『君の名は。』ロングヒット!新海誠の魅力はそれだけじゃない! 秒速5センチメートル、言の葉の庭… 胸を切なくさせる感動の4作品

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公開日:2016/12/30

 世界中で大ヒットを記録している、新海誠監督の映画「君の名は。」。日本国内の興行収入は210億円を超えており、歴代邦画ランキングで2位を記録するほどの爆発的な人気を獲得している。圧倒的な映像美と、儚くも美しい物語。誰もが魅了された新海誠ワールドをさらに感じさせてくれるのが、彼が執筆してきた本の数々だ。

新海誠の原点! 商業デビュー作『ほしのこえ』

 新海誠の出発点である商業デビュー作が「ほしのこえ」。2000年から制作を開始し、およそ2年をかけてほぼ一人の力で作り上げたという、知る人ぞ知る名作だ。25分のショートフィルムだが、この当時から新海ワールド全開。「第1回新世紀東京国際アニメフェア21」公募部門優秀賞をはじめ、多数の賞を受賞した。

 同書は、このデビュー作をノベライズしたもの。中学生のノボルとミカコは仲の良いクラスメイトだったが、3年生の夏、ミカコが国連宇宙軍選抜メンバーに抜擢された。宇宙と地球に離ればなれになった二人をつなぐのは、携帯電話のメールのみ。しかし、ミカコの乗る宇宙船が地球を離れるにつれ、メールが届くのにかかる時間も長くなっていく。時間と距離に隔てられた、二人の互いを思う気持ちはやがて…。繊細で壮大な遠距離恋愛の物語になっている。

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 切ないけれども、心の描写を丁寧に描いたこの作品に感動する人が続出。「すごく二人の気持ちが切なくて、ずっと胸が締め付けられてた…」「切ないけど、素晴らしい! これに限ります」という声が上がっており、アニメファンも「劇中で語られなかったところが補完されていて読みごたえがあった!」「原作も見て正解だった! これは最高だ」と大満足のようだ。

二つの彷徨う恋心の行方は…『秒速5センチメートル』

 「桜の花びらの落ちるスピードだよ。秒速5センチメートル」。いつも大切なことを教えてくれた明里、彼女を守ろうとした貴樹。同書は、2人の恋心の彷徨を描いた劇場アニメーション「秒速5センチメートル」を新海自ら小説化したもの。アメリカでも翻訳版『5 Centimeters per Second』として発売されており、人気を博している作品だ。

 1990年代後半から現代までの日本を描いている同作品。小学生の時に出会った明里と貴樹は距離を縮めていくが、中学で離ればなれになってしまう。そして、それぞれの恋心と魂は彷徨し続ける…。1人の少年を軸に描かれる、3つの連作短編が収録されており、劇中では語られなかった彼らの心象風景が、小説では繊細に描かれている。

 淡い恋心と、胸に突き刺さる言葉の数々に「胸がイタい… でもめちゃくちゃ共感してしまう!」「描写も丁寧で、初恋のもどかしさ、戸惑い… それがすごく胸に染みてきます」「背景描写が細かくて、想像が掻き立てられてくる」と、ついつい読者たちものめり込んで見てしまう。

雨と緑に彩られたひと夏の青春物語『言の葉の庭』

 また会うかもね。もしかしたら。雨が降ったら―。雨の朝、静かな庭で2人は出会った。靴職人を志す高校生の孝雄と、謎めいた年上の女性・雪野。ふたりは約束もしないまま、雨の日だけ秘密の逢瀬を重ね、心を通わせるようになっていた。

 6月の梅雨の空のように物憂げに揺れ動く心。迷いながらも前に進もうとする2人は、どこへ足を踏み出すのか。圧倒的な支持を受けた劇場アニメーション「言の葉の庭」を、新海みずから小説化。映像の中でもまるで小説を読むような味わいとテーマ性を持った繊細なドラマを描いていたが、アニメでは描かれなかった人物やエピソードを多数織り込み、小説版ならではの新たなる作品世界を作り上げている。

 映画は「第21回シュトゥットガルト国際アニメーション映画祭」で最優秀賞を獲得するなど、かなりの高評価を受けていた。そのため「映画の世界観を小説が壊してしまうのでは…?」とファンも心配のようだったが、読んでみたらその不安も一掃されたようす。「小説を読んでもっと作品が好きになった」「映画の何倍も濃い内容になっていて、大満足!」という声がファンからも上がっている。

“さよなら”を言うための旅『星を追う子ども』

 2011年に公開された孤独な少女の冒険の旅を描いた「星を追う子ども」。新海作品の魅力である圧倒的なスケールと耳に残る音楽、そして、心を打つ冒険譚に魅了される人が続出した。

 父の形見の鉱石ラジオから聴こえてきた不思議な唄を忘れられない少女アスナ。そんなアスナの前に、ある日アガルタという遠い地から来た少年シュンが現れる。二人は心を通わせるが、シュンは突然アスナの前から姿を消してしまう。「もう一度あの人に会いたい」と願うアスナの前に、シュンと瓜二つの少年シンと、妻との再会を願いアガルタを探し求める教師モリサキが現れる。そして開かれるアガルタへの扉。3人はそれぞれの想いを胸に、伝説の地へ旅に出る―。それは、“さよなら”を言うための旅…。

 今までの作品とは一味違ったファンタジー要素が入った作風だが、その中から人間の細やかな心理描写も読み取れるなど、新海の世界観は変わることはない。「ファンタジーっぽいけど、この世界観がまたいい!」「丁寧に映画で語られなかった部分が語られててよかった!」と好評のようだ。

 映像と原作、両方を見ればまた解釈が変わってきて面白いだろう。「『君の名は。』流行に乗り遅れた…」「まだ新海作品に触れていない!」という人も、これを機に新海作品をチェックしてみてはいかがだろうか?