本屋大賞『告白』の湊かなえがドラマ原作に初挑戦

更新日:2011/10/25

 本屋大賞受賞作『告白』で一躍人気を集めた湊かなえの最新作『境遇』(双葉社)は、今冬放送予定の、朝日放送創立60周年記念ドラマの原作書き下ろし作品。

 「お話をいただいたのは本当にデビュー間もなくのことだったので、よくぞこんな新人にお声がけをして下さったなと、まずはプレッシャーが大変でした(笑)。また“ドラマの原作として書く”ということも初めての経験だったので、そこもかなり苦心しました。
これまではあえて人物や風景の描写をせず、読み手の想像に委ねるという書き方をしてきたのですが、今回は色や形など語り手の目に映っているものもきちんと描写することを強く意識しました。それによって読者の頭のなかにダイレクトに映像が浮かべばいいなあ――と。」

 さらに湊さんには、絵本作家の陽子と新聞記者の晴美というヒロイン2人の“36歳”という年齢に強いこだわりがあるという。

 「私を含めてこの年代の女性は、私は勝手に“祭りのあと”世代と呼んでいるんですが――ちょっと時代に置き去りにされてきた世代なんですね。少し上の世代の人たちはバブルなど華やかな時代を経験していて、そのなかで仕事も恋もバリバリできる女性として脚光を浴びてきた。また、少し下の世代もアラサーとか呼ばれたり、それなりに注目されてきた。だけど、その間に挟まれた私たち、30代半ば~後半の世代は、追いかけても追いかけても、結局、主人公になれないできた。だから、この作品では、そういう世代の女性も頑張っているし、こんなにキラキラしているんだよ、ということを一つ描きたかったんですね」

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 同年代を生きた湊さんだからこそ書き得た「これまで主人公になれなかった世代」の2人のヒロイン。それは同年代の女性だけでなく、今、多くの読者に新鮮な発見や共感をもたらすものにちがいない。

(ダ・ヴィンチ11月号 今月のブックマークより)