新人作家デビューの新しい手段として定着―「小説投稿サイト」の2015年を総括

文芸・カルチャー

2015/12/31

 2000年代初頭のケータイ小説ブームと前後して、アマチュア作家がインターネット上で 自由に作品を公開できる「小説投稿サイト」がいくつも誕生した。小説投稿サイトで出版社の目にとまり、紙の書籍やアニメ・映像になるヒット作品が次々と生まれることに。今や小説投稿サイトは、原稿の持ち込みや新人賞応募に代わる、新人作家デビューの手段として定着しつつある。

 2015年は『君の膵臓をたべたい』が書籍化され、新人として異例の20万部を超えるヒットに。また『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』『オーバーロード』などがアニメ化、『通学シリーズ』が実写映画化と、投稿サイト発の作品が存在感を増す年となった。

小説投稿サイトが活性化している要因として、作品の連載中に読者から作家へダイレクトに感想が届き、それに対して作家がその後の展開を変えるなど、コミュニケーションによって作品が出来上がっていくオンラインならではの双方向性が上げられる。出版業界側にも、まだ世に出ていない新しい才能を発掘できる場であるとともに、すでに人気がある作家の作品を書籍化することで、ある程度の部数見込みができ、リスクが少ないというメリットも。

例えば、エブリスタが運営する小説投稿コミュニティ「E★エブリスタ」でも、2010年のサービス開始以降の書籍化点数は、2015年11月に累計で500点を突破。年間の書籍化数も右肩上がりで増加しており、『王様ゲーム』や『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』といったヒット作も生み出している。大手出版社と共催の投稿イベントも多数実施。これまで30社をこえる出版社から、200人以上のクリエイターがプロデビューを果たしている。

<主な小説投稿サイト>
「E★エブリスタ」
代表作:『王様ゲーム』『奴隷区』『通学シリーズ』『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』
作品総数200万点以上。小説以外にも漫画、エッセイなども投稿可能。出版社との共催による投稿イベントも多数開催した。作家・石田衣良による小説スクールなどプロ作家育成も行っている。

「小説家になろう」
代表作:『ログ・ホライズン』『魔法科高校の劣等生』『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』『オーバーロード』『君の膵臓をたべたい』
ファンタジー系のライトノベル作品が圧倒的に多く「なろう系」と呼ばれるジャンルを確立。ベストセラーとなった恋愛小説『君の膵臓を食べたい』もこのサイトから生まれた。

「魔法のiらんど」
代表作:『恋空』『携帯彼氏』『赤い糸』
ケータイ小説というジャンルを確立した『恋空』や『赤い糸』を生み出した恋愛系の作品が中心のサイト。

「野いちご」
代表作:『天使がくれたもの』『クリアネス』『櫻の園』
ケータイ小説の書籍化を手掛けてきたスターツ出版が2007年に開始。作家デビューの登竜門として、毎日新聞社との共催により、「日本ケータイ小説大賞」も毎年開催している。

「アルファポリス」
代表作:『Separation』『レイン』『虹色ほたる』『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』
オリジナルのWebコンテンツ(小説・漫画・ブログ等)を登録・投稿し、紹介することができるポータルサイト「アルファポリス」上での人気作品を、自社で編集・出版することにメインに事業を展開。

<2015年新規参入の主なサイト>
comicoノベル
ノベラボ
STORIE(ストリエ)
カクヨム
taskey

<小説投稿サイト発の主なヒット作>
・2009年『王様ゲーム』(シリーズ累計620万部以上)
・2010年『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』(シリーズ累計310万部以上)
・2011年『ログ・ホライズン』(シリーズ累計100万部以上)
・2012年『奴隷区 僕と23人の奴隷』(シリーズ累計100万部以上)
・2013年『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』(シリーズ累計100万部以上)
・2014年『居酒屋ぼったくり』(10万部以上)
・2015年『君の膵臓をたべたい』(20万部以上)

<小説投稿サイト2015年の動き>
・2月 Taskey「taskey」開設。
・4月 NHN comico「comicoノベル」開設。『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』TVアニメ化。
・6月 ディスカヴァー・トゥエンティワン「ノベラボ」開設。インデックス「STORIE(ストリエ)」開設。『君の膵臓をたべたい』書籍化 20万部を超えるヒットに。
・7月 『オーバーロード』TVアニメ化。『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』TVアニメ化。
・10月 『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』TVアニメ化。Web発の小説に特化した新レーベル「カドカワBOOKS」創刊。
・11月 KADOKAWA×はてな「カクヨム」発表。『通学シリーズ』2作品実写映画化。