あの人気にも影響が!? トランプ大統領とハリウッドの関係

社会

公開日:2017/5/12

『なぜメリル・ストリープはトランプに噛みつき、オリバー・ストーンは期待するのか』(藤えりか/幻冬舎)

 今年1月ゴールデングローブ賞授賞式で、メリル・ストリープが行ったスピーチを記憶している人も多いだろう。彼女は名前こそ出さなかったものの、トランプ大統領の反移民政策や、選挙期間中にトランプが行った障害がある記者の真似を批判したのは記憶に新しい。

 先日発売された『なぜメリル・ストリープはトランプに噛みつき、オリバー・ストーンは期待するのか』(藤えりか/幻冬舎)は、トランプ大統領就任前から就任後にかけて行われたハリウッドで活躍する人々のインタビューをもとに構成されている。そこからは、ハリウッドとトランプ、ハリウッドとアメリカの関係が見てとれる。

 本書に登場するマット・デイモンは、メリル・ストリープ同様、政治的発言が多いハリウッドスターとして知られている。本書では、ボーンシリーズ9年ぶりの新作『ジェイソン・ボーン』公開前に収録されたインタビューが掲載されており、その中では作品だけではなく政治についても言及している。

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 インタビューはトランプ大統領就任前に収録されたものだ。そこで彼は大統領選で巻き起こったトランプ旋風について「悲しいことだ。彼の暴言はかつてなら大統領候補失格なのに放置されている。グローバル化する社会で人々は置き去りにされていると感じている。エスタブリッシュメント(既得権層)への不満や敵意が英国では欧州連合(EU)離脱、米国ではトランプ現象として表れている」と語っている。

 本書でマットはボーンシリーズについて「常に、今僕らが生きる時代の真実をついたものであろうとしているんだ」と話すが、その言葉通りボーンシリーズは世の中の情勢を積極的に取り入れた作品だ。

 彼の願いとは裏腹にトランプは大統領に就任した。その後、マットは米NBCが行ったインタビューで「僕たちは新たな領域に突入している感じだ」としたうえで「今は、本当に彼(トランプ)を応援しなければいけない」と語っている。その前を向いた発言は、これから彼が出演する作品にどう影響してくるのだろう。

 映画製作は何年もかかる。今、現在、公開されている映画のほとんどはトランプ政権誕生前に製作された作品だ。しかし、これから先、トランプ政権誕生以後に作られた作品も出てくる。それに合わせて政治的メッセージを持ったものも増えてくるはずだ。

 今や、アメリカの情勢は対岸の火事ではない。トランプ大統領就任後、社会派作品が多く出てきたときに、我々、観客はただエンターテインメント的に映画を消費するのではなく、それをきっかけに、どう政治や世情に関心を持って、どう動いていくかを考えなければならないところにまで来ているのではないだろうか。

文=山田広海