女子プロレスラーの本音ガールズトーク。10周年の“東京女子プロレス”の素顔に迫る

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公開日:2023/6/3

まるっとTJPW!! 東京女子プロレスOFFICIAL “FUN” BOOK 2023
まるっとTJPW!! 東京女子プロレスOFFICIAL “FUN” BOOK 2023』(玄光社)

 プロレスは闘いである。相手選手を殴り、蹴り、踏み潰し、ときには流血することもある。しかし、プロレスラーは機械ではない。血の通った人間だ。だから闘いの上に、感情が乗っかる。それが怒りや憎しみであることもあるだろうし、敬意や友情であることもあるだろう。プロレスファンが見たいのは、プロレスラーの感情の部分だ。

 東京女子プロレスの人気ユニット「マジカルシュガーラビッツ」。坂崎ユカと瑞希はプライベートでも仲が良く、固い絆で結ばれている。今年3月、二人は有明コロシアムでタイトルマッチを行うことになり、坂崎は大会前の記者会見でこう言った。「正直言うと、やりたくない」――。やりたくない。瑞希にひどいことをしたくない。瑞希に嫌われたくない。プロレス史上、記者会見でそんな言葉を発したプロレスラーはいなかったと思うが、それもまた、プロレスラーの感情の一つなのだろう。

 坂崎と瑞希の闘いは、お互いへの愛とリスペクトに満ち溢れた、二人にしかできない名勝負となった。全力でぶつかり合っているにも拘わらずわらず、こんなにハッピーなプロレスがあるのかと驚いた。坂崎と瑞希だけではない。東京女子プロレス(以下、東京女子)の試合は、激しいながらも多幸感に溢れている。

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 3月に上梓された『まるっとTJPW!! 東京女子プロレスOFFICIAL “FUN” BOOK 2023』(玄光社)の編集協力をさせてもらって筆者が感じたのは、彼女たちは東京女子を心から愛しているということ。選手全員、とても仲が良く、お互いをリスペクトし合っている。インタビュー中、「プロレスが好きというより、東京女子が好きという選手が多い」と話す選手が何人もいた。

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Ⓒ東京女子プロレス

 坂崎ユカは、本書の中でこう話している。「東京女子に所属している今は、置き去りにした青春を取り戻している感覚に近い。学生時代、部活動では結果を出せなかった。今は『あのときこうしていれば』というのを頭で考えて実行できているから、あのときよりももっと自分らしく青春をやり直せている」。

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坂崎ユカ 【まるっとTJPW!! 東京女子プロレスOFFICIAL “FUN” BOOK 2023】23Pより抜粋

 辰巳リカは、対戦相手の首を絞めたりするため「クレイジー」と言われることが多い。しかしそんな自分を、リングの上だと肯定してもらえる。「ある意味、リングは素の自分でいられる場所というか。それが楽しくてプロレスラーを続けているのかもしれません」と話す。

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辰巳リカ 【まるっとTJPW!! 東京女子プロレスOFFICIAL “FUN” BOOK 2023】27Pより抜粋

 ハイパーミサヲは、東京女子は「本当の人生の出発点」だという。大学卒業後、仕事もせず無気力な毎日を過ごしていたとき、DDTの路上プロレスと出会った。すぐにDDTグループの東京女子入りを決断し、今では“東京女子プロレスの愛と平和を守るニューヒーロー”として活躍している。「東京女子に入って、ようやく自我が芽生えたような感覚がある」と話す。

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ハイパーミサヲ 【まるっとTJPW!! 東京女子プロレスOFFICIAL “FUN” BOOK 2023】31Pより抜粋

 プロレスファンからプロレスラーになった鈴芽は、「私にとって東京女子に出会えたことが人生で一番特別な出来事」と、中島翔子も「東京女子のない人生は、もはや考えられない。私のすべて」という。育った環境も経歴も、バラバラ。そんな個性豊かな選手たちが、異口同音に言う。「東京女子が大好き」――。

 2013年、小さなライブハウスでマットプロレスからスタートした東京女子プロレス。今年10周年を迎え、両国国技館や有明コロシアムで大会を行う人気団体となった。本書には、旗揚げメンバー(山下実優、中島翔子、坂崎ユカ、辰巳リカ)のガールズトークや、「98年度組」(宮本もか、鈴芽、遠藤有栖、荒井優希、猫はるな)のガールズトークも収録され、東京女子の今と昔を語り尽くしている。根底にあるのは、東京女子への愛。ファンならずとも、読めばきっとその“多幸感”の虜になる一冊だ。

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旗揚げメンバー 【まるっとTJPW!! 東京女子プロレスOFFICIAL “FUN” BOOK 2023】108Pより抜粋

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98年度組 【まるっとTJPW!! 東京女子プロレスOFFICIAL “FUN” BOOK 2023】114Pより抜粋

文=尾崎ムギ子

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