業務内容は「拷問」? ちょっぴりダーク、でもバイトくんたちの日常には共感ポイント満載! お仕事コメディ『拷問バイトくんの日常』

マンガ

公開日:2023/5/16

拷問バイトくんの日常
拷問バイトくんの日常』(次見やをら/白泉社)

 拷問や殺しが一つのお仕事として成り立っている世界では、これも「お仕事漫画」と呼んでいいのかもしれない。次見やをら氏の『拷問バイトくんの日常』(白泉社)の第1巻を読んで考える。

 物語の舞台は、拷問請負会社「スピリタス」。そこで働くのが、普通のアルバイト(?)セロだ。

拷問バイトくんの日常 p4
©次見やをら/白泉社

 ホストや溶接工、板前などさまざまなバイトを渡り歩き、どこでも一定の評価を受けてきたセロは、その経験を拷問で活かし楽しくバイトに励んでいる。

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 そんな彼の先輩が、スピリタス一番の古株シウ。

拷問バイトくんの日常 p9
©次見やをら/白泉社

 強面で明らかに裏社会の住人のような容姿をしているが、これで2人の子どもの父だから驚きである。

 そして、長らく2人で回してきた現場に、新人のバイトであるミケとヒューも配属され、少しずつ賑やかになっていく。

拷問バイトくんの日常 p103
©次見やをら/白泉社

 タイトルに「日常」という言葉がある通り、作中ではバイトくんたちの和やか(?)な日々が描かれている。仕事がうまくいかずに悩んだり、新しい(拷問)器具を取り入れてウキウキしたり、それだけ見れば他のお仕事と変わらない。しかし、彼らが話す仕事話はどうしても血生臭く、ほのぼのとした雰囲気の中でセリフだけが異質に光る。

 能天気で明るいセロ、厳しくも冷静で頼り甲斐があるシウ、天真爛漫で可愛らしいミケ、寡黙で内向的なヒュー、どのバイトくんたちもキャラクターが立っていて、それぞれの絡みがまた楽しい。セロとシウは元師弟関係だからこその、ツーカーで通じ合えるような空気感がある。能天気そうに見えるミケは、さりげない一言でヒューのコンプレックスを解消したりする。セロとシウが後輩に向ける優しい眼差しもグッとくるポイントだ。最初は誰もがすぐやめてしまっていたバイト先で、少しずつ人が増え、だからこそ生まれるあたたかな人間関係に胸がキュンとする。

 また、表現としての拷問はあるが、グロテスクな描写などはないので、そういったジャンルが苦手な人でも読みやすいのではないだろうか。あくまでバイトくんたちの人間関係が中心に描かれた作品である。

拷問バイトくんの日常 p131
©次見やをら/白泉社

 拷問バイトを通して深めていく彼らの仲は、他の誰にも代わることができない唯一無二のものだ。最初は軽い気持ちでバイトを始めた彼らが、少しずつ職場を好きになって、お互いにかけがえのない存在になっていく、その空気感がたまらなく良い。それも著者が描く人間味溢れる個性豊かなキャラクターたちだからこそなせる技だろう。

 クスリと笑えて、時々ほっこりする。まさか拷問をしているバイトくんたちにここまで癒されるとは思っていなかった。仕事終わりにコーヒーを奢ってもらったり、休みの日にゲーセンに行ったり、そんな日常すら愛おしく感じるのは彼らの職業柄ゆえだろうか。できればこの平和(?)な日々がずっと続いてほしいと思ってしまう。これからも彼らの拷問ライフを見守っていたい。

文=園田もなか

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