「この人は信頼できる」。そう断言できる相手はいますか?『フーガはユーガ』/佐藤日向の#砂糖図書館㊲

人を信じる、というのは簡単なことではない。言動のひとつひとつが信頼に繋がり、長い時間積み上げた信頼も、何かひとつ問題が起これば簡単にゼロになる。
今回紹介するのは、伊坂幸太郎さんの『フーガはユーガ』という作品だ。物語は、「常盤優我」が、双子の弟・風我と歩んできた幸せではない子ども時代について、仙台市のファミレスでひとりの男に向けて語るシーンから始まる。優雅によって走馬灯のように語られる、彼らの人生と、とある事件。最初から最後まで全てが実は繋がっている、ファンタジーとミステリーが融合した作品だ。読了後、なんとも言えないモヤモヤした感覚が心に残り、「他に方法はないのか」と思わず逡巡してしまった。しかし、人間の驕りや過信してしまう部分がリアルに描かれていて、他人事とは思えなかった。
彼ら双子の兄弟は不遇の環境で育っていたが、お互いがお互いを支え、二人ともすべての出会いを大切に、そして出会った相手を信頼していたからこそ、薄暗い環境の中でも光が途絶えなかったのだろうと感じた。信頼できる人と出会う、ということは奇跡に近い。私にとってそれは母であり、母以外に当ては…