映画『君の名は。』大ヒット、記録更新中! 新海誠最新作ノベライズ『小説 君の名は。』

文芸・カルチャー

2016/7/7

昨夏8月26日(金)全国東宝系にて劇場公開された新海誠監督の最新アニメーション映画『君の名は。』。公開前に刊行された『小説 君の名は。』(角川文庫)も映画のヒットとともに発行部数を伸ばしている。

多くのファンが待望した新海誠最新作の主人公は、立花瀧と宮水三葉というふたりの少年少女。東京に暮らしている瀧は最新の建築物を見て回ることが趣味で、アルバイト先の先輩女性に密かに憧れている男子高校生。一方の三葉は、山深い田舎町に祖母と妹と3人で暮らす女子高校生。宮水神社の巫女として “お役目”を仕方なく務めながら、いつか東京に出ることを夢見ている。

文字通り住む世界がまったく異なる瀧と三葉は奇妙な夢を見るようになる。夢の中で瀧は山奥の町に住む見知らぬ女子高校生になっていて、三葉もまた夢の中で憧れの東京に住む男子高校生になっている。やがて、ふたりは“その夢”を見ている間、現実の世界で本当に自分たちの心と身体が入れ替わっていることに気がつく。

「体は見ない・触らない」「先輩と馴れ馴れしくするな」など、ルールを決めてお互いの生活に支障が出ないよう努めるが、お互いの“本当のキャラ”とは違う行動の数々に周囲の人間も本人たちも振り回されっぱなし。困ったような、でもどこか楽しい日々が続くが……。

新海誠作品ではいつも“喪失”が重要なテーマになってきた。本作でも“男女入れ替わり”モノのお約束を入れ込んだ軽快なラブコメディである前半から一転、後半は瀧と三葉の決定的な“距離”が描かれる。これまでの新海誠作品では、そうした距離と喪失を儚く美しく描き、エモーショナルな物語に仕上げてきた。しかし、本作で強く胸を打つのは、そんな喪失の哀切ではなく、それに抗い、お互いを信じ、絶対に取り戻してやると必死にもがく少年と少女の姿だ。これまでの新海誠作品に重なるモチーフを数多く感じさせつつ、本作は熱くポジティブな感動をもたらすものになっている。

巻末に付された「あとがき」によれば小説版は映画版と相互補完的なものになっているという。最新鋭のビジュアル表現が見られるであろう映画版の公開を待ちつつ、小説ならではの瑞々しいモノローグで深く描かれる魅力的なキャラクター、文章が喚起するイマジネーションを楽しみたい。

文=橋富政彦

今月のおすすめ書籍を紹介中!