「寿司」だけに「味のある」ヒーローが登場!「すしヒーロー」のユニークな姿や必殺技に注目!!

文芸・カルチャー

2017/2/17

 最近、大人でも楽しめる「絵本」の話題をよく耳にする。ヨシタケシンスケ氏の『このあとどうしちゃおう』あたりはTVでもよく取り上げられていたので、ご存じの方もいるかもしれない。まあ同じ本を読むのも芸がない気がするので、何か面白そうな絵本はないかと探していたときに見つけたのが『負けるな! すしヒーロー! ダイナシーの巻』(令丈ヒロ子:作、やぎたみこ:絵/講談社)である。

 サイトでいろいろ調べてみると、どうやら「寿司」のパワーを生かした技で、敵と戦うヒーローであるらしい。イマイチ想像がつかず、それに興味を惹かれたので、絵本というか児童文学など数十年ぶりではあるが、手にとってみることに。

 簡単なあらすじは、主人公の「関口こうき」は小学四年生で、寿司屋「光寿司」の跡取り息子。彼の住む町では、奇妙な事件が起こっていた。みんなが美味しいものを食べようとすると「ダイナシー」が現れ、食べ物をだいなしにしてしまうのだ。主人公の店のお寿司もだいなしにされ、なんとかしたいと思っていると、発明好きである彼の祖父が現れ、彼に「すしパワードスーツ」を与える。そのスーツに身を包んだこうきは、寿司のパワーを自在に操る「すしヒーロー」に変身。多彩な技を駆使して「ダイナシー」と戦うのだ。

 本書の挿絵は、絵本作家・やぎたみこ氏が担当。だが実は、私はこの「すしヒーロー」の姿をあまりカッコイイとは思えなかった。頭部には海老を思わせる模様が入り、ボディは全身が赤を基調としている。作者のコメントには『アベンジャーズ』などが好きだと書いてあったので、そういうものを想像していたのだが、全然違った。

 しかし、である。本を読み進めるうちに、どうやらこれでよかったのだろうという気になった。なぜかといえば「すしヒーロー」の使う技の数々が、その理由である。「エビぞり大ジャンプ」「足止めイクラアタック」のほか、作者がお気に入りだという「かんぴょうタイトロープ」や「特上すしゴージャスゴールドタイフーン」などなど。お世辞にもカッコイイとはいえないネーミングだが、先述のスーツにはピッタリとハマっているのだ。まあ確かに一般のヒーロー作品でも、カッコ悪いと思わせるデザインのキャラは存在する。だからこの場合も「寿司」だけに、「味のある」デザインというべきなのかもしれない。

 もちろんこの作品の「味」は、奇抜なデザインや技名だけではない。敵である「ダイナシー」が、なぜ美味しいものをだいなしにするのか、ちゃんとした理由も語られている。児童文学であるため、それほど込み入った事情が描かれるワケではないが、それを知れば「ダイナシー」を見る目も変わってくることだろう。

 私が幼い頃に読んだ絵本で印象に残っているものといえば『くいしんぼうのあおむしくん』や『だいふくもち』など、今から考えるとものすごく含みのある内容の作品が多かった気がする。それに比べれば本作は、割とシンプルに楽しめる内容なのではないか。とはいえ「家族と食事をする喜び」など、伝えたいテーマはキチンと盛り込まれている。情操教育は大切であり、どのような本を子供に読ませるか親の選択眼が問われるが、あまり説教くさいものばかりだと、私のように偏屈な人間が育ってしまうかもしれない。本書のように楽しい作品も、たくさん読ませてあげてほしいものである。

文=木谷誠