“日本がポツダム宣言を受諾しなかった場合”の恐ろしい未来を描く! 女子高生が企てた壮大なテロ計画とは?

文芸・カルチャー

2017/4/6


『屋上のテロリスト』(知念実希人/光文社)

 世界を変えるためには、犠牲はつきものなのだろうか。1人の犠牲も出さずに世界を変えることはできないのか。テロやクーデターのニュースを見聞きするたびに、他に手段はなかったのかと胸を痛めつつも、どこか他人事になってしまうのは、自分が平和な国で平和ボケを起こしているせいかもしれない。しかし、平和は目には見えにくいが、確かに存在している。もし、現代日本が“平和の国”でなかったとしたら…?1945年にポツダム宣言を受諾しなかったとしたら、現代の日本はどうなっていたのだろうか。

 知念実希人氏の最新作『屋上のテロリスト』(光文社)は、日本中が女子高生の壮大なテロ計画に飲み込まれていく衝撃の傑作サスペンス。知念氏といえば、『仮面病棟』「天久鷹央の推理カルテ」シリーズなどの医療系ミステリーのイメージが強いだろうが、その印象のままページを開くと、この本には驚かされるかもしれない。歴史的史実を元に、“1945年に日本がポツダム宣言を受諾しなかった場合”の現代日本の姿を描き出したこの小説は、“もしかしたら訪れていたかもしれない”恐ろしい未来と、その国を変えようとする女子高生の戦いを圧倒的な緊張感で描き出す。

 舞台は、太平洋戦争を境に東西に分断された日本。西日本共和国と東日本連邦皇国の間には高い“壁”が築かれている。西日本側の群馬、埼玉、東京と、東日本側の福島、栃木、茨城、千葉の間、数百キロにも及ぶコンクリート製の巨大な壁は、山間部にある低い部分でも5メートル以上あり、千葉と東京の境のような互いの国の重要な都市が隣り合っている場所ではその高さは20メートルにも及んでいるという。

 死ぬことに憧れを感じている高校生の酒井彰人は、ある日、学校の屋上から飛び降り自殺しようとしているところを同級生・佐々木沙希に声をかけられる。「バイトする気ない?」かわいい同級生に協力を依頼されたら、断る理由などあるだろうか。彼女の誘いに思わずのってしまう彰人だが、沙希が莫大な金銭をかけて計画していたのは、壮大なテロ計画。死ぬことに憧れていたはずの彰人は困惑する。「こんな国めちゃくちゃになればいいのに」鮮やかな展開、待ち受ける衝撃と感動のラスト。世界をひっくり返す、超傑作エンターテインメントがここにある。

 核爆弾、ミサイル、生物兵器…。飛び出す物騒な言葉の数々に、女子高生テロリスト・佐々木沙希に恐怖を感じることだろう。だが、物語が進めば進むほど、自分が彼女の手のひらのなかで踊らされていたことに気づかされる。沙希がこのテロ行為に及んだその思いとは…?その思いに触れたとき、不覚にも胸があつくなる。この小説は何回読者をだますつもりだろう。こんなにも心を揺さぶられる小説が今まであっただろうか。平和ボケしているすべての人の心を振るわせる緊張感エンターテイメントは、今後大きな話題を呼ぶに違いない。

文=アサトーミナミ