ビートたけしの毒舌に学ぶこと 「うわべだけの正論よりよっぽどマシ」

芸能

2014/3/12

 口が悪いのに、好かれる人がいる。その典型が、ビートたけしではないだろうか。その著書『ヒンシュクの達人』(小学館)で、たけしは次のように語っている。

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みんな「たけしの毒舌はとんでもない」って言うけど、正直な話、これでも昔に比べりゃ、オイラも抑えてるほうだぜ。
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その多くはハタから見りゃ、大顰蹙モノの暴言ばかりに違いない。だけど、うわべだけのキレイゴトで取り繕った正論なんかに比べりゃ、よっぽどマシだよ。
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 確かに、その通り。

 『オレたちひょうきん族』『スーパージョッキー』『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』『痛快なりゆき番組 風雲! たけし城』と、出演する番組がことごとく大ヒット。お笑い芸人として全盛期を迎えていた30代のたけしは、今よりずっとキレッキレッで、天才ならではの近づき難さすら漂っていた。

 特にフライデー襲撃事件後、警察に釈放されたあとの記者会見は、いまだ伝説になっている。集まったマスコミ陣を射抜くような鋭い目。意識的なのか、無意識なのか、猛毒のような発言を連発した。そうやって、事件や事故を起こしては時々テレビから消えるのだけど、その度に不死鳥のように復活を果たし、どんどん進化していく。彼は名実ともに人気者なのだ。

 それだけ日本には、タブーを口にしてくれるスターが少なすぎるのかもしれない。その風潮は、変わるどころか、年々悪化しつつある。ネット炎上を過剰に気にして、自主規制が連呼される時代。だからこそ、ビートたけしの存在は、貴重なのかも。

 にしても、なぜ彼は、わざわざ“ヒンシュク”を買いたがるのだろう?

 例えば、かつての自分のように、後輩芸人が事件を起こしてバッシングを受けていると、必ずと言ってよいほど、その発言でスポーツ紙を賑わす。ぺニオク詐欺で問題となったタレントと共演すれば「ペニーオークションが来てる…」、女性スキャンダルで週刊誌に叩かれた芸人がいれば「女孕ませて金とられたヤツだ!」と真っ向から口を切る。周囲が「それは言わない約束でしょ」と、慌てふためいても、たけしは愉快そうに笑いながら、再び同じことを繰り返すのだ。そういえば、モナが1回目の不倫騒動でバッシングを受けた際も、移籍したのはたけしの事務所だったし、復帰したのもたけしの番組だった。なぜ、たけしはこうも問題を起こしたタレントに絡みたがるのだろう。

 その理由について、たけしは次のように述べている。

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「それは言わない約束」ってことで、勝手にタブーにしちゃうほうが、かえって本人にはつらいんじゃないだろうか。
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オイラがやったみたいに、一度「笑い」にして晒し者になったほうが楽なんじゃないのか。
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 なるほど、たけしの“ヒンシュク”は、同じ境遇を幾度も潜り抜けてきた人間ならではの、優しさの裏返しなのだ。

 にしても、この著書の中のたけしは、今のテレビの数倍キレッキレ。心なしか伸び伸びしているように思えるのは気のせいだろうか。少しばかり抜粋してみよう。

○「売れなくなったらエロ」の橋下市長は「落ち目のアイドル」と同じ
○民主党のマニフェストは「食中毒店のレバ刺しと同じ」
○オセロ中島ほか「芸能界はフェイスブック芸人」ばっかりだ
○矢口真里は「間男コンサルタント」で復帰せよ
○(大島渚監督が亡くなった時によく流された作家の野坂昭如さんとの殴り合いのシーンについて)2人のポコポコ殴り合う音は、木魚の代わりじゃないんだぞっ。

 天下のビートたけしでさえ、“生涯風紀委員会”みたいな視聴者に包囲された今のテレビじゃ、本領を発揮できないのかも。久々のたけし節を聞けて、ああ、スッキリ。キレイで無機質で予定調和のモノだらけに囲まれていたら、辟易するもの。いい塩梅に、毒がまわるくらいがちょうどいい。

文=山葵夕子