『自分を好きになろう うつな私をごきげんに変えた7つのスイッチ』第1章試し読み

暮らし

更新日:2017/7/3

まずは1ヶ所10秒片付けをやってみた

いろいろな本を読んでみて、汚部屋から脱出した人の体験談で共通している点を見つけました。それは「まずは気になる1ヶ所だけキレイにした」ということからはじめたという点です。
いきなり全部やるとなると、途方に暮れて挫折するのは、ダイエットと似ています。10キロを短期間で瘦せるとなると「無理だな」と思ってしまいますが、まずは1キロ瘦せて、あとは徐々に1年ぐらいかけて瘦せていこう、と気長に構えることができたら、少しだけやる気が出てきます。掃除の習慣は一生ものなので、テスト勉強みたいに短期間に結着をつけることを考えるのはよそうと思いました。

ゴミ屋敷のベッドの中で、掃除と片付けの本を10冊ほど読んで、ようやく、やる気が出てきました。
そして、ベッドサイドに積まれていたペットボトルをゴミ袋にまとめて入れてみました。

時間にして10秒ほどのその行為が、私にとっての「片付け」デビューでした。
ペットボトルがなくなった場所は、床が出現しました。
なんとなくそこだけ、普通の人の部屋のような雰囲気になったのです。

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「これは」
床に積まれたゴミは、あまりに量があったため、もう永遠に自分の力ではどうにもできないとなぜか思い込んでいたのですが、手を動かすと10秒ほどで簡単にキレイになってしまいました。この事実に何かハッとして、私はとっさに反対側に積んであった惣菜弁当のカラも、別のゴミ袋に詰めました。そこにまた、床が出現しました。

ゴミを、マンションのゴミステーションに持っていき、部屋に戻ると、床が見えている寝室のベッドの周りは、埃っぽいけれどなんとなく健全な部屋に見えたのです。
すると、居間や廊下にあふれている、服や本の山、そしてなんだかわからないチラシや紙のゴミ、そしてねこの毛玉などが急に目に入ってきたのです。

「ひどい部屋に住んでたんだな」

1ヶ所をキレイにすると、部屋の他の場所の「汚さ」がはっきりと目に入ってくるという体験をこの時にしました。
そして、今目に入っているものの中で、明らかなゴミと言えるものを、すぐに袋に詰めて、ゴミステーションに持っていきました。はるか遠くに感じてめったに行かなかったゴミステーションも、エレベーターに乗ってしまえばすぐにたどりつけました。しかも24時間ゴミ捨て放題なのです。おなじマンションに12年住んでいて、このことに感謝したのはこの日がはじめてでした。

そして部屋に戻って窓を開けました。
換気をしたのは、実に2ヶ月ぶりです。

部屋の淀んだ空気と一緒にどんよりした気分も抜けていくような気持ちよさを感じました。私はこの2ヶ月ほど、部屋の換気すらできなかったことに改めて驚きました。

ものの捨て方がわからない

これでゴミはなくなったし、換気もした。今度は掃除機をかけて、拭き掃除をすれば、部屋はキレイになるのだろうか。

いや……、そうは思えない。

まだ部屋の中が雑然としている。「今はゴミがない部屋」であって「片付いた部屋」ではない。でも、この乱雑な感じの部屋をどうしたらホテルのようなすっきりした空間になるのか、わかりませんでした。私はまた書物に知恵を借りることにしました。

さらに、片付けの本を読んでみて気がついたのは、うちにはものが多すぎるということでした。掃除サービスは、清掃はしてくれるけど、ものを捨ててはくれないのです。なぜなら、捨てる判断ができるのは持ち主だけだからです。
以前、プロに清掃をお願いした時に「なんか今ひとつ」だなと思っていたのはこれが理由だったのです。
「掃除」の前には「ものを捨てないといけない」ということを知りました。まず捨てないと、片付いてキレイな部屋にはならないのです。

私の家は、収納の能力をはるかに超えて、家にものがありました。服や本があふれていました。片付け心に火がついた私は思いました、「一刻も早く、これを捨てたい」と。

しかし、捨てたいと思うものの多くは、掃除や片付けの能力が全くない自分には、手に負えなかったのです。「これが、燃えるゴミなのか、燃えないゴミなのか、資源ゴミなのか、粗大ゴミなのか、わからない」、恥ずかしいですがそんな状態でした。
「しかたない。片付けができる人間だったら、そもそも部屋が汚部屋になっていないもの。きっと、私とおなじような汚部屋の人たちがたくさんいるはずだし、その人たち向けのサービスがあるはず。まずはゴミを捨て切ってから、掃除や片付けを本で勉強しながら実践していこう」と決めました。

Googleで検索すると、「軽トラ積み放題8000円」というサービスがたくさんあるのを見つけました。ゴミを分別しないで、軽トラに載せられるだけ載せて引き取ってくれるサービスです。私は次の休みに早速電話で予約を入れ、その日のうちに本棚5本、厳選した数十冊を除いた本すべて、壊れたまま放置してあった冷蔵庫、山積みの服、集めたけど結局着なかった和服、健康器具、大量の食器など、前から不要だと思っていたものを持っていってもらいました。
結局軽トラ1台に載りきらず、追加料金で3万6000円になってしまいましたが、自分ひとりで処理することを考えたら永遠に片付けが終わらないと悟ったので、3万6000円は自分のために払おうと決め、支払いました。

私のゴミを積んだトラックが遠くに消えていくのを見ながら、こうやって人の助けを借りなければ捨てられないほどのものを、ゆっくりと時間をかけてではあるけれど、自分ひとりでこの部屋に運び込んできたんだなということに改めて驚いていました。

こんなふうに大きな片付けは、「軽トラ積み放題」のサービスを利用したりして、合計2週間ほどで済みました。

キッチンからも、何年も使ってない調味料や、使いそうもないけど取っておいた食器などを一掃しました。片付いたキッチンで、料理を久しぶりに作りました。食べ飽きた惣菜弁当ではない、自分のために作った料理を食べた時、しみじみ、「ああ、片付けてよかったな」と思いました。体の中までキレイになっていく感じがしたのです。

しかしそこからが「断捨離」の本番だったのです。

「これは本当に必要?」と、ものと向き合う日々がはじまりました。
「必要な気がするから取っておいたけど、やっぱりいらないな」と、部屋にあるものひとつひとつに向き合って、本当に必要なもの、好きなものだけを厳選し残しました。
それには半年ほどの時間が必要でした。この作業は、自分はどんなものを無駄買いしてしまうのか、その傾向をつかむいいきっかけになりました。私の場合は、2000~3000円くらいの服をネット通販で買ってしまうのが「クセ」です。今でもそのクセは残っていますが、着ないものは意識して捨てるようにしています。

>>掃除ができたことが自信に