元米国国務長官コリン・パウエルの「最強のビジネス書」がついに文庫化! 伊坂幸太郎も魅了されたその内容とは?

ビジネス

公開日:2017/8/10

『リーダーを目指す人の心得』(コリン・パウエル、トニー・コルツ:井口耕二:訳/飛鳥新社)

 「最強のビジネス書」として全世界で大きな話題を呼んだ本がついに文庫化された。『リーダーを目指す人の心得』(コリン・パウエル、トニー・コルツ:井口耕二:訳/飛鳥新社)は、黒人としてはじめて米国4軍を率いる統合参謀本部議長に就任、2001年から2005年までは国務長官を務め、4つの政権で政府の要職を歴任したコリン・パウエル氏が自らの仕事の流儀を記した一冊。

『ジャイロスコープ』(伊坂幸太郎/新潮社)

 この本を読んだ菅義偉官房長官は「この本を読んで会見へのプレッシャーがなくなった」と激賞したほか、各界のキーパーソンがこぞって絶賛。特に、小説家の伊坂幸太郎さんは著書『ジャイロスコープ』(新潮社)の中で、登場人物の重要な台詞として、パウエル氏の言葉を引用した。小説家が魅了されたとあって、パウエル氏の言葉はどれもドラマチック。そして、仕事の姿勢を学べる実践的な内容でもあり、彼の“心得”は、多くの人の心に強く響くだろう。

常にベストを尽くせ。見る人は見ている

 パウエル氏はスポーツも勉強もあまり得意ではなかった。しかし、両親からそのことで文句を言われることはなかった。「ベストを尽くせ。ベストを尽くせば結果は問わない。だが、ベストを尽くさないのはいかん」。それが両親の教育方針であり、仕事をするうえでのモットーになった。仕事がどれほど難しくても、仕事や上司、職場環境、同僚がどれほどきらいでも、常にベストを尽くすのだ。

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 どのような仕事でも学びはあるし、どのような仕事でも成長し、輝くことができる。報酬は受け取るのではなく、勝ち取れ。常にベストを尽くせ。誰も見ていなくても、自分は必ず見ている。自分をがっかりさせてはならない。

部下に尊敬されようとするな、部下を尊敬しろ

 リーダーと部下のあいだに尊敬と信頼があれば、作業員がやる気をだし、適当な仕事に逃げずに期待以上の働きをしてくれる。たとえば、2011年にジョージ・W・ブッシュ政権が設立したあと、国務省では、初の海外訪問先にメキシコを選び、新しいメキシコ大統領、ビセンテ・フォックス氏と会談する計画を立てた。その準備を進めるにあたって、パウエル氏は、大統領への概要説明を下級士官2人に任せたと言う。はじめは不安げな様子だったが、下級士官たちはパウエル氏から与えられた仕事をやり遂げた。そして、それだけではなく、「大統領もパウエル氏も我々を信頼してくれている!」という話が国務省内を駆け巡ったのだ。こちらが部下を信頼すれば、部下は信頼を返してくれる。恥をかかせないようにとこちらを守ってくれる。部下に尊敬されようとするのではない。部下を尊敬することが大切なのだ。

 リーダーの仕事は、部下に仕事を「やらせる」ことではなく、「やる気にさせる」ことなのだろう。パウエル氏の言葉は、どれも当たり前のことのようでいて、普段見過ごしがちなことばかりだ。この本の原題は、『It Worked for Me(私はこれでうまくいった)』。リーダー論を書いた本というと「リーダーたるものかくあるべき」というような押し付けがましい内容をイメージする人もいるかもしれない。だが、この本はあくまでも、パウエル氏が自身の成功例を示し、「参考になれば活用してね」というもの。その謙虚さ、おごらない態度こそ、リーダーに求められるものではないだろうか。パウエル氏の姿こそ、我々が目指すべきリーダーのありかたといっても過言ではない。「人の心を動かす」秘訣が詰まった一冊は、ビジネスパーソン、必読の書だ。

文=アサトーミナミ