初めての難事件と告白が同時発生! ドキドキ必至の「第1回ポプラキミノベル小説大賞」大賞受賞作!

文芸・カルチャー

公開日:2022/10/25

マリ×トラ事件ファイル(1)届いた依頼はラブレター!?
マリ×トラ事件ファイル(1)届いた依頼はラブレター!?』(花井有人:著、葛西尚:イラスト/ポプラ社)

 非日常的なことや不可解なことが起こると、胸がざわざわする。このざわざわを不快と感じるか楽しみと感じるかは人によると思うが、それでも多くの人が、一度くらいは「何かが起こって、それを見事解決する自分」を想像してドキドキワクワクしたことがあるのではないか。もちろん、筆者もそうした想像に心ときめかせてしまう人間の1人だ。だが、大抵はあくまで想像の範囲で終わるもので、自ら積極的に事件に飛び込む勇気はない。

 しかし、『マリ×トラ事件ファイル(1)届いた依頼はラブレター!?』(花井有人:著、葛西尚:イラスト/ポプラ社)の主人公・鳥海真理は違った――。この作品は、小説投稿サイト「エブリスタ」とポプラ社の児童文庫レーベル「ポプラキミノベル」によってコラボ開催された、「第1回ポプラキミノベル小説大賞」の大賞受賞作。

 鳥海真理は、探偵アニメオタクで、自らも「探偵部」の活動に没頭する中学2年生。「部」とは名ばかりの1人活動だが、誰に何を言われてもまったく臆することなく堂々と活動を続けている。とはいえ、この活動の宣伝方法は校内の掲示板のみ。普段の活動内容は、落としもの捜しやウワキ調査などの地味なものばかりだった。だがある日、そんな真理のもとに一件の依頼メールが舞い込む。内容は、なんと「転落死の原因を探してほしい」というもの。

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 イタズラかもと思いつつも依頼人に指定された学食前へ向かうと、そこには無表情で満点を取り続ける学年1位のクラスメイト・月山虎がいた。そして事件の詳細をぽつぽつと語り始めるのだが――なんとこの「転落死」をしたのは虎本人で、しかも「恋に落ちた」という意味だった。そして恋の相手は、なんと真理本人!

 初めての難事件と告白が同時に押し寄せ、真理は混乱しつつも、探偵部としてこの事件と向き合う決意をする。「虎と2人で虎が真理を好きになった原因を探す」という、客観的に見るともはやイチャついているようにしか見えない状況だが、それでも本人たちは至って真剣に、この難事件に取り組んでいく。この様子がただひたすらに甘酸っぱくて、見守りたくて、どんどん読み進めてしまう。

 そして読み進めてしまうもう1つの理由として、児童書とは思えないくらいに展開が読めない、というのもある。そもそも虎の依頼自体が意表を突くものだし、「今までなにかに夢中になったことがない」という虎と真理のこれといった接点も見えない。本人たちにすら覚えがない。途中、そんな中で“ある疑惑”が浮上し、事件は解決へ向かったと思われたが――そこからまた、どんでん返しが展開される。しかもこの真相が、もうどうしようもなくキュンキュンしてしまうものなのだ。筆者も読んでいて、「なんだその反則級の答えは! (いい意味で)恥ずかしい!!!」と叫びたくなった。そうか。

 この『マリ×トラ事件ファイル(1)届いた依頼はラブレター!?』は、先日1巻が発売されたところだが。巻末の予告を見るに、2巻以降も真理と虎の初デートや謎の人物からの依頼など、恋も事件も盛りだくさんの予感。子どもはもちろん、大人でも十分楽しめる内容なので、「普通の恋愛ものに飽きてしまった」「ドキドキさせられたい!」という人はぜひ本書で胸をざわざわキュンキュンさせ、心をリフレッシュしてみてほしい。筆者も、引き続き2人の動向を見守りたい。

文=月乃雫

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