佐藤健×渡部篤郎が親子刑事として共演! ドラマ『ビター・ブラッド 最悪で最強の親子刑事。』スタート

テレビ

公開日:2014/4/15

 話題の刑事ドラマ「ビター・ブラッド 最悪で最強の親子刑事。」が4月15日(火)、フジテレビ系で21時よりスタートする。

 予告編では佐藤健が爆弾でふっとばされていたり、拳銃を撃っていたりとハードな場面があるかと思えば、渡部篤郎が仕立屋でちょい悪オヤジ風にポーズを決めるコミカルな場面もありと、一癖も二癖もありそうな感じのドラマだ。ちょっと中身が気になるでしょう? そこで今回は雫井脩介の原作小説『ビター・ブラッド』(幻冬舎)をご紹介。ドラマ放映前に親子デカの物語をほんの少し予習しておこう。

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 都内でも有数の繁華街を管内に持つS署E分署に配属された新人刑事、佐原夏輝はマンションから男が転落して死んでいるとの通報を受け、現場に駆けつける。事故なのか殺人なのか、はっきりしないにも関わらず何故か本庁捜査一課が捜査に乗り出すことが決定していた。死んだ男はS署管内で名うての情報屋であり、一課が追っていた容疑者と何らかの関係があると目されていたのだ。夏輝ら所轄の人間は一課の刑事と組んで捜査に当たることになる。夏輝の相棒はベテラン刑事の島尾明村。それを知った夏輝は憂鬱な気分になる。島尾は少年時代に別れた実の父親であったからだ。息子と並んで仕事するのに嬉々とした表情の島尾と、自分を捨てた父への嫌悪でいっぱいの夏輝。ちぐはぐな親子の捜査が始まる。

 本書は“陽”と“陰”の部分が見事に分かれて組み込まれた小説である。

 “陽”の部分に当たるのは、夏輝と島尾親子の捜査珍道中だ。島尾はオーダーメイドのスーツに身を包み、首にはスカーフ、白髪交じりの髪はオールバッグと、おおよそ刑事らしからぬ出で立ちの超個性派刑事で、付いたあだ名は「ジェントル」。「スーツは刑事の命」が座右の銘で、上着をバッ、バッと衣擦れの激しい音が響くほどの「ジャケットプレイ」を披露する。聞き込みで手帳を見せる時も上着を派手にめくりながら「警、察、です!」と気張った声で名乗る。こんな一歩間違えれば警察官どころか不審者にしか見えないおじさん、たとえ別れた父親でなくても傍にいたくないよね。だが破天荒な島尾の行動にも立派な捜査理論があることに夏輝は気付き、次第に学んでいくのである。若者の成長を描くお仕事小説に、温かくて笑える家族小説を加味したところがこの小説に親しみやすさをもたらしているのだ。ちなみに島尾以外の刑事のキャラクターも立っていて、体臭のきつい刑事に付けられたニックネームは「スカンク」。いや、「太陽にほえろ!」でもこんな酷い名前なかったよ!

 “陰”の部分を成すのは、ある意外な人物が殺害されることによって噴出する警察内部の不和だ。その人物の死によって、夏輝は先輩である捜査一課の面々、そして父である島尾にも疑惑の目を向けなければいけない事態に巻き込まれてしまう。そこで夏輝が目のあたりにするのは、一見完璧にみえる大人たちが抱える弱みや苦渋である。自分が選んだ職業が持つ業を主人公が知る、苦い青春小説としても味わえる作品だ。

 先に書いた予告編を見る限りでは、ドラマは佐藤×渡部のアクションやギャグの掛け合いを目玉に据えているようだ。原作の“陽”の部分を前面に出しているわけですね。愉快な親子コンビの活躍がどう映像で再現されるのかは注目だ。とりあえずは渡部篤朗が「ジャケットプレイ」をするときは耳をすましてみよう。バッ、バッ、って衣擦れの音はちゃんと聞こえるかな。

文=若林踏