IT起業家・家入一真×教育起業家・森田正康、都知事選後に緊急対談!

政治

公開日:2014/2/28

 先日の都知事選で、ひとりの若手候補者に注目が集まった。その名は、家入一真氏。最近出版された『ぜんぜん気にしない技術』(家入一真・森田正康/クロスメディア・パブリッシング)でも、常識にとらわれずに突き進む哲学が展開されている。「人目を気にしすぎない」「SNSの炎上は長くは続かない」「一度全員から嫌われれば大切な人が見えてくる」など、独特の哲学は今回の選挙戦でどう生きたのか。都知事選後に共著者の森田正康氏と、の緊急対談が実現。本音や裏話を赤裸々に、語ってくれている。

■選挙中に大雪になっても気にしない
森田:おつかれさまでした、立派でしたよ。
家入:いやいや、でも、おもろかったっすね。
森田:雪に見舞われたりとか、大変だったでしょう?
家入:いやホントにねえ「俺持ってるわー」なんて言ってたけど、考えたら候補者全員が、そうだなと(笑)。
森田:個人としては、失うことしかない選挙じゃん、正直言うとさ(笑)。0.5秒くらいで当確が出たけど、あの瞬間ってどういう空気感だったの?
家入:僕は最後の最後まで教えてもらってなかったんです。出口調査では、ドクター中松さんに負けていたらしいの。それでスタッフたちは、僕にどう言えばいいかなと、悩んでいたっぽい。
森田:でも、8万8936票も獲得できた。

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■口下手でも気にせずに、本気で語る
家入:NHKの取材スタッフが、2~3日に1回ぐらい撮りに来たんですよ。それが最後の収録のときに「家入さん、喋りが上手くなりましたね」って言われて。メディアにも見守られながら、成長していった。
森田:進歩したよね。
家入:途中までは「誰に投票してもいいから選挙に行こうぜ」って言ってたんだけど、最後の3日間くらいのときに「やっぱり、みんな僕に賭けるべきだ!」と言うようになった。口下手であることに変わりはないんだけど、最後に渋谷ハチ公口で、本気で思っていることを伝えたら、泣いてる子もいた。
森田:伝わった感はあったよ、渋谷で見ていたけど。

■人目を気にせずに「わからない」と正直に言う
家入:『朝まで生テレビ!』では、主要4候補とドクター中松さんと僕が田原総一朗さんと一対一で話をしました。討論会があったとしても「どう思うんですか?」って質問されてもわからないことは「わかんない」って言えば、無敵で最高だろうと思ってた。
森田:むしろ、そこで教わることも大事だよね。でも、それって、討論にならないけど(笑)。そうしたテクニックが満載の『ぜんぜん気にしない技術』は、「どんな境遇だろうと気にしない」とか、「前向きに捉えて生きて行く」とか、誰にでもできるスキルだよね。家入さんもホントに正直だと思うよ。うらやましい。ウソをつく必要がないんだよ。
家入:そうですね…。

■家入さんは「だらしない」だけで誠実な人
家入:ネットでは相変わらず「家入は胡散臭い人間だ」と言われているんだよね。
森田:確かに間違いだよね。胡散臭くはないよね。そもそも家入さんは、だらしないだけで、誠実な人なの。そこは軸が違う話だから、だらしがないから誠実じゃないって、一緒にロジック化してもしょうがないんだよね。今回の対談現場にだって、20分しか遅れてなくて、今までのミーティングの中で一番早い(笑)。時間を守れるようになった!
家入:35歳にして(笑)!
森田:立候補して、非常に人間的に成長が見受けられたよ。家入さんのためにも、とても良かったと思います、教育者目線で考えると。
家入:時間を守ると、自分も気持ちいいということを知りました(笑)。

■人目を気にせずに宣言すればいい
森田:家入さんは「やるって言ったけど、できませんでした」っていうのはあるかもしれないけど、それはウソじゃないからさ。でも、今後どうすんの? そろそろビジネスの話とかしようよ。
家入:“壮大お花畑モード”になってるから(笑)。1回でも出馬すると、もう政治家として見る人たちもいるんですよね。
森田:チンチン、とか言えないもんね。
家入:あえて言っていくしかないんじゃないですか。で、そこに失望する人もいれば「あ、この人は立候補したけどチンチンとかも言う人なんだ」って、好感をもたれるかもしれないから。

■過去の自分を気にせずに歩んでいく
森田:過去の自分って、培ってきたものだから、崩すのが怖い。立候補して、政治家という新しい見方をされることになって、今までよりも公人としてやりづらくなったことはあると思うけど、過去の自分のラベルを崩していくことって、努力や根性が必要で、それをいかにして気軽にできるかどうかって大事ですよね。
家入:過去を崩すといえば、僕が出馬してる間に、ゴーストライターの騒ぎがあったらしいですね。
森田:あの人の場合は「聴こえるようになった」とか、絶対に言っちゃいけなかったのよ。本当か嘘かはわからないけど。だって結局今も手話を介していろいろとやってるわけだから、意味不明なんだよなあ。
家入:一貫して「聴こえません」としておけばよかったのにねえ。
森田:あの人、NHKの特番で“苦悩して壁に頭を叩き付ける”みたいな映像があったけど、これで本当に嘘だったら、身近にいた人たちとかって本当にがっかりするだろうね。たぶん、みんなが家入さんを支援したのは「パフォーマンスじゃなくて、本気なんだ」って思えたからだと思うな。あ、今度さ、耳栓して、作曲家に曲を依頼してみてよ。家入さんだったら、どのように依頼するのかな?
家入:んー、「ジュピターみたいなの」って(笑)。

■ネットは宣伝ツールではなく、コミュニケーションツールだ
家入:まあ、今後の選挙で「最初にネットを使い切ったのは俺だよ」って、言えたらいいねと。
森田:ほかの候補者が参考にしてくれたらいいよね。
家入:政治家って、ツイッターなどのSNSを、キャンペーン的にしか使わないですよ。小泉さんも、選挙が終わった瞬間に止めちゃったし。
森田:これからは政治家が一般的に活用して、市民とタッチする場所になればすごくいい。例えば、孫さんはツイッターを始めるまで、末端の消費者の声が届きづらかった。それが、ツイッターを使いはじめると「店に行ったらこんなひどい扱いを受けました」という報告が届いて、孫さんは直接現場に連絡する訳よ。すべてを飛び越して、それぐらいのスピード感になっている。現場は最悪よ、もう何もかもが隠蔽できなくなるから。だけど、そういうツールがあって、コミュニケーションできなかったところと交流できるようになったのは、すごく大事。
家入:何より面白いのが「ネット選挙解禁」とか「若手で政治を変えて行く」とか真剣にやってる人たちからすると、僕は土足で踏み上がっているらしく、彼らから指摘を受けたりもする。
森田:そうだったら土足で荒らしに来た人に票取られちゃうくらいの選挙なんだから、しょうがないよね。

■声が一番遠くまで届くマイクで“本気”を伝えていきたい
森田:今も引き続き継続的に「政治家」として仕掛けてるよね。ちなみに朝日新聞に掲載された、主要候補者が並んでいる写真で、みんなはマイクを持って演説しているのに、家入さんだけiPhoneを持って喋っている写真ってよかったよ。僕もツイートしたけど、家入さんの持っているマイクが一番遠くに声が届くマイクだったね。
家入:わざわざ記者さんが、僕がマイクを持っているシーンもあったのに、あえてiPhoneを持っている写真を使ってくれて。
森田:本気度や誠実さって、きちんと伝わるんだね。

 選挙中の緊張感から解き放たれた家入氏は、森田氏の軽やかなトークとともに、本音を語ってくれた。両者に共通していたのは、世間体はあまり気にしなくとも、誠実な心を大切にしていること。初立候補ながら8万8936票を獲得したことは、そうした想いに共感した人が多かったという証しかもしれない。次なる一歩も、期待を上回る展開になりそうな予感がする。

家入一真/35歳、IT関連会社役員。レンタルサーバーを運営する株式会社paperboy&co.を創業し、当時史上最年少でJASDAQ上場に成功。その後も、IT系だけでなくカフェ店の経営、起業家集団livertyを立ち上げるなど、さまざまな活動に取り組んでいる。2014年の東京都知事選に初立候補し、得票数5位という結果に。
Twitter:@hbkr

森田正康/37歳、株式会社ヒトメディア代表。UC BERKELEY、ハーバード大学、ケンブリッジ大学、コロンビア大学、東京大学に在籍し、学歴フェチと呼ばれる。教育系のサービスを得意とし、新しいサービスを世に出し続けている。近著は『エリートを超える 凡人のための人生戦略ノート』(かんき出版)など。
Twitter:@masayasumorita

構成・文=八幡啓司