれている。

ちなみに、タイトルにあるように小田切が悠木まどかを「神かもしれない」と思ったのは、彼女が受験に関係ない知識を教えたあとに「ちなみに今の話は中学受験には絶対に出ないから、忘れちゃってもいいわよ」と言った慈悲深さに感動したかららしい。

 少なくとも、中身から『まどマギ』を連想するのは難しそうだ。強いてあげるなら、『まどマギ』のまどかには劣るかもしれないが、悠木まどかも最後に将来を左右するような大きな決断をする。その決断力やクラスメイトを思いやる心優しさには、通じるものがあるかもしれない。

文=小里樹