石井ゆかりが「星占い」をするように物語を紐解いていく「児童文学エッセイ」

文芸・カルチャー

2016/6/10

子どもの自分に会う魔法 大人になってから読む児童文学』(MOE BOOKS 白泉社)
撮影/志田三穂子

皆さん、“筋トレ”してますか? 筋肉トレーニングじゃないですよ。ネットで読める、石井ゆかりさんの星占いサイトです。情感あふれる文章で大人気の石井さん、サイトはもちろんご著書も毎日のTwitterでのつぶやきも大人気ですが、このたびお気に入りの児童書を紹介するエッセイ『子どもの自分に会う魔法 大人になってから読む児童文学』(白泉社)が発売されました。

石井さんの占いにはじめて触れたとき、「え……? 占いってこんなに物語みたいなの……?」と衝撃を受けたのを覚えています。石井さんはいつも、今の自分の状態に耳を澄ませ、感覚を研ぎ、どうするのが最善なのかを考える方法を教えてくれる。そういう意味で確かに石井さんの占いは、自分の毎日を動かすための筋トレに近いのかもしれないなあ、なんて思ったりしました。本作は、物語の萌芽をたくさん抱えた石井さんの、ある意味原点のような一冊です。

人見知りする子どものように、読んだことのない本が怖くて、同じ作品を繰り返し何度も読みかえしたという石井さん。だからこそ、一冊の作品につまった言葉のきらめきや豊かな感性をすみずみまで拾いあげ、繊細に読み解くことができるのでしょう。

あおくんときいろちゃん
(レオ・レオーニ:作、藤田圭雄:訳/至光社)

たとえば、『あおくんときいろちゃん』。〈ないて ないて なきました ふたりは ぜんぶ なみだになってしまいました〉という文章を抜き出して、石井さんはこんなことを書いています。

悲しみのときは涙になり、喜びのときは相手の色にもなれば、花のようにも、光にもなる。私たちは様々な喜怒哀楽を生きながら、いろんなものに「なって」いるのかもしれません。

としょかんライオン
(ミシェル・ヌードセン:作、ケビン・ホークス:絵、福本友美子:訳/岩崎書店)

あるいは『としょかんライオン』の〈おおごえで ほえてはいけない。ただし、ちゃんとしたわけがあるときは べつ〉という一節にはこう。

「ルール」が何のためにあるのか。私たちはどんなやり方で普段、無意識に人を排除しているのか。心の中の「ルール」を越えたところに、「新しいルール」が生まれる場合があります。

クマのプーさん
(A.A.ミルン:作、E.H.シェパード:絵 石井桃子:訳/岩波書店)

誰もが知っている『クマのプーさん』にはこんな言葉を寄せています。

物差しを当てると、もののゆがみがわかります。自分の心の「ねじまがり」具合が、プーという物差しによって、ありありと浮かび上がるような気がするのです。

知っているはずの物語が、石井さんの導きによって気づかなかった意味をもってよみがえる。あるいは知らなかった物語が、いまの自分にとって何より必要なものなのだと知らされる。石井さんがふりそそいでくれる魔法に触れて、ぜひとも物語世界の美しさにいざなわれてみてください。

文=立花もも

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