簿記やPCスキルより大切!? 経理パーソンがスムーズに仕事をするため身につけておきたいコミュニケーション術

ビジネス

公開日:2023/6/1

伝わる経理のコミュニケーション術
伝わる経理のコミュニケーション術~ストーリー形式で楽しく身につく!調整力/プレゼン力/対話力~』(白井敬祐/税務研究会出版局)

 企業の財布を担う部署・経理部。経理部に所属する者にとって一番重要なスキルとは何だろうか。簿記などの専門知識? Excelを操るパソコンスキル?……もちろんそれらも重要だが、もしかしたら一番必要なのは、コミュニケーション能力かもしれない。「経理部の仕事は黙ってすることが多そうな事務作業なのに?」と思う人もいるかもしれないが、それは大きな誤解。他部署から経理処理についての相談に乗ったり、必要書類の提出を依頼したり、プロジェクトを推進するために資料を作成し、会議に臨んだり。いくら会計知識が豊富で、経理部の業務内容に精通していたとしても、コミュニケーション能力がなければ、経理部としての業務をスムーズに遂行することはできない。経理部とは意外と調整役に回ることが多い部署なのだ。

 そんな経理部の業務を楽しく学べるのが、『伝わる経理のコミュニケーション術~ストーリー形式で楽しく身につく!調整力/プレゼン力/対話力~』(白井敬祐/税務研究会出版局)。「公認会計士YouTuberくろいちゃんねる」で活躍する白井敬祐氏による『経理になった君たちへ ~ストーリー形式で楽しくわかる! 仕事の全体像/必須スキル/キャリアパス』(白井敬祐/税務研究会出版局)に続くシリーズ本だ。経理部の仕事の全体像を描いた前作に対して、今作で扱われているのは、経理部の仕事のスムーズな進め方。「経理部に配属されたばかりで社内での立ち居振る舞い方がわからない」という新入社員や「経理部で数年働いているけど思っていることが相手にうまく伝わらない」と感じている若手経理パーソンの強い味方になるに違いない。

伝わる経理のコミュニケーション術

伝わる経理のコミュニケーション術

伝わる経理のコミュニケーション術

 本書は、経理部の新入社員である会計太郎が、失敗を重ねながらも公認会計士YouTuber・くろいからアドバイスを得ながら成長していくストーリー仕立てで進んでいく。たとえば、第一章では、会計太郎が会議で「決算早期化」を提案するも、誰も彼の意見に耳を傾けようとしない。だが後日、太郎のライバル・灰井輝(ぐれいてる)が同じ提案をすると、参加者全員が同意。太郎の提案方法とは何が違ったのか?——章の導入として、マンガや会計太郎とくろいのチャットをベースにストーリーが展開され、続く文章と図解によって解説がなされていく。

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 会計太郎のつまずきは「あるあるこういう場面……」と頷かされる。気付けばストーリーに入り込んでしまうし、読めば読むほど、経理パーソンにとってコミュニケーション能力がいかに重要なスキルであるかを実感させられる。

 それに加えて、教えてくれる知識は簡潔でありながらも、意識するだけでアウトプットが大きく変わりそうなものばかり。5つに分類される会議のタイプ別の注意点や、PowerPointをはじめとする見やすい資料の作り方などから、経理部ならではの業務を円滑に進めるためのTipsまで多岐にわたる。「会議でのサプライズを事前になくしておく」「『仕訳』で言っても通じない!どの部署の社員にも通じる言い回しを心がける」「子会社との関わりこそ慎重に!」「会計事務所などの外部パートナーには当事者意識をもってもらいたい! フィードバック表を作成してお互いの意見を交換する」……。著者が「試行錯誤を重ねて身につけた」という知見は、実践に即役立つことだろう。

 会社にはあらゆるバックグラウンドの人がいるし、社外となるとなおさら。独りよがりな仕事の仕方をしてはつまずいて当然だ。「仕事がうまく進まない」ともどかしく感じている経理パーソン必読。この本を武器に、経理部での仕事をもっとスムーズに進めてみよう!

文=アサトーミナミ

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