なんかつまんない、と思ったらまずはこの一冊を! MOE絵本屋さん大賞3冠 ヨシタケシンスケ最新作『つまんない つまんない』

文芸・カルチャー

更新日:2020/8/25

『つまんない つまんない』
ヨシタケシンスケ/白泉社)

ヨシタケシンスケさんは、不思議な人だ。彼のまなざしをとおすと、なんてことのない風景がぼんやり光り出す。急激なきらめきを発するのではない。暗闇にぽっと蠟燭がともるように、慣れてきた目でしだいに周囲が見えるように、静かに、じわじわと、明るくなっていくのだ。最新作『つまんない つまんない』(白泉社)も、そんな、暗闇にあかりをともすような絵本だった。

「うーん… なんかつまんない。」

と、ソファの上で転がる子どものつぶやきから始まる本作。この「うーん…」が重要だ。彼はもう、打てる手はすべて打った。ひととおりのおもちゃは手にとってみたし、たぶん、家にある部屋という部屋のドアはあけただろう。テレビも、本も、全部ためした。だけどだめ。つまんない。最終手段としてお母さんに「なんかつまんないんですけど」と言ってみるも、「自分でなんとかしなさいよ」と返される。ごもっとも。

そういうときって、大人にもある。

せっかくの休日。好きなことをしていいし、誰にもなんの制限もされてない。だけどなんか、つまんない。いつもなら心躍るはずのアイテムにも、なぜだかまるで揺さぶられない。そんなとき、できることはたった一つだ。そう、――“想像”してみるのである。

男の子は考える。つまんないのって、誰のせい? そもそもつまんないって、なんだ?

たとえば縄でぐるぐるまきにされて吊るされて、揺らされたりなんかしたら楽しそうだけど、ずーっとその状態じゃたぶんつまんない。

ずっと同じがだめなら、ちょっとずつ座る場所をずらしていったらどうか。おしりでずりずり、小移動。……うん、おもしろいけど、ちょっとしかおもしろくない。

どうして、つまんないのかな。どうしたら、おもしろくなるのかな。

そんなこと考えているうちに男の子は気づく。アレ、「つまんないこと」をいっぱい考えるのって、おもしろい!

この「アレ」が、ヨシタケさんの魔法だ。

日常に転がっているふとした疑問や、ネガティブだったはずの感情を、とびっきりの宝物に変えてくれる。つまんないと思ってる人を300人集めたら、つまんないが増えるのかな、それとも楽しくなるのかな。そんなことを思う男の子と一緒に、読んでいる私たちもいつのまにかわくわくしてくる。いやそれって絶対、楽しいでしょ。少なくとも楽しいことが一個は見つかる。ああそうか、つまんないって思ってるときでさえ、まわりにはおもしろさの欠片が転がっているんだ。世界って、こんなにもおもしろいもので満ちているんだ! と気づかせてくれるのだ。

もちろん、「つまんない」と「おもしろい」は表裏一体。「アレ」と思った瞬間に、「な~んだ」と思うこともある。でも、それでいい。その「な~んだ」の裏にはまた、ちがう「アレ」が潜んでる。大人も子どもも、そんなふうに日常を冒険していけばいい。

「うーん…なんかつまんない」と思ったときはまず、この本を手にとることをおすすめしたい。

文=立花もも

 

「絵本作家のアトリエ訪問vol.2ヨシタケシンスケさん」
ダ・ヴィンチニュースにて近日公開予定です!
5月某日、初夏を思わせる気候の中、ダ・ヴィンチニュース編集部はヨシタケさんのご自宅を訪問しました。ヨシタケさんの家族のこと、創作スタイルや、絵本『つまんない つなんない』が生まれるまでなどを伺いました。原画もたくさん見せていただきました。