考えていること、ちゃんとことばにできますか? 聞き手の心に届くことばの見つけ方

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公開日:2022/12/30

自分の〈ことば〉をつくる
自分の〈ことば〉をつくる あなたにしか語れないことを表現する技術』(細川英雄/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 私は映画を観るのが好きだ。楽しいとか悲しいとか、いろんなことを感じるのが楽しくて観ているけれど、「感想を聞かせて」と言われると困ってしまう。うまくことばが出てこない。レビューサイトで人の感想を読んでいると「そうそう! 私もそう思う」と感じてしまうことも。

 もっと自分だけのことばで語れたらいいのに……。そんな悩みを持ったときに出会ったのが『自分の〈ことば〉をつくる あなたにしか語れないことを表現する技術』(細川英雄/ディスカヴァー・トゥエンティワン)。本書は「何かを表現するのに必要なのは、自分の〈ことば〉をつくることである」と断言している。そんな自分のことばの見つけ方を、簡単に紹介しよう。

自分の〈ことば〉って何だろう?

 そもそも、自分のことばとは何なのだろう。これが分からない人は、自分が何を考えているのか、きちんと分かっていないのだという。自分の考えが分からないのに、人に伝えようとしてもうまくいかないのは当然。まず自分が何を考えているのか、それをハッキリさせる必要があるのだ。

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 自分の考えが掴めないときには、とにかくことばにしてみると良いそう。悩みを人に話しているうちに頭の中が整理されて答えが出た、という経験はないだろうか。考えは、もとからあるものではなく、モヤモヤした思考をことばに置き換える作業を繰り返すことで、少しずつ形成されるものだ。

「自分の悩みや考えを話せる友人がいない」という方も安心してほしい。独り言や紙に書き出すという方法も効果的とのことだ。

自分の〈テーマ〉をみつけよう

 何かを表現するときに必要なのは、自分の“テーマ”を自分のことばで語ることだと本書は述べている。テーマとは、好きなことや興味・関心のあること、問題意識を持っていることなど。つまり、自分だからこそ語れる何かを指す。自分のことばは、「自分がどんなことに関心があるのか」に気付くこと。ここから始まるのだ。

 自分だからこそ語れること、それを知るために、必要となるのは他者との対話。自分では当たり前と思っていたのに、人に話したら「そんなの考えたこともない!」と言われたことはないだろうか。他者の反応があって初めて、その考えが一般的か、自分ならではのものか分かるのである。相手の反応をヒントに、自分のテーマを見つけていこう。

〈自分ごと〉として捉えてみよう

「日本のグローバル化について意見を述べよ」と言われる。いきなりそんなことを聞かれても、自分に関係のない話題だと答えは浮かんでこない。こんなとき、自分のことばで語るには、一体どうすればいいのだろうか。そのコツは「自分ごととして捉えること」だという。

 話題と自分に距離を感じたなら、まずは問いを立て直してみよう。このお題であれば「自分はなぜグローバル化について考えるのか」を考えてみる。“自分”を問いに入れることで、英語を勉強して思ったこと、外国の人と接して感じたことなど、自分の体験からお題に近いテーマを見つけられるはずだ。

 このように自分を関連付けることができれば、自分というフィルターを通して生まれた自分のことばになる。誰かのことばをお題目のように唱えても、人の心に届かない。だが、自分の体験に基づいたことばならば、聞き手の心に届きやすい。「伝えたい!」という熱量にあふれる話題であれば、ぜひ試してみよう。

 本書を知ったとき、「これを読めばすぐオリジナリティあふれることばで語れる!」と期待してしまった。しかし、本書では「そんな魔法はない」と繰り返し述べられている。考え方やほんの少しのコツを知り、自分で考えること。それで出たことばが拙くても、思いついた答えが正解と言えなくてもいい。考え表現することを恐れずに繰り返していけば、必ず自分にしか出せないことばが生まれてくるのだ。

 自分のことばが自動的に生み出せる魔法の書ではない。けれど、表現することに対して勇気を与えてくれる。本書は、そんなお守りのような一冊だ。

文=冴島友貴

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