『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』著者のコラム集は、毒気よりユル~~い&カワイさ全開!

ライフスタイル

2017/9/9

『コラムの王子さま(42さい)』(渋谷直角/文藝春秋)

 『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』は、ユルすぎる絵柄と、サブカル界のドス黒い一面を描いたストーリーが話題に。同じく毒っ気満点なマンガ最新作『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』は、なんと妻夫木聡&水原希子主演で実写映画化(9月16日公開)されてしまった渋谷直角。

 漫画家のみならず、ライター、コラムニストとしても活躍を続けてきた彼が、6年ぶりに発表するコラム集が『コラムの王子さま(42さい)』(文藝春秋)。こちらはタイトルの雰囲気どおり“ユルさ”が前面に押し出された1冊だ。

 たとえば、お湯のセルフブランディングについて分析したコラム「お湯」。

 ここでは、ただのお湯を「白湯」と呼ぶことについて、「カールスモーキー石井が映画『河童』を撮ったときに、監督名を『石井竜也』にしたのと同じだ。『白湯』と名乗ることで、ハクをつけたのである」と分析。そして「温泉」「女湯」などの言葉のイメージの素晴らしさを褒め称えつつ、「東京オリンピックの開会式も、『お湯』推しで行くべきじゃないか。みんな湯船に浸かって、いっそ湯けむりで何も見えないくらいの式をやるといい。おぼろげにAKB48がお風呂に入ってる!? くらいの。よく見たら秋元康で全員ズコーッ! とか。どうだろう?」と悪夢のような提案をしている。

 「豆」の可愛さを分析したコラムもいい。

 このコラムでは、そら豆のなめらかなボディの曲線、ひよこ豆の名前のズルさなどに触れつつ、「ベスト・オブ・かわいい豆」は「もやしについている豆」と断言。豆なのに、びろーんと伸びた芽のほうがメインの状態を「ミヒマルGTのボーカルのつもりだったのに、気づいたら後ろのサングラスの男のほうだった、みたいなものだ」と説明。そしてメインではないもやしの豆と、ミヒマルGTの男(miyake)の良さをひたすら書き連ね、「……えっと、俺、一体何の話してるんだ?」と筆を置いている。

「その感覚、分かる!」という“あるある”のツボを付きつつ、カルチャーネタを強引にたとえに使い、なんだかよく分からない&凄いオチに到達する……。本書はマンガではなく文章がメインだが、『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』にも通ずる直角ワールドが全開の一冊なのだ!

 そして本書には彼直筆のイラストも多数収録されており、その雰囲気はマンガ同様にユルユルでカワイイ。そして文章の方も、自分でボケた直後に()を付けて、いちいち言い訳&説明をしてしまうところもカワイイ。「TSUTAYAのバッグ」「うずらのたまご」のカワイさを分析したコラムも面白かったが、そもそも大の大人がそんなものについて一生懸命に書いているのがカワイイ。そう考えると、『コラムの王子さま(42さい)』という本書のタイトル、かなり言い得て妙かも。