ユニクロや楽天に続き資生堂も… 英語公用化の流れで、あらためて感じる日本語の価値

ビジネス

公開日:2017/4/17


 化粧品大手の資生堂が、2018年10月をメドに、本社部門の公用語を英語にすると発表して話題になりました。これまでもユニクロや楽天で同じ動きが注目されましたが、今度は資生堂という歴史が長い日系企業が実施するということで、今までとは違ったインパクトがあるように思います。
このような動きを、仕事で英語を必要とする人、英語ができる人の多くは当然の流れと言い、英語を必要としない人、英語ができない人は、そんな必要はないといいます。英語が仕事で必要な人でも、そこまでできなくても大丈夫という人もいますし、簡単にマスターできる学習法が注目されたりします。

■日本の英語力は78ヶ国中76位?

これは数年前のデータですが、英語教育費として使われる額は日本が世界第1位だそうですが、英語力ランキングでは78ヶ国中76位だったそうです。

 私自身は英語が話せませんし、実際に仕事で使う場面はほぼありません。グローバルとは離れた環境で仕事をしているということですが、これがグローバル企業となれば、そうはいかないだろうと思います。英語公用化を打ち出す企業は、かなり国際化が進んだ企業ばかりです。ビジネスのスピードや人材確保の観点からも、英語を中心にすえることのメリットが大きいという判断のもとに行われていることなのでしょう。

advertisement

 その一方、こういうグローバル企業の中でも、込み入った会話は日本語でするなどという話も聞きます。これは、ある外資系金融機関の日本法人の方から聞いた話ですが、日本で「英語が話せる人」という条件で人材募集をすると、言葉は話せるが、それ以外の資質や能力に不足を感じることが結構あるのだそうです。そうなると、英語に難があっても他のビジネス能力が高い人の方が好ましいですし、もしも英語でのコミュニケーションにこだわるのであれば、英語を母国語とする人の中から要件に合う人を探した方が効率的と考えているそうです。

 やはり、どんなに優秀な人であっても、日本人が母国語ではない英語を駆使することは、やはりそれなりに難易度が高いということなのでしょう。いずれにしても、特にグローバル企業でのビジネスを考えれば、英語公用化という流れはこれからも増えていくのだろうと思います。

■表現豊かで難解な日本語

 ただ、最近見かけた出来事の中で、日本語ならでは、日本語特有ということで、いくつか目につくことがありました。

 このところ、ある学校法人への国有地払い下げの問題で、「忖度(そんたく)」という言葉が注目されています。「他人の心情を推し量る」といった意味ですが、先日外国人記者クラブでの会見の中でこの言葉が出てきたとき、通訳の方々がしばらく訳すことができなかったという場面がありました。かなりのやり取りがされたのち、「行間を読むというようなニュアンスがあるが、直訳できる英語は存在しない」と説明されていました。

 また、作家の村上春樹氏の新作が最近発売されましたが、彼のファンは海外にも多く、作品は各国語に翻訳されて発売されています。そんな海外のファンの一人が、あるテレビ取材の中で、「彼が母国語である日本語で書いた文章を、直接読んで理解できる日本人がうらやましい」と語っていました。

 いくつかの資料を調べたところ、各国語の90%以上を理解しようとすると、スペイン語やイタリア語では1500から1800語、フランス語では約2000語、英語は3000語、ドイツ語で約5000語、日本語に至っては1万語が必要とされているそうです。また、日本語の擬音は、英語の5倍近くあるともいわれているそうです。日本語がいかに難解な言語であるかということとともに、それほど表現が豊かということであり、日本人はそんな難しい言語を、生まれながらにして身につけているということです。

 企業のグローバル化の流れは、このところの保護主義的な動きで、これからどうなっていくかは今ひとつわかりませんが、東京オリンピックなどのイベントもあり、日本人が海外の人たちとコミュニケーションをとる機会は、これからも増えていくでしょう。そして、外国の人とコミュニケーションをとるためには、英語の方が便利なことは間違いありません。

 ただその一方で、世界的に希少価値がある日本語の文化は、日本人として守っていかなければなりません。これから小学校でも英語が必修化されますが、母国語である日本語があってこその英語だと思います。使い分けのバランスだけは、間違ってはいけないと思います。

文=citrus ユニティ・サポート小笠原隆夫