「まず3年働け」は、今なお正論と言えるのか

ビジネス

2017/2/14


 

 2月のこの時期になると、各企業では4月に入社してくる新卒の新入社員たちの受け入れ準備を徐々に始める頃ではないかと思います。

 4月初旬の頃の新入社員は、服装や振る舞いや表情などから彼らが新人だということを明らかに特定できてしまうことも多いですが、そんな異質感満載の新入社員たちも、2か月もすればそうだと気づかれることはかなり少なくなります。それほど急速になじんでいく人間の順応性というのはすごいものだと毎年思っていますが、その一方では「七五三現象」などと言われるように、3年以内で3割の大卒新入社員が、残念ながら職場になじめずに退職していってしまいます。

「まずは3年働け」という考え方

 こんな新卒入社の若者たちに対して、「まずはその会社で3年働け」というようなことが良く言われます。「3年くらいやってみないと仕事の向き不向きはわからない」「3年くらいの下積みがなければ仕事の基礎は身につかない」「職場環境の良しあしは3年くらい経験しないとわからない」などと言い、早期離職にはメリットがないから、「せめて3年くらいは」などと言います。話の仕方はいろいろでしょうが、新入社員に対してこんなアドバイスをする社会人の先輩は多いのではないでしょうか。

 ただ、この考え方に対して、テレビでも著名な予備校講師の林修先生は、あるインタビュー記事で異論を唱えていました。ご自身は新卒で日本長期信用銀行に入り、わずか5か月で辞めてしまったご経験があるそうです。理由は、入行してすぐに「この銀行はいつか潰れる」と感じたからだそうです。予備校でも、明らかに講師には向いていないと思う人は今まで何人もいて、そういう人は確実にいなくなっていったそうで、少なくとも予備校の場合は、早めに切り替えたほうが後々のためになることが多いと思われるそうです。

 林先生のお考えでは、単に仕事が嫌とか、上司とそりが合わないなどといった理由で、あっさり辞めてしまうのは考えものだが、自分が辞めたいと思う理由とじっくり向き合い、その理由が会社の将来性がないとか、仕事でトップ争いには加われない、二番手としてやっていく自信もないなどということであれば、早めの決断をしても良いのではないかということでした。

3年にこだわらない方がいい2パターン

 実は私自身も、毎年の新入社員に対して仕事に向き合う考え方をアドバイスする機会がある中で、最近同じようなことを考え始めています。実際、この5年ほどの間では、「まずは3年」とは言い切れないケースが増えてきているように感じています。

 その会社に対しては失礼な話かもしれませんが、新入社員が実際に担当している仕事内容や、将来経験できそうな業務内容、先輩たちの顔ぶれ、将来の異動の可能性、職場の風土や会社の事業の将来性などを総合的に見た時、「この会社は早めに見切った方が良い」と思われる事例がずいぶん増えています。私が特に最近出会うことが多い、「まず3年」とは言い切れないパターンが二つあります。

 一つ目は、主に就職氷河期をきっかけに、あまり長期的な視点を持たないままで新卒採用を始めたような、新人の育成能力がない会社です。少人数の採用ということもありますが、ごく基礎的な社会人マナーすら教育しないような会社もあります。もちろんこういう会社でも、自分の心がけ次第で成長することはできるでしょうが、かなり効率が悪い可能性があります。

 そしてもう一つは、旧態依然とした仕事の進め方をする生産性の低い会社です。これは俗に言われるブラック企業というようなレベルのものではなく、例えば、明らかに生産性が低いと思われる仕事の仕方が全社に浸透していて、その環境に疑いを持たない社員たちが一丸となって頑張っているような会社です。初歩的なIT投資もされておらず、いまだに手書き書類が蔓延していたりしますが、この会社で身につくのは、本来の業務スキルとは離れた社内独特の事務処理手順など、あまり時間をかける価値がない内容の仕事です。

 こういう会社が生産性向上の取り組みを急激に進める可能性がないとは言えませんが、もうとっくにそんな取り組みを完了している会社があったとすれば、その会社で働いた方が業界一般で必要なスキルを学ぶ機会は多いはずです。ここで挙げた二つの例は、業界や企業規模などの一般的な属性で一概に言えるものでなく、実際に入社して働いてみなければわからなかっただろうと思えるようなものです。

 これからの時代は「まず3年働け」ではなく、「3年以内で安易に辞めてはいけない。でも身にならないならば見切る勇気も必要だ」というのが、一番妥当な言い方なのかもしれません。

 

文=citrus ユニティ・サポート小笠原隆夫