吉本ばなな『毎日っていいな』に学ぶ「心の栄養」をとる方法とは?

文芸・カルチャー

2017/4/5


『毎日っていいな』(吉本ばなな/毎日新聞出版)

毎日が慌ただしい。何かに追われている気がする。仕事。家事。育児。勉強。何かを頑張るってとても大事だけど、気持ちを張り詰めすぎていませんか? 「頑張らなきゃ!」なんて思わなくても、日々生活しているだけで、充分すごいことです。

日本では、2015年12月から企業で社員のストレスチェックが義務化され、今から2年後に定まるとされている残業時間の上限、月100時間 について協議が重ねられています。精神が健やかでない人が増えすぎて、国全体で対策をとるなんて、そしてその原因の多くが長時間労働にあるなんて。見えない縛りにがんじがらめになってしまっている日本の社会自体が、重たい病にかかっているのではないでしょうか。

過労死やうつ病に行き着いてしまうまで、追い詰められてしまう心を、どうすれば少しでも解放できるのか。自分の気持ち、考え方次第で少なくとも自分自身や周りの人を変えていきたいですよね。

同じことの繰り返しに思える毎日も、ほんの少し立ち止まるだけで、見え方が違ってくると、教えてくれている本が『毎日っていいな』(吉本ばなな/毎日新聞出版)。

あんなふうに見返りを求めずに人になにかをすることが自分にはできるだろうか? と思うたび、冷たくてきれいな水に触れたときのような感じがする。この感じに触れることが最近少なくなった。だから世界中のどこでもそれに出会うと「心の栄養だ」と思う。そういうことをゆっくり思い出す時間もあまりないから、せめてそっと目を閉じてそのことを思う時間を持つようにしている

最近の出来事ではなくても、振り返れば優しく接してくれた人、してもらって嬉しかったこと、自分が自然と笑顔になれた瞬間がきっとあるはず。

心がふわっと軽くなるような優しい時間を、著者のように思う時間を持てれば、こちこちに凝り固まってしまった心も徐々にほぐされて、「心の栄養」が染み渡ってくるのではないでしょうか。

心底つらい時に、乗り越えられるかどうかは「人の優しさからくる行動」や「言われて嬉しかった言葉」がどれだけ自分の中にストックされているかで、違ってくると思います。「心の栄養」が満タンなら、そこから補充してくれば、たとえ 立ち直れないと思う出来事があっても心は健やかさを保てます。「心の栄養」不足だと、補充できるものがないから、心は立ち直れないままマイナスのサイクルをたどってしまいます。

だからこそ毎日の中で、そういう瞬間を見逃さないようにしなければならない。同じことのように思える毎日にもきっと、キラキラした瞬間はやってきます。

それは実際に自分に起こった ことではなくても、本の中の言葉でも映画の中の出来事でも心に染み入る瞬間があったら、心にストックする。それが「心の栄養」になっていくのではないでしょうか。

毎日毎日忙しくても、寝る前の数秒間でもそういうことを思い出せる時間が持てれば日々は変わっていくのかもしれません。

「今日を確かに生きた実感。現代を生きるのに必要なのはそれかもしれない」(本書より抜粋)確かにそのとおりだと思うのです。

文=大石百合奈