シャンデリアより「同級生の出るAV」の方が4倍ゴージャス!? 15年前のベストセラー『新しい単位』とは?

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公開日:2017/3/22

 スクーターに乗るお坊さんに感じる違和感を「1St(スクーター)」とすると、「童顔なのに巨乳」の違和感は250St(スクーター)。「しんにょう」を綺麗に書きこなす器用さを「1Sn(しんにょう)」とすると、渡辺満里奈の生きかたの器用さは180Sn(しんにょう)。

……と、いきなり書かれても「え?」と思うだろうが、一方で何だかミョーに納得できる部分もあるのではないだろうか。

 これは、3月5日に文庫版が発売となった『新しい単位』(世界単位認定協会/ポプラ社)に収録されたネタだ。

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 同書は、重さに「何グラム」、長さに「何センチ」と単位があるように、「だらしなさ」「ゴージャスさ」などにも勝手に単位を付ける……というコンセプトで作られた「ネタ本」かと思いきや、「今日のドラマ、792Mr(マロン)だったね」とか「チャックが開いているのに気づかなくて、13mc(ムギチャ)だったよ」というように「実用書」として、実生活の場で使ってほしいとの「世界単位認定協会」の思いも込められている。

 2002年に刊行された単行本は20万部のヒットとなっており、今やLINEスタンプでも大人気のイラストレーター・五月女ケイ子のデビュー作としても知られている。

 単行本の刊行からはもう15年も経っているが、これが今読んでも面白いのだ。

 本書には31の単位と、単位ごとに8つの事象(ネタ)が収録されている。具体例として、外国人に「ア~ハン?」と言うプロっぽさ=1Ah(ア~ハン)の項目をいくつか抜粋してみよう。

片手運転のプロっぽさ 12Ah(ア~ハン)
ひじの手術を受けるプロっぽさ(慶応大学病院の場合)63Ah(ア~ハン)
ひじの手術を受けるプロっぽさ(南カリフォルニア大学病院の場合)91Ah(ア~ハン)
さりげなくボリュームを下げるプロっぽさ 347Ah(ア~ハン)
親の死に目に会わないプロっぽさ 3万7000Ah(ア~ハン)

「何か分かるwww」という面白さがある一方で、数値の極端な上昇っぷりにも楽しさが感じられるのではないだろうか。また、「カクテルに生のパイナップルが乗っているゴージャスさ=1Pnp(パイナポウ)」とした項目の

天井にシャンデリアのあるゴージャスさ 69Pnp(パイナポウ)
かつての同級生が出演するAVを観るゴージャスさ 320Pnp(パイナポウ)

 なんかは、その数値設定の独断と偏見っぷりも楽しすぎる。男の立場からすると、「確かにシャンデリアの4~5倍は後者のほうがゴージャスかも……」と納得もデキてしまうのだが。

 そして、それぞれの状況を描く五月女ケイ子のイラストも、ネタに負けない強烈さと味わい深さ。「レンタルビデオを巻き戻さずに返却する掟破り=102Spt(セックス・ピストルズ)」なんていう時代的に古びたネタは、彼女の昭和感と哀愁漂うタッチにハマりすぎで、今読むことでむしろ面白さが増しているようにも思える。

 なお、「肩をもみながら『○○選手』と声をかける厚かましさ==1Sns(センシュ)」とした項目には、「引退後に芸能界入りをねらうヤワラちゃんの厚かましさ=1240Sns(センシュ)」なんてネタも。15年前の本だからこそ、そう遠くない方向で将来を予見しているネタがあるのも一興だ。

文=古澤誠一郎