「揚げ足をとる人々」内田 樹×名越康文×橋口いくよ 電子ナビスペシャル鼎談
更新日:2013/8/13
まずは言葉を
ごくんと飲み下す
橋口 揚げ足をとるための毒が込められた言葉がそこらじゅうから流れてくる中で、揚げ足をとらない体質、言葉を飲み下せる体質になるにはどうしたらいいかっていうことになってくるわけなんですが。
名越 詩とか和歌とかっていうのは飲み下して理解、自分の胃の中で消化して初めて理解するものだから、そのためにはいいと思うんですよね。
内田 あ、そうか。詩はまず飲ませちゃうんだ。
橋口 あー!
内田 意味がわかんないけど、飲んじゃう。ごっくん、て。
名越 で、飲んじゃううちに「あらっ? えらいもん飲んだぞ」みたいな。
橋口 しかも何年もたってから「はっ」とか思ったりする。あのときのあの言葉はそういう意味だったんだって。
内田 効く詩ってのはやっぱりそうなんだ。ごっくり飲んでから10年くらいして、出てくる。
橋口 そうそうそう!
内田 だから、詩って短いんだね!
名越 僕、そう思うんですよ。
内田 そうか。すると詩っていうのは、人間というのは言葉をうまく飲み込めないものだってことを前提に作ってあるわけだね。
橋口 うわ、わかる! 私、作詞の仕事もするんですけど、そのときだけは、どんなに揚げ足をとられても別にいいもんって思って書いてる!
名越 作詞のときはひらきなおってるでしょ!
内田 詩なんか、揚げ足のとりようがないものね。そうか、揚げ足をとられないための一番優れた言語的表現は詩なんだ。
橋口 じゃあ、ツイッターは全部詩で書きましょうとかね。
内田 あ、だから140字なんだ!
橋口 それにぴったりですよね。内田 あと、全員ツイートするときは「五・七・五」で韻文になってないとダメ!とかね。
橋口 詩か和歌でツイッター!
内田 あ、それいいわ。だって、ポエジーじゃ、人の言葉尻をつかまえて揚げ足とったりできないものね。
橋口 誰かの詩や和歌を誰かが攻撃しようとしても、返す人も詩か五・七・五じゃないといけないから。
名越 「下手だよね あんたの韻文 これ…へたくそお〜」とか?
橋口 でもその人が下手くそ。
名越 なんの攻撃性もそっからくみとれない!
内田 韻文で、イデオロギー的なこと書くと、絶対「交通標語」みたいな、めちゃめちゃ不細工なものになると思うよ。
名越 お前が下手なんだよ! みたいな!
橋口 あっ、和歌への感想なんだから、ちゃんと詩か五・七・五で返さなきゃダメですよ! 決まりは守ってください。