思考が深まるコンサルの「VS思考」とは⁉ 10年分の仕事術を身につける方法

ビジネス

公開日:2023/5/8

コンサルが「最初の3年間」で学ぶコト 知らないと一生後悔する99のスキルと5の挑戦』(高松智史/ソシム)

 この春から仕事をはじめた新社会人のみなさんも、そろそろ「働くことのペース」がつかめてくる5月。少し心に余裕が出てきたときだからこそ、「自分を高めるためのインプット」にも目がいくようになるのではないだろうか。そんなときには目の前の職場からちょっと視野を広げて、「本」で先輩たちの声に学ぶのも吉。現在10万部突破で大注目の『コンサルが「最初の3年間」で学ぶコト 知らないと一生後悔する99のスキルと5の挑戦』(高松智史/ソシム)は、そんなときに大きなヒントをくれそうな一冊だ。

 本書はタイトルにわかりやすくあるように、コンサル1年目の新人から3年目までの成長期に身につけたほうがいい思考&心得を具体的に指南してくれるというもの。「自分、コンサルじゃないしー」と思う方もいるだろうが、著者によればコンサルの思考や心得は「才能」ではなく「濃い技術」であり、それは業界も業種も関係なく、新人もベテランも関係なく、全てのビジネスパーソンに使える究極かつ普遍的なスキルとのこと。

 著者は現在「考えるエンジン講座」「考えるエンジンちゃんねる」を主宰している高松智史さん。一橋大学卒業後に3年間NTTデータに勤め、その後BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)に8年間在籍したキャリアを持つ人物だ。とはいえBCGでの最初の1年はクビ寸前のダメダメ状態で、良き師匠との出会いと「地味に地道にコツコツと勝つコツ」の実践が功を奏して最後はマネージャーまで経験できたのだとか。本書にはそんな高松さんの「濃すぎた、怒られた、2度はできない」BCGでの最初の3年間に叩き込まれた全てを結集させたという。

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「『2度はできない』叱咤激励の1年目」「『天狗になる』⇄『鼻をへし折られる』繰り返しの2年目」「『付加価値を付ける』真っ向勝負な3年目」「『一桁上の価値を出す』マネージャーに挑戦の4年目」と実にリアルな見出しのもとで、紹介されるスキルは全部で104。いずれも「論点バカ VS TASKバカ」「+2度 VS 平温」「クローズドクエスチョン VS オープンクエスチョン」のように「VS」形式で紹介されている。著者によれば、人は「比較感」の中で理解するものであり、何かを検討するときに使うとグッと思考が深まるとのこと(著者はこれを「VS思考」と呼んでいる)。たとえば前述の「+2度 VS 平温」は一緒に仕事をしたくなる後輩/メンバーになるためのコツを説いているのだが、「平温(=ローテンション)と比べると、+2度テンションをあげたほうが『がんばってる』と受け取ってもらえていい循環を生む」となるわけだ。ちなみに著者が出会ってきたモンスター級のコンサルタントやビジネスパーソンはこうした思考法を無意識にやっているというので、本書を読みながら自然と思考グセを身につけられたらしめたものだろう。

 こうした本を読むと「よし、全部やろう!」と思いがちだが、本書あえて「3年」とスケジュールを示してくれているように、これらの思考や心得は焦らずじっくり着実に身につけることが肝要だ。現時点で先を見通すことで視界は少しクリアになるし、なにより「やってみよう!」と前向きな気持ちになるのではないだろうか。なお一般に、コンサルでの3年間は一般企業の10年間に匹敵する濃さがあるともいわれており、内容的には新人・若手だけではなく入社10年目くらいの中堅社員にも役立つに違いない。キャリアを問わず、仕事で自分をもっと成長させたい——そんな気持ちに熱く響いてきそうな一冊だ。

文=荒井理恵

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