浅野忠信主演『幼な子われらに生まれ』公開直前! 「普通の家族」を築けない不器用な大人たち――原作者・重松清と脚本家が裏話を明かす

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更新日:2017/8/19

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    (C)2016「幼な子われらに生まれ」製作委員会

 重松清の傑作小説を豪華キャストで映画化した、2017年8月26日(土)公開の「幼な子われらに生まれ」。この度、原作者の重松と脚本を担当した荒井晴彦の貴重な対談コメントが到着した。

 今回の対談は若かりし頃の話を始めとして、ここでしか聞けない話が盛りだくさん。「親と子が友達になる」という重松作品の根底に流れるテーマをどんな風に描いたのか、こだわりのラストシーンなど、映画制作の裏側にも迫る内容になっている。

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    (C)池村隆司

 『映画芸術』の対談企画で久しぶりに顔を合わせた2人。荒井は同作の映画化を希望するも、実現までに費やした時間が約20年かかったことから「会っても、借金してるみたいでプレッシャーがあったんだ(笑)。本当に長い間お待たせして。それしか言うことはないですよ」とコメント。それに対して重松は「プレッシャーなんてかけてませんよ(笑)。『幼な子われらに生まれ』は荒井さんに差し上げたんですから。『幼な子』が出たのが1996年でしょ。あの頃の僕なんて全くの無名で、そんな作家の単行本を荒井さんが読んでくれたこと自体びっくりだったんです」と回想した。

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 そして原作を読んで泣けたと語る荒井は、「(原作発売当時)うちの娘がちょうど小学6年生で、『幼な子』の父娘みたいに離れて暮らしてたから、小説に出てくる女の子みたいな素直な娘になるといいなぁ、全然なつかないもう一人の連れ子みたいだとたまらんなぁと思って…」と、自分と娘の関係を投影していたことを告白。

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    (C)2016「幼な子われらに生まれ」製作委員会

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    (C)2016「幼な子われらに生まれ」製作委員会

 映画化が中々進まない中で、重松は直木賞を受賞するなど有名作家の仲間入りを果たす。重松は当時のことを振り返り、「『ビタミンF』で直木賞をもらった後、『幼な子』は何度かテレビドラマ化の話がありました。でも、僕としては『幼な子』は荒井さんにあげたものだから、毎回まずは荒井さんに話を通してほしいと答えていました。そうすると、誰も荒井さんのところに交渉に行かないんですよね」と笑いながら語る。重松の言葉からは、新宿の文壇バーで出会い親交を深めてきた荒井への信頼と愛情が伝わってくる。

 完成した映画を観た重松は「何年かぶりに原作を読み返して、僕の小説のテーマの一つである“親と子が友達になる”ということが、ここから始まっていたんだなと思ったんです。『幼な子』では主人公の元妻が再婚して、娘に義理の父親ができます。実の父親からすればもう“お父さん”には戻れないわけだけど、友達として君が困った時にはいつでも駆けつけるよ、という存在になれないだろうか」とコメント。『流星ワゴン』など後の小説でも繰り返し描かれる“親と子が友達になる”というテーマを見つけた、記念碑的な作品であることを明かした。

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    (C)2016「幼な子われらに生まれ」製作委員会

 さらに、早稲田大学で教鞭をとる重松は「(大学生に)『幼な子』の予告編を見せると食いつきがいいんですよ。バツイチとかステップファミリー、DVみたいな家庭の問題は今の方がよりリアルになっているんですよね。そう考えると、結果的に20年前に映画にならなくてよかったんじゃないですか?」と同作のテーマがとても“現代的”であることを指摘。「このシナリオはこれからの10年、20年も色褪せないと思いますよ」と太鼓判を押している。

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    (C)2016「幼な子われらに生まれ」製作委員会

 そんな重松が唯一荒井の脚本に注文をつけたのが、主人公の名前だった。荒井は「小説は『私』という一人称だから、主人公に名前がないでしょ。で、俺、面倒だから名前を『清』にしたんだよ。そうしたらそれだけはやめろって注文が来た」という驚きのエピソードを明かす。

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    (C)2016「幼な子われらに生まれ」製作委員会

 20年越しの肩の荷が下りて、借りを返した気持ちと語る荒井。しかし重松からは、「借りを返した感覚なんて持ってほしくないなぁ。荒井さんが監督をやりたいような原作があれば、もう1回貸しを作らせてもらえませんか?」と心強い言葉も飛び出した。

<あらすじ>
バツイチ、再婚。一見良きパパを装いながらも、実際は妻の連れ子とうまくいかず、悶々とした日々を過ごすサラリーマン・田中信(浅野忠信)。妻・奈苗(田中麗奈)は、男性に寄り添いながら生きる専業主婦。キャリアウーマンの元妻・友佳(寺島しのぶ)との間にもうけた実の娘と3カ月に1度会うことを楽しみにしているとは言えない。実は、信と奈苗の間には、新しい生命が生まれようとしていた。血のつながらない長女はそのことでより辛辣になり、「やっぱりこのウチ、嫌だ。本当のパパに会わせてよ」という一言を放つ。今の家族に息苦しさを覚え始める信は、怒りと哀しみを抱えたまま半ば自暴自棄で長女を奈苗の元夫・沢田(宮藤官九郎)と会わせる決心をするが―。

 約20年の時を経て映画化が実現した「幼な子われらに生まれ」。重松と荒井の深い絆がどんな風に形になったのか、劇場まで足を運んで確かめてみよう。

只今発売中の『映画芸術』にロングインタビューを掲載

■映画「幼な子われらに生まれ」
公開:2017年8月26日(土)、テアトル新宿・シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー
原作:重松清
監督:三島有紀子
脚本:荒井晴彦
配給:ファントム・フィルム
出演:浅野忠信田中麗奈、南沙良、鎌田らい樹、新井美羽、水澤紳吾、池田成志、宮藤官九郎、寺島しのぶ
(C)2016「幼な子われらに生まれ」製作委員会
公式サイト:http://osanago-movie.com/

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