叱責・更迭・左遷から逃げるな! “失敗”を歓迎すれば人生は豊かになる

仕事術

公開日:2015/4/21

 失敗は誰でも怖い。しかし世間には失敗を避ける方法はあっても、上手に失敗する情報はない。「失敗から学べ」「失敗してこそ一人前」とは言うものの、なかには「取り返し」のつかない事態も起こりうる。その結果、叱責、降格、左遷という事態を招くことも。命まで取られることはないとはいえプライドは大きく傷つく。

 そう、“プライド”。その誇り高き心こそあなたの成長を妨げているのだ。

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 ダスキンのフランチャイズ加盟店として急成長した株式会社武蔵野。その社長の小山昇氏こそ、失敗の達人。この度失敗術を一冊の本にまとめた。『小山昇の失敗は蜜の味 デキる社長の失敗術』(日経BP社)が刊行された。

非モテ男が気づいた失敗術

 目的のためには、恥もプライドもかなぐり捨てなければ、成長しない。たとえそれが“モテる”ことだとしても。若き日の小山氏は、それはもう女性に見向きもされなかったという。けれど後輩はいつもモテモテだった。小山氏は、あの手この手で女性にアタックしたが、連敗。その胸中は「あいつと自分はそもそも種類が違う」だった。

 だが30歳を目前にして、追い込まれた小山氏は思いきって後輩にモテるコツを聞いてみることに。すると懇切丁寧に教えてくれ、それまで勝率0%だったのが20%にあがったという。

 この経験から小山氏は“正しい失敗”の仕方に気づいたのだ。

 正しい失敗とは
・成功者をマネる
・未経験の体験をする
・今までにない失敗をする
・成功するコツに気づく

 特に大切なのは、“今までにない失敗”をすることだ。自己流にこだわる限りは同じ失敗ばかり繰り返す。新しいメソッドを知り、失敗のバージョンを上げることが成長のコツという。

 そのため小山氏の会社では、あえて失敗を仕組む。一番わかりやすいのは人事異動。未経験の仕事にローテーションさせ、経験のない失敗をさせる。

 この方法に、専門職の人は「冗談じゃない」と思うかもしれない。けれどよく考えてみて欲しい。時代とともに変化は訪れる。今の時代、現状維持はリスクだ。一方、急成長している企業を思い浮かべて欲しい。担当者はめまぐるしく代わり、商品やサービスが常に変化しているはずだ。

 小山氏いわく、「お客様を含めて、社員やサービスを『5年で25%以上』を入れ替えている企業は間違いなく業績を伸ばしている」と。

 個人にもこれは当てはまる。いつも愚痴をいう人は、住むところ・仕事・人間関係……変化を嫌っていないだろうか。5年で25%ということは、毎年5%でいい、少しずつ自分なりに変化し、そして新しい失敗を積めばいいのだ。

20%でも成功すれば超優秀!

 新たな取り組みのすべてが成功するわけではない。小山氏も「新規事業のうち20%でも成功するなら超優秀」と称する。武蔵野でもさまざまな新規サービスを立ち上げては、億単位の失敗をしてきたという。でもその紆余曲折が、卓越した企業に送られる「日本経営品質賞」を二度の受賞へ導いた。

 この春、新入社員を迎えOJT(on-the-job training 職場での実務を通じて行う従業員の教育訓練)を仰せつかった人もいるだろう。先輩はついつい先回りして、新人に指示を出しがちだ。けれどそこはグッとがまん。あえて失敗をさせてやる。そして失敗にコッソリと備えることが正しい先輩の流儀なのだ。もしも自分になびかない後輩なら、どうどうと「カネで買え」とも書いてある。おごって“サシ”で話し、打ち解けるからこそ、安心して失敗できる。

 失敗した社員は必ず成長する。そして後輩の成長は、自分の評価にも返ってくるだろう。

 武蔵野では、更迭や賞与の半額は日常茶飯事。けれど小山氏が素晴らしいのは、そのフォローの仕方。更迭になった社員の奥さんへ先回りして、ハガキを送る。更迭の理由、そして「リカバリーできたら必ず元のポジションへ戻れる。だからご主人を支えて欲しい」と書き添える。

 今どきこんな人情上司は珍しいだろう。けれど理想の上司を持たなくても落胆することはない。小山氏が心の上司となって、失敗を支えてくれるだろう。そんな熱〜い思いがこの本には、ぎゅうぎゅうと詰まっているのだから。

文=武藤徉子

⇒株式会社武蔵野